【特集】RYPPHYPE 新曲 Touch Your Heart feat. 田口恵那 のトラックメイク解説!

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【特集】RYPPHYPE 新曲 Touch Your Heart feat. 田口恵那 のトラックメイク解説!

のブログ(take5blog、最近では WAVEFORM LAB )でたびたび登場する「某ヤマキ氏」こと、Ryuichiro Yamaki 。自分にとっては Digital Performer をはじめとした音楽制作の師匠であり、写真の師匠でもあります(デジタル一眼レフの初号機はヤマキ氏から譲ってもらったのだ)。

そんなヤマキ氏は有名アーティストを数多く手がけるプロデューサーなのだが、この夏から自分のユニット RYPPHYPE(ライプハイプ) で曲をリリースしている。誰か他のアーティストのための音楽ではなく、自分達のための音楽。この RYPPHYPE の音楽はシンセ少年だった「ヤマキ色」が実によく出ているように感じるのだ。

https://t5blog.waveformlab.com/wp-content/uploads/2018/10/RYPPHYPE_Logo.jpg

RYPPHYPEプロフィール

安室奈美恵、鈴木愛理、東方神起など数多くのアーティストへの作曲・プロデュースを手掛ける、山木隆一郎(Ryuichiro Yamaki)を中心に構成されたユニット。2009年より「R.Yamaki Produce Project」として、あくまでも「作曲家 Ryuichiro Yamakiがプロデュースする配信プロジェクト」という枠の中で活動をしてきたが、2018年夏、「今しかできないことをやろう」という気持ちが高まり、配信限定というルールは変えずにユニットの形を構築。アーティスト名を、RYPPHYPE(ライプハイプ)に改名。

RYPPHYPEは、前身の「RYPP」の読みを、成長を意味する「Ripe」に置き換え、英語圏スラングで「ワクワクする 興奮する 盛り上がる」という意味の「HYPE」を組み合わせた造語である。

山木自らのボーカルとシンセサイザーをメインに、長年の音楽仲間であるギタリストの高橋圭一、高校生の頃からの友人でもあるマルチプレイヤーSpam Kasugaiのベース、ボーカルのerina.で構成。楽曲の特色に合わせ、フィーチャリングボーカリストも積極的に起用。多様なコラボレーションを展開している。

「懐かしさ」と「新しさ」が融合したフューチャーシンセポップサウンド。それが RYPPHYPE である。

そんな RYPPHYPE、4ヶ月連続で配信シングルリリース なんてことをやってる。今月の新曲は Touch Your Heart feat. 田口恵那 / SCREAM。両A面配信シングルとして、10月31日に配信がはじまったばかり。

普通、トラック解説というと楽曲の解説をするんだけど、WAVEFORM LAB なんだから DAW・音楽制作観点からのトラック解説、そう、「プロが DAW でどのようにトラックメイクしているか」 という視点でこのニュースを紹介してみたい。ダメ元で聞いてみたら、忙しい合間に答えてくれたのだ。ありがたい。

はい、それでは新曲のトラック解説、早速いってみましょう!課題曲は新曲「Touch Your Heart feat. 田口恵那」です。

RYPPHYPE の新曲 Touch Your Heart feat. 田口恵那 のトラック解説!

【特集】RYPPHYPE 新曲 Touch Your Heart feat. 田口恵那 のトラックメイク解説!

下記、音源と上の Digital Performer のトラックスクリーンショットをみながら読み込んでみてね。

WAVEFORM LAB(以下略):新曲の「Touch Your Heart feat. 田口恵那」、イントロからシンセコードが全開だね!えーまず、トラック全体像から。全トラック数はオーディオバウンスしたりしたもの含め数えると 142トラック。これは多い方?

Ryuichiro Yamaki(以下、RY):わりとこのくらいの量じゃないかな。このスクリーンショットはMIX時のものなので、もうMIDIは完全にAudio化されていて、V-Rack(DPの機能で、ソフトウエア音源をハードシンセと同列のように扱える)も削除された状態だから、MIDIはもう鳴ってないけど(MIDIアウトプットが斜体になってる)。いやー、今回は、なかなかバラエティに富んだシンセ群じゃないかなと。


ドラム系が 8トラック、SE が 4、ベースはシンセベースとリアルのベースで 3、ピアノやベルで 4、ブラス、パッドで 6、リードが 4、ギターが 4、歌で 24、Delay や Reverb の空間系エフェクトが 7トラックだね。楽曲からはもっといろいろ鳴ってる気がするけど意外にシンプル。トラック名のネーミングや配置がすごく整理されてるんだけど、いつもこんなにきれいなの?

RY:トラック名はわかりやすいように毎回シンプルにしてる。DPだと、トラック名長くなっちゃうとジャマでしょ?(笑)あと、こう数字で見ると、MIDIのトラックとしてはやっぱ少ないよね。


バンドスタイル&比較的にはシンプルな構成で 142トラックって、気が遠くなりそう(笑)。

音源解説 – ヤマキ氏は今、何を使っているのか

まずはイントロのブラスシンセ。かっこいいねー(涙)。シンセ好きにはたまらないようね。「ンバー」じゃなくて「ンバァウワー」って鳴ってる。えーとこれは…

RY:ドイントロのジュンジュンジュンジュンって鳴ってるのは Waldorf Largo のオリジナル音色。Largo は Waldorf らしい音が出るので大好きなんだけど、わりと変わった音担当かな。そういう意味でもWaldorfらしいというか(笑)あと、シンセブラスは、KORG Collection のMono/Poly でオリジナル音色を作って、サイドチェインをかけてる。どちらの音もバウンシーな音になってるのは、サイドチェインのお陰だよ。

Mono/Poly は自分の手足のように好きな音を作れるようになったくらい、俺にとってはド定番なシンセ。10代の頃に友達から本物を何年か借りてた事があってね。アナログシンせは Mono/Poly で勉強したんだよ。


Mono/Poly は世代だよね。えー、なんとシンセ系は Novation MiniNova を除くと全部ソフトシンセなんだー。よく使う音源は?

RY:MININOVA は6年くらい使ってる。実は、もう使い尽くしたかなと思った時期があって、一度処分した事があるんだよ。でも、やっぱ MININOVA じゃないとダメだと思ってすぐ買い直した。音色的には、今時のソフトシンセとそう変わらないんだけど、見た目と存在感がなんか違う。あとはあの ANIMATE ボタンね。ココ重要。

他にハードだと、この曲では制作時期に合わなかったから使ってないんだけど、最近は KORG prologue 。アナログシンセをポリで弾ける楽しさはやっぱ違う。他の曲では結構使ってるよ。

ソフトシンセだと、 UVI Falconと、Mono/Poly の入ってる KORG Collection がメイン。WAVESTATION も大好きでね。ハードは鍵盤タイプを2回、音源ラックを4回で、計6台も買った事がある(笑)。

最終的に KORG Collection だけに落ち着いたけどね。あと KORG Gadget のプラグインもよく使う。軽くて簡単なのがいい。この辺はもうDPのテンプレートとして最初から立ち上がってるシンセ陣。他のは今回みたいに気分で決める事が多いかな。UVI のシリーズのお陰でハードシンセを使う事はかなり減ったしね。

Yamaki-Monopoly

UVI の Falcon のエンドーサーというか、オフィシャルデモトラックを作ったりしてるけど、ドラムはその Falcon が中心なんだ。

RY:UVI 製品は、今ではエンドーサーという立場もあるけど、UVI が、まだ Universal Sound Bankって名前で、AKAIのライブラリや、PlugSound ってプラグインシリーズを出していた頃からのファン。まだソフトシンセが出始めた頃だったんだけど、ハードの PCM 音源のような音が出て、すごい感動したのを覚えてる。そこからずっと使っていて、ブログでデモソングをレビューとともに紹介してたら、UVI から声をかけてもらって、今では9割のオフィシャルデモを作ってるよ。

で、ドラムの話なんだけど、基本的には、ドラムは自分でサンプリングしたり EDIT したものを UVI Falcon に並べて使ってる。今回の曲のBDは、Vengence VPS Metrum と、Falcon でオリジナルサンプルの2つで作ってみた。Vengence VPS MetrumはKick専用音源なんだけど、これをメインで使うのは珍しいかも。SDはオリジナルのサンプルを2つ。Clap、Cymbal も同様に。俺の曲だと結構あるんだけど、ハイハットとか鳴り物が無いのも珍しいでしょ。


ドラムキット系は自分でサンプリングした膨大なオリジナルサンプルからチョイスしているイメージだったけど、それを Falcon で鳴らしてるのかな。ということは Falcon はサンプラーイメージ?

RY:そうだね。死ぬほどライブラリにしてるね(笑)Falcon はいろんな機能付いてるけど、サンプラーとしても優秀。というか、もともとサンプラーから始まってるソフトだからね。昔、AKAI CD3000XL や、S6000 でやってた事の延長のようにも使えるし、音を重ねる事も簡単に出来るようになった。ほんとに便利な世の中になってくれて(涙)


そしてピアノはやはり KORG M1 のピアノだね。懐かしい。中間のピアノやベルも M1 っぽいけど、これは Falcon。

RY:R&B やダンスミュージックには欠かせない硬いピアノは、やはり KORG が得意。デモとして作った時は、KORG TR-Rack で鳴らしてたんだけど、もう手元に無いから、M1 や、TR-Rack を自分でサンプリングした音や、UVI のライブラリを並べて比べてみて、M1 が一番ハマった。Bメロで出てくるPianoは、PianoというよりもPluck系シンセ。多分FalconのFM音源で作ってたと思う。ベルも Falcon なんだけど、UVI Digital Synsations2 の DS-890(JD800/990 インスパイア音源)なので、Roland 色あるかな。


あー、ちゃんと音色を選ぶのに当てて比べるんだ。ここらへんのプロセス、素人でも手を抜いちゃいけないんだね。

RY:音色の立ち方(Attack)、消え方(Decay/Duration)で全然違うからね。

オーディオトラック、パッド、Seq トラック

ベースはシンセベースの MiniNova に加えてスラップもMIDIトラックにあるけど。Spam Kasugai さん弾いてるよね。

RY:Wobble 系 Bass は、MININOVA や、SugarBytes Cyclop が変な音になってくれて面白いよ。Slap Bass は、デモ時は NI KONTAKT の JAY-Bass で弾いたのを Spam KASUGAI に送って、生に刺し変えてもらってる。Slap Bass はだいたいこのルートだね。RYPPHYPEでは、シンセベースとSlapBassのハイブリッドを基本に置いて曲を作る事が多いんだよ。ギターも同様に、MusicLab RealStrutで弾いてから、高橋圭一に送って差し替え。


パッドがやはり多いね。凄く混ぜてる感じだけど?

RY:PAD は混ぜてなんぼみたいな感じ。存在感あるPAD作りを目指してるかな。昔からそうだったけど、最近より一層そう思うようになった。EDM路線が流行って、時代もそういう時代なんだと思う。とはいえ、Falcon の Expansion “Analog Motion” みたいな、元から沢山混ざってるプリセットとか、海外ドラマのStranger Thingsのアナログシンセのジュワーーーンって音みたいなのは、そのまま使う事も多いよ。ソフトでも存在感のあるプリセットも増えてきたよね。

いろんなシンセが鳴ってるように感じるけど、フレーズに空白というかスペースを入れてあるかあらグルーヴも出るし、キラキラした感じになってる。デュレーションというか、フレーズの終わり目は気を使ってる?もう普通にあーゆー感じに入力できちゃうの?

RY:グルーヴにはものすごい気を使ってるけど、あとからというよりは、鍵盤を離すタイミングかな。出来なかったら何度でも弾く。とはいえ、データで直したり、シンセ側で直したり、波形でガッツリ切っちゃったりとかもあるので、臨機応変に。


LEAD とあるからシンセソロあるのかと思いきや、このパートは細かいことやってるねー!

RY:今回の LEAD は、パート的にはSeq と書いてもよかったんだけど、なんとなく LEAD 感ある音色だったので LEAD で。Sugar Bytes Cyclopとか、NI Massiveとか、普段あまり使わないシンセでアクセント的にね。

Ymakaki-Cyclop

ロックフォーマットでギターソロがあるような感じでシンセソロは弾かないの?シンセ好きとしては必ずシンセリードソロがあると嬉しいけど、どう?

RY:ちょっとー!他の曲でやってるよ!(笑)9月にリリースした「モノクロームスカイ」を聴いてみて!あと、少しだけだけど、その前の「MATANE Stranger」でもね。今、アルバムへ向けて制作してるんだけど、アルバム曲でも何曲かあると思うよ。RYPPHYPEの基本コンセプトが、懐かしさと新しさの融合なんだけど、自分が10代の頃聴いてた曲だとシンセソロも多かったし、今回はそういう部分も意識してるんだよ。


知ってますって。ライブでも観れたし。えー、ボーカルは田口恵那。ごめん、日本のボーカル全く無知なんだけど。コーラスも彼女?何トラックくらいあるの?

RY:田口恵那は、ミュージカルで活躍してる女優さんなので、ボーカリストとして音源が出るのは初めてなので、知らない人も多いかもしれないんだけど、艶感あって良い声でねー。Spam KASUGAIに紹介してもらったんだけど、ギターかき鳴らして歌ってる動画を見せてもらってて、それがちょっと面白くてさ。で、是非やろう!って話になって。ダンスうまいからか、リズム感もバッチリでね。この曲のVocal パートは、コーラスや、Vocal チョップも含めて、恵那が歌ってるんだけど、全部で 24トラックくらいかな。数えてみたら案外少なくてビックリ。でも、本人はここまで重ねるのは初めてだって言ってたよ。


あれ?この曲、ヤマキ氏、歌ってる?

RY:この曲はさすがに歌ってない(笑)もう1曲の「 SCREAM 」ではメインで歌ってるよ。


エフェクトはノウハウ満載だろうからミキサーのスクショは要求しないけど、この曲の場合、トラックメイクしている時間とそれをエフェクトとかでいじっている時間とどっちが長いの?生楽器やボーカルなどのレコーディングをのぞいて、ヤマキ氏がこの曲にかけた時間ってどれくらい?

RY:俺の場合、トラックメイクって言い方が妥当なのかどうかがわからないので、「作曲」て言う事にしてるんだけど、作曲時にエフェクトも含めてかなり作り込んじゃう。なので、どちらが長いかという話になるとわかんない。普段は、最初のデモの時点からほぼアレンジを作り込んじゃうんだけど、だいたい作曲開始(0から)から 4〜5時間で作る。

そこから、作詞家に歌詞を発注して、上がってきたら仮歌録って。今回の曲は作詞も仮歌もerina.がやってる。で、本番で本人の歌録った時点でやっとキーが決まるので、そこから楽器陣にデータを送る。楽器が上がってきたら、最終的なアレンジ作業と EDIT をして、MIX とマスタリング作業。MIX 作業は2日間くらい。MIX は本業じゃないし、今回はマスタリングまで自分でやってるから時間かかるし、何度もやり直すしで。勉強しながら、いろいろ試しながらやってるよ。


ゼロから4時間かぁ。Digital Performer の操作、おそろしく速いものね。曲にもよるんだろうけど、考えたり吟味したりでこの時間は早いよね。これ先日のストリーミング番組では MacBook Pro を使ってたけど、これ全部 MBP で動くの?

RY:実際に手を動かす時間よりも、どんな曲にしようか考えてる時間の方が長いよ(笑)ある程度頭の中で作ったら作り始める。何にも浮かばないまま1週間とか経ってる事もあるよ。で、MacBook Proなんだけどバッチリ動くよ。32bit float / 96kHzでやってるから、やりくりは結構大変だけどね。Late2013 の 2.6GHz i7 だから、そろそろ新しいのにしたいんだけど。オーディオインターフェイスは Universal Audio Apollo なので、UAD プラグイン使う事で少しは負荷軽減はされてると思う。

ヤマキ氏、入魂の新作、ぜひ音源を聴いて(買って)欲しい!

えー、最後に読者に一言(笑)

RY:両A面の「SCREAM」も同時配信してます。Drum’n Bass 色強めの曲で、こっちもシンセが多いので、是非聴いてみてください。少しでも気に入ってくれたら、RYPPHYPEの応援よろしくお願いしますー!


あらら、本当に一言だね。とにかく忙しい中、ありがとう!明日の夜は Apple Special Event 頑張ろー。

ということでお送りしました「【特集】RYPPHYPE 新曲 Touch Your Heart feat. 田口恵那 のトラックメイク解説!」、ぜひ音源を購入・Apple Music 他のサブスクでヘヴィローテして聴いてみて下さい。サブスクの場合、最後まで再生してね。アーティスト還元対象にカウントされないから。約束だぞっ!

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ではー!

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波形研究所 所長

WAVEFORM LAB(ウェーブフォーム・ラボ) は音楽制作、デジタルライフ、イノベーションをテーマとするサイトです。

1997年、伝説の PDA、Apple Newton にフォーカスした Newton@-AtMark- を開設、Newton や Steve Jobs が復帰した激動期の Apple Computer のニュースを伝えるサイトとして 200万アクセスを達成。2001年からサイトをブログ化、2019年よりサイト名を WAVEFORM LAB に改称、気になるネタ&ちょっとつっこんだ解説をモットーにサイトを提供しています。

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