My Tracks : May Drum’n’Bass / May 16, 2020 – MASCHINE & Digital Performer での制作解説

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May Drum'n'Bass

Track 解説です。先週末に制作した楽曲は Native Instruments MASCHINE でトラックメイクし、MOTU Digital Performer でミックスを行いました。最近は MASCHINE を最初に立ち上げることが多く、今回の制作で MASCHINE と Digital Performer の作業の切り分け、それぞれの役割が明確になったので、そこらへんを中心に紹介しようと思います。楽曲の作曲面ではなく、制作面を話の中心に進めます。

May – Drum’n’Bass

今回の楽曲は May – Drum’n’Bass 。ドラムンベースの楽曲で、モチーフ自体は 3年前に作ってあったもの。アイデアはもっとちょっと昔のものだけど、ドラムンベースはあまり経験なく「とりあえずこんなん?」と思って作った MASCHINE のプロジェクトファイルがあった。それが 2017年5月だったので、「あぁ、これをまとめておこうか」と。ちょうど、Native Instruments Traktor を導入しようかと思っているので、自分の楽曲ファイルは多いほどいいかな、というのもあり。

もともとのモチーフはこれ。前後なくこれしかない。ドラムンベースのアイデアはもうひとつあって、そっちはドラムンベースのリズムの上で、もっとゆったりした3拍子っぽいアイデアなんだけど、今回はシャカシャカのドラムンベースの楽曲を作る方向で方針を決めた。もうひとつのアイデアはまた今度に。

全制作時間は 5時間程度。もうちょっと悩むべきだった面もあるけど、まぁ、アウトプットすることも重要かと。

プロジェクト構成 – MASCHINE

最近は MASCHINE で楽曲を作ることが多くなった。理由は MASCHINE 2.7 でオーディオループの扱いが簡単になったこと、2.10 でパターンレコーディングをする際に事前にパターンの長さを設定しなくてもよくなったから。

MASCHINE はパターン型の DAW なので、すべてのパートは「パターン」という型にはめる必要がある。リズム系はそっちが便利でも、メロディやソロはそうはいかない。ソロパートは特に事前にどれだけの長さを弾くかを指定するというのは苦痛だった。現在では長々と弾いてもパターンがどんどん延長され、録音した後に必要な部分を整理することができるようになった。

では制作プロセスをみていこう。

プロジェクトの構成

MAY-MASCHINE-Project
最初に MASCHINE を立ち上げてから、どのようにトラックメイクしていくかを簡単に。プロジェクトは Digital Performer に持って行ったのが 29トラック。意外と少なめ。

MASCHINE はトラックを MASTER / GROUP / SOUND の 3階層で管理する。今回のプロジェクトは 7 GROUP 29 SOUND ということになる。 GROUP はおおまかなパート種別のようなもの。似たようなパートは GROUP としてまとめている。MASCHINE は GROUP ごとにサウンドの再生やミュートもできる。ずらっとトラックが並ぶ DAW と違って GROUP があるのは便利だ。MASCHINE ハードウェアでは 8つの GROUP にすぐアクセスするボタンがあるので、GROUP の数は 8つまでにすることが多い。

MASCHINE でのオーディオループの扱い

今回はモチーフがあるのでリズム隊の整理から。基本となるドラムンベースのドラムパートはオーディオループ。MASCHINE でオーディオを扱うには Audio / Sampler の2種類の方法 がある。

Audio はループを直接トラックにペーストするイメージ。どこの部分を再生するかを指定できるが、それ以上のことはできない。利点として勝手にタイムストレッチしてくれる。ループ長やビートはサウンドエディット画面から調整できるが、単にテンポが違うだけなら、ループをトラックにドラッグして(デフォでは Audio になる)、それをもう1回デスクトップにドラッグするとシーケンステンポのファイルが出来るので便利だ。

上記 Drums GROUP(オレンジ色)では 5/6/7 が Audio を使っている。

Sampler はループ再生をフックするトリガーや再生するループの長さ・ゲートを指定したい時に使う。Sampler の設定ポイントはまず Polyphony。ドラムは再生するのは常に1音なので 1を設定する(和音で使いたいなら数を指定する)。そして Sampler を使う大きな理由が ENGINE だ。MASCHINE の Sampler はサウンドエンジンとして Standard / MP60 / S1200 / S1200 L / S1200 LM / S1200 HM / S1200 H をチョイスすることができる。AKAI MPC 60 や E-Mu SP1200 をシミュレートしたサウンドエンジンを使うことができ、これが結構イイ。オーディオのループのイメージに近いものを設定する。

MASCHINE-Sampler

次にループの再生方法。One-shot / AHD /ADSR を選択できる。One-shot はトリガーするとループの最後まで再生される。今回はオーディオループの再生をブツっと切りたく考えているので ADSR を選択して Release をゼロに設定している。後はお好みで。最近流行りの Chillout 的なローファイで揺れたサンプルを作りたければ Modulation / LFO あたりを使えばいい。エフェクトで足さなくても Sampler でしっかり音は作りこめる。

G1 GROUP(明るい紫)ではピアノのオーディオループを使っているが、これも Sampler の Reverse を使って小節頭でトリガーしている。

トラック構成

・Drums : Audio Loop
ドラムグループは基本のループ、ハイハット、キック、パーカッション、ドラムパターンをブツ切りにしたもの、で合計 14トラック使っている。MASCHINE を使うもうひとつの決定的な理由がサウンドライブラリだ。MASCHINE のライブラリにハズレはない。音もすごくいい。Expansion も 25くらい集まっちゃったので、あらゆるジャンルに対応できる。キックだけでも 1,000近くはあると思う。なので、気に入ったものは積極的に★を付けて管理する。制作のたびに、多くのサンプルを聴いて、「?」「!」ときたものには★を付けるようにしている。今回、長めのキックを探すのに時間がかかったが、これは DrumSynth や KORG Gadget の Tokyo あたりで自分で作った方が早かったな。失敗。

・Bass : KORG Madrid / Reason Rack MONOTONE BASS SYNTHESIZER
MONOTONE
アップライトベースは KORG Madrid を使っている。感じがでればいいので EQ で必要なところを強調している。ロングトーンは MONOTONE が実にいい。これまでは Native Instruments MONARK を使っていたが、ベースパートに限れば MONOTONE の方が使いやすい。あくまでベースの範囲に特化しているのでパラメータも「調整する」くらいで済む。MONARK は大好きだけど音作りをしないとダメだから。プリセットの品質も大切だよね。

・Pads : KORG Wolfsburg
・Synth : KORG Wolfsburg / Native Instruments Kontakt / MonoPoly
あのうるさいパッドもピッチカート的な音も実は Wolfsburg 。Native Instruments MASSIVE X や Reason Studio EUROPA も検討したんだけど、Wolfsburg の音で CUTOFF オートメーションを書いたもので十分、と思った。イントロ後半で出てくる Harp は Kontakt、アルペジオのシンセは悩んだ時の万能選手 KORG MonoPoly。

・Strings : Native Instruments Session Strings
Native Instruments KOMPLETE を持っていると、なんでも揃っちゃう。ストリングスは Session Strings 。2種類使ってます。最近、プラグインの無償配布やセールが多いけど、なるべく手を出さないようにしている。シンプルなやつはいいんだけど、最近のものはパラメータも多いので習熟するのに時間がかかる。思った音にすぐアクセスできるプラグインの中心メンバーだけで作るのが大切と思ったり。ま、サウンドに感動して楽曲に、というパターンもあるんだけどね。

・Piano : Native Instruments NOIRE
・Lead Synth : KORG LEXINGTON
最近のピアノはデフォルト NOIRE を使っている。ピアノの音の良さだけでなく、特長を持ったサウンドにする数々の工夫がある。でも、メロディのっピアノは Native Instruments THE GIGANT にするべきだったと思っている。ソロも含めてもうちょっと改善できたと思う。

よく使うサイン波のモノシンセリードは KORG BERLIN か LEXINGTON のオリジナルパッチ。BERLIN の方が登場回数は多い。KORG Gadget の Instrument は名前が分かりにくいよね、本当に。なので ライブラリファインダの画像で視覚的選ぶようにしている(なので名前を覚えてない)。

制作プロセス – MASCHINE

いよいよ制作に入る。まずは音作りでのアドバイス。MASCHINE は SOUND レベルで結構、音を作りこめる。エフェクトは「音作り系」と「響き系」を意識して作ること。音作り系はオーディオとして吐き出す際にそのまま使うが、響き系は「オフる」ことになる。リバーブやディレイ等は Digital Performer でミックスする時に専用の AUX トラックで調整した方が統一感が出る。

MASCHINE-SongView

MASCHINE のソングビュー

MASCHINE で楽曲を作る際には、パターンモードである「アイデアビュー」と、楽曲の流れを作る「ソングビュー」を行ったり来たりして作る。Ableton Live もそうなんじゃないかな。骨子のリズムパターンを作り、ベースラインを作り、上物を作ってのっける。作ったパターンをソングビューで並べる。

パターンは長くても短くてもいい。短い場合はセクションの長さにあわせてリピートしてくれる(パターンの長さは 4/8/16小節の組み合わせが多くなる)。パターン型ではあるが、ブレイク入の1箇所だけ 5/4拍子なんてのも簡単にできる。MASCHINE で面倒なのが、次のセクションに入る直前の盛り上げフィル。その部分だけのパターンを用意しなければならない。通常のパターンを複製して必要ない部分は消去、フィルを加えるという作業になるが、これは慣れるしかない。

MASCHINE-SongViewSelect

パターンを作り、ソングモードで 右クリックしてSelect で配置するパターンを選択 してくみ上げていく。Ableton Live みたいにパターンの組み合わせを作って、それをソングビューに持っていく方法もあるが、似たようなパターンのバリエーションが多くなるので、単純にソングビューで、「ドラムはこれ、ベースはこれ」と Select していく方が間違いない。パートのバリエーションは基本パート単位で複製して差分の中身を入れ替えたりすればいい。慣れるとサクサク進めるようになる。

今回の楽曲はイントロが長いが、例えばイントロは INTORO / INTORO2 / INTRO3 / INTORO4/ INTORO-B / INTORO5 とパターンのバリエーションにより 6つのパートで進めている。Aパートも、初回のAパターンと、次のブレイク直前のフィルがあるパターン Aa の2つのパターンがある。Aを複製してフィル入りのパートを作っている。

どこまで MASCHINE で作るのか

基本、楽曲として最初から最後まで演奏し切るまで MASCHINE で作る方がいい。「後のデジパフォであれを足して…」なんてことをするとプロジェクトとして管理しにくくなる。ミックスダウンで必要な修正があれば、MASCHINE に戻って修正し、そのトラックだけオーディオエクスポートすればいい。

一方で、各パートのバランスは適当でいい。オーディオとしてエクスポートする際にノーマライズをかけてしまうので、ミックスのイメージを作っておくくらいでいい。また、パートをまたがるボリュームのオートメーションも書かなくてもいい。「メロディが入ったらパッドを落として」のような各パートのボリューム制御は MASCHINE は苦手だね。

オーディオファイルに書き出し

MASCHINE のオーディオ書き出しは非常に速い。不安になるほどサクッと吐き出してくれる。オーディオに書き出す時のポイントは以下の通り。

MASCHINE-Export-Audio

MASCHINE はオーディオを書き出す時のバリエーションが豊富だ。長さはループ単位なのか、曲全体なのか。書き出す単位は MASTER か、GROUP か、SOUND 単位なのか。書き出し品質は云々、などだ。今回は Digital Performer でのミックスを前提としているので、Range : ALL、Source : Sound とする。Normalize はオン(今回はループモノがドラムくらいなので)としている。トラック編集まで戻る修正があれば、修正後にその SOUND だけで Export すればいい。

推奨しないがミックス時にセクションを入れ替えたりしたいなら、セクション単位で書き出すこともできる。

ミックス – Digital Performer

さぁ、デジパフォだ。DAW が変わることで気分も爽快。DP10ではミックスに集中すればいいので気が楽だ。書き出したオーディオを DP10 に配置する。マスター+29オーディオトラック。以外にシンプル。各トラックが分かりやすいように MASCHINE のトラックとだいたい同じ色分けをする。

DP10 Project

まずしないといけないのは 全部流して、オーディオがきちんと出力されているか確認すること。MASCHINE のレンダリングの際にプラグインがコケると不完全なファイルが書き出されることが実際にはある。ちゃんと全パートがきちんと出力されているか、流して確認するといい。

ミックスする

  • 響き系、ディレイやリバーブ等は AUX トラックを1つずつ作って、各トラックからそこにバス接続するのが基本。各トラックにリバーブプラグインを挿さないように。
  • おおまかなバランスを MIXER で作ったら、EQ を使って不必要な音域をカットしていく。基本はカットする方向で。ベースの極端な低音部は削りキックとの住み分けを作る、アタック成分はちょいと協調して存在感を出す、などなど。
  • 各パートのボリュームオートメーションを書く。何度も試行錯誤する。幸い、DP のオートメーションは書きやすい。ありがたや。
  • 各トラックのバランスは何度もバウンスして確かめる。ここの努力は惜しんではいけない。

EQ は MOTU 純正の MasterWorks Eq が好きだ。FFTで周波数成分も確認しながら EQ できるし。今回はいくつかのトラックに EQ をさし、MonoPoly に PAN を挿してるくらい。そして、MASTER トラックにみんな大好き iZotope Ozone 9 Adbanced を挿している。iZotope Ozone でミックスは非常に便利になったよね。各パートのバランスは自分でしっかり作って、後は Master Assistant でにぎやかなパートを再生、あとは EQ や Maximizer を微調整。Dynamic EQ なんてホント便利。

納得いくミックスが完成したらバウンス。オーディオ編集アプリケーションで前後の空白をトリミングして制作は完了。お疲れさま。

最後に

今回のプロジェクトでは、マスターバウンスして SoundCloud にアップしてから一晩おいてテンポを修正している。「あー、終わったー」と気分を入れ替えて翌日聴いてみると、なんか遅い気がして。163 bpm くらいだったものを 168 に Digital Performer 側でにテンポアップした。SoundCloud は Pro プランに変えたので、後からオーディオファイルを更新できるのがいいよね。

素人だからやはり「一発」で完成まで作りこむのは難しい。素人の最大の武器、「改善のために無尽蔵に時間を使える」を駆使するべきかな、と思う。最終版もピアノのディレイやリバーブが過剰なので、そのうちソロを録りなおすかもしれない。

アップロードした楽曲は SoundCloudYouTube にもアップしました。よかったら聴いてみて感想をコメントしてもらえると嬉しいです。

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