TASCAM Portacapture X8 – 32Bit float オーディオインターフェイスとして使えるフィールドレコーダー

RECORDING

TASCAM Portacapture X8

TASCAM のハンドヘルドレコーダー、Portacapture X8 について。最新ファームウェア V1.30USB-C オーディオインターフェイス機能が 32bit float形式に対応した。ピーク越えの録音をしても、レベルを下げることで波形を復元できる「音が割れない」録音で話題の 32bitフロートをオーディオインターフェイスで使えるようになった。

Portacapture X8 は 2021年 11月頃に発売されたレコーダーで、波形研究所では今年はじめに導入、主にフィールドレコーディングや、ライブの生録用に使っている。なので、DAW 機器というイメージがなかったのだが、最新ファームで「あぁ、これは DAW 機器にもなるな」「外部録音は Portacapture X8 を使うようにしよう」ということになった。せっかく持っているので紹介しておく。

32bitフロート・フォーマット – なぜ音が割れないのか

32Bit float

確かにレベルを下げると波形があらわれる(右)


「音が割れない」で有名な 32Bit float 録音。波形上、完全にクリップしたオーディオがレベルを下げることで波形が復活するという、にわかに信じ難いテクノロジーなのだが、なぜクリップしないか簡単に説明しておく。

「クリップした波形はピークを超えた部分は記録されていないはずなのに、なぜボリュームを下げたら復元されるのか。潰れた音が小さく再生されるだけなのではないか。」

普通はそう思うよね。DAW を使っている波形編集の知識がある人は特に。

例えば DAW でオーディオを処理している時にピーク越えした音はクリップする。でも、フェーダーを下げるときちんとしたサウンドになる。0db の上にもマージンがあるように感じると思う。それは DAW はコンピューター処理においては 32Bit float モードで処理しているから。

32bitフロートでは、より広い範囲のオーディオ値の記録を可能にしている。一見すると8bit増えただけのように見えるが、はるかに広い音を拾えるようになったのだ。

広い視点で捉えてみよう。16bitでは、最大96.3dBのダイナミックレンジ(小さい音と大きい音の差)で録音できる。また24bitでは、最大144.5dBのダイナミックレンジでの録音が可能だ。

これに対して32bitフロートを使うと、最大1,528dBという途方もない範囲で収録できる。これは24ビット録音の範囲をはるかに超えるだけでなく、地球上で「音」と捉えられるものの規模さえも超えている。

音声録音のレベル調整が不要になる? 新フォーマット「32bitフロート」について知っておくべきこと / WIRED

最大 1,528dB のダイナミックレンジ。32Bitフロートのダイナミックレンジはほぼ無限大だ。よって、32Bitフロートで録音されたサウンドは「音が割れない」、そう、割れるわけがないのだよ。

逆に、16Bit オーディオでバウンス(ダウンサンプリング)するということは、1,529dB のオーディオを 96.3dB に押し込んでいることになるから、まぁ、すごい世界だよね。

16/24Bit のオーディオはクリップすると元に戻らない。オーディオインターフェイスなどのハードウェア入力はクリップするとおしまいだった。ハードウェアが 32bitフロートに対応することの意味が分かるのではないだろうか。

TASCAM Portacapture X8

TASCAM Portacapture X8
TASCAM Portacapture X8 は 8トラックのハンドヘルドレコーダーで、XY 型のマイクを搭載(True X-Y方式、A-B方式の切り替えが可能)している。32bit float録音対応しているだけでなく、デュアルADコンバーター(ハイゲイン用とローゲイン用の AD 変換を搭載している)。USB で接続すれば、最大8入力(6チャンネル + 2ミックス)、2出力の32bit float対応USBオーディオインターフェースになる。

TASCAM Portacapture X8

4系統のファントム電源対応マイク、ラインレベル※の入力が可能なXLR/TRSコンボジャックを装備。マイクプリアンプは、TASCAMのノウハウが詰め込まれたディスクリート回路を用いたHDDA(High Definition Discrete Architecture)を採用し低ノイズでクリアな録音を実現する。

TASCAM Portacapture X8 サイド

ライブ録音で数回使っているが、まぁ、音が割れませんから。セッティングは非常に簡単になった。これは大きい。ライブハウスでいい感じで録音してたのにドラマーがソロで盛り上がって、ガンガンにピーク越えなんてことがあったが、レベルを調整すればクリップもしない。実に強力だ。

バッテリーの持ちもいいし、見た目ほど重くもない。XY/ABマイクの交換でライブなど中心寄りのサウンドも広がりのある環境音も狙える(ちなみに、XYとABでかなり音のイメージは変わる)。

ZOOM と比較してなぜ TASCAM を購入したのか

32bit float録音対応としては ZOOM F3 が先行していたが、なぜ TASCAM Portacapture X8 を選択したのか。

ずっこけるようで申し訳ないが、32bit float録音対応が条件だったのではなく、TASCAM のフィールドレコーダーとしての安定感・実績が最初にあって、それから機種を選択したんですよ。フィールドレコーダーは意外に安いものなので、「ライブ録音とかで失敗がなくなる 32bit float はいいなぁ」と思って、Portacapture X8 をチョイス。

あと以前、Zoom Q2n を使っていたんだけど、発熱が問題になったのと、バッテリーがあっという間になくなる、メニューが分かり難いなど、スペック比較では現れ難い現象に悩まされたので、安定の TASCAM を、という結論に。

フィールドレコーディング用で購入したものの、32Bit float オーディオインターフェイスにもなるということで、オススメできる機種になりました。はい。お手元にぜひ。


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波形研究所 所長

WAVEFORM LAB(ウェーブフォーム・ラボ) は音楽制作、デジタルライフ、イノベーションをテーマとするサイトです。

1997年、伝説の PDA、Apple Newton にフォーカスした [email protected] を開設、Newton や Steve Jobs が復帰した激動期の Apple Computer のニュースを伝えるサイトとして 200万アクセスを達成。2001年からサイトをブログ化、2019年よりサイト名を WAVEFORM LAB に改称、気になるネタ&ちょっとつっこんだ解説をモットーにサイトを提供しています。

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