音楽業界の現時点での本音(東芝EMI)

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NTT Com、音楽配信事業の現状と課題に関する説明会/音楽配信サービスは「違法配信への対抗措置」として推進(Internet Watch)という記事について。音楽業界のインターネット配信の本音が読めて興味深い。

日本レコード協会発表の6月出荷実績がニュースになった。出荷実績はこれまでも発表されていたが、それがニュースとなって各紙やサイトで話題となった理由は2つ。6月の出荷実績が落ち込んだこと、CCCD や著作権法改正による輸入CD規制といった音楽ファンを軽視した音楽業界に対する社会の意識の高さだと思う。前述の記事では、東芝EMIが面白いことを説明している。

違法配信が蔓延している中で、合法的に音楽を買える場を提供するべきだという観点から、音楽配信サービスへの楽曲提供を積極的に行なうことにしたという経緯を説明した。

単に違法配信を「ダメだダメだ」というだけではなく、業界として便利で合法的な選択肢を提供するというスタンスを表明している。ネットワークでの音楽配信は「実験」と位置づけられていた時代は過ぎ去り、新しい販売チャネルとしてメーカーも本腰を入れているということだろう。

「顧客に合法的で利便性の高い選択肢を提供する」と iTunes Music Store で Apple が参入してから遅れること1年たったが、それでもガッチガチの DRM でコンピュータに音源を配信するだけ。 iPod などの新しいミュージックプレーヤーで自由に音楽を楽しめたり、自由にマイセレクション CD を作るといった世界は描いていない。違法配信と戦うならば、違法配信がもたらすメリットを大きく越えるアドバンテージがなければいけないのだが、まだおっかなびっくりという感じがする。違法配信を根絶するサービスとはいえない。

現在問題となっているCDの売上減については、違法配信だけが売上減の原因とは言えないとし、音楽配信サービスは、ユーザーの音楽を聴く手段や時間の多様化という、これまでアプローチできていなかった部分に新たに取り組むものであるという認識を示した。

国内アーティストに限らず、現在投入されている音楽CDのかなりの割合が CCCD になってきた。だとしたら、違法配信対策は功を奏し、CD売上は順調に回復するはずである。それが落ち込み続けているのは、やっぱり違法配信が落ち込みの主原因ではないからだ。

1990年代、国内の音楽業界はJ-POP という強力な売上分野を構築した。しかし、マーケティング先行の音楽に力を注ぐことで購買層は広がったが、その層の音楽に対するロイヤリティは低く、ゲームや携帯電話などの「新しい出費枠」に負けてしまうという構図が出来上がった。注力分野があまりに狭く集中し、音楽の幅を広げるようなアーティストの育成を怠ったため、今や総崩れの状態だ。音楽業界不振の原因はまだまだあるのだろうが、それはメーカーが痛感している。また建前的にも売上不振の理由を違法配信とするのでは説明がつかなくなってきたということだ。

日本の音楽配信サービスはDRMの制限がきついが、iTunesのようにゆるやかなDRMでの提供はできないのかという質問については、山崎氏はDRMは当然必要なものではあるが、ガチガチにしてしまえば利用者には支持されず、現状では楽曲を提供する側と利用者の双方が納得できる点はどこにあるのかを探っている段階だという見解を示した。また、米国ではフェアユースの考え方が根付いているために、CD-Rメディアへの書き込みなどもゆるやかになっているが、日本では現時点ではこうしたバックアップを認めるスタンスにはないとした。

「ガッチガチなんて分かってますって」というところだろうか。米国ではフェアユースの考えが根付いているというのが意味不明(米国は違法配信の規模も大きいので、そんなことはないだろうよ)。音楽ファンが欲しているのは、音楽の楽しみ方を限定する方法ではない。エアチェック、ウォークマンの出現、 MD、 DVD、 Napster 、そして iPod 。これまで以上に音楽を楽しめる、音楽に夢中になれる方法を欲している。まぁ、企業が新しい手法にチャレンジするには既存ビジネスがある程度、追い込まれないといけないのかもしれない。それは音楽業界に限ったことではないけど。

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波形研究所 所長

WAVEFORM LAB(ウェーブフォーム・ラボ) は音楽制作、デジタルライフ、イノベーションをテーマとするサイトです。

1997年、伝説の PDA、Apple Newton にフォーカスした Newton@-AtMark- を開設、Newton や Steve Jobs が復帰した激動期の Apple Computer のニュースを伝えるサイトとして 200万アクセスを達成。2001年からサイトをブログ化、2019年よりサイト名を WAVEFORM LAB に改称、気になるネタ&ちょっとつっこんだ解説をモットーにサイトを提供しています。

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コメント

  1. おまえら何様、と最近良く思う

    N@Blog: 音楽業界の現時点での本音(東芝EMI)日本の音楽配信サービスはDRMの制限がきついが、iTunesのようにゆるやかなDRMでの提供はできないのかという質問については、山崎氏はDRMは当然必要なものではあるが、ガチガチにしてしまえば利用者には支持されず、現状では楽曲.

  2. KUMANOMIX より:

    まだこんな議論やってるのか!

    「NTT Com、音楽配信事業の現状と課題に関する説明会 音楽配信サービスは「違法配信への対抗措置」として推進」という記事

  3. おが日記 より:

    [music] NTT Com、音楽配信事業の現状と課題に関する説明会

    N@Blog経由。
    実に興味深いお話です。
    (東芝EMIが言うことには)現在問題となっているCDの売上減について
    は、違法配信だけが売上減の原因とは言えないとし、音楽配信サービス
    は、ユーザーの音楽を聴く手段や時間の多様化という、これまでアプ
    ローチできていなかった�…

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