これを聴いとけ! – Da Makani / Shakatak 1988

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Shakatak Da Makani

の向くままに、ちょっとレアな名盤を紹介するこれを聴いとけ! の第3回。2年半で3回目というのもちょっとアレですが、気にせずやっていきます。今回紹介するのは、シャカタクの幻の名盤、Da Makani / Shakatak 1988年 です。

Shakatak それは誰もが通る道

英国のフュージョンバンド Shakatak(シャカタク)についてはみな知っているだろうから簡単に。Shakatak は、キーボード・ピアノの Bill Sharpe を(ほぼ)中心とした1980年結成のフュージョンバンド。ピアノの旋律と女性コーラスが特徴的な聴きやすいインストゥルメント楽曲を得意とする。1982年の Night BirdsInvitations が有名。

ジャズ出身者のフュージョンバンドに比べ旋律がキャッチーでソロも分かりやすい。メンバーの演奏技能も「超絶」クラスではないため、吹奏楽アレンジや、フュージョン志向の初心者バンドで弾かれることが多い。でも実際、Bill Sharpe のピアノ、George Anderson Jr. のベース、そしてKeith Winter のギターの演奏は素晴らしい。特にゲスト扱いが多いギタリスト Keith Winter の哀愁あるメロディ・ソロプレイは、単調になりがちな Shakatak の音楽の多様性に高い貢献をしていると思う。

学生時代のジャズ研的な音楽サークルで好きなミュージシャンを問われた際に「シャカタクのビルシャープです!」と答えると、まず軽蔑される。「なんじゃ、それ」とか「中学生向け音楽だろう」とか「ちゃんとした音楽を聴いた方がいい」などと罵声を浴びる。

が、そんなジャズ研のキーボーディストであっても「シャカタク?何それ?」という人はいない。そう、ジャズ・フュージョン音楽を、特にキーボードを担当するプレーヤーなら誰もが必ず通る道なのだ。

そりゃ Lee Ritenour と Marcus Miller の組み合わせや、Chick Corea Elektric Band の方が凄い演奏はするんだろう。でも、純粋に音楽として楽しい。スタイルやフィーリングもいい。僕は Shakatak が大好きだ。

Da Makani 潮風のストーリー 1988年

もちろん超メジャーで Shakatak を代表する Night BirdsInvitations もいい。個人的には 1986年の Into the Blue も好きだ。

しかし、1988年にヨット競技のケンウッド・カップのイメージアルバムとして日本で企画され国内のみで販売された Da Makani 潮風のストーリー はコンセプトアルバムとして非常に高いクオリティのアルバムだ。正直、出来がずば抜けている。ストリートファッションミュージックとしての立ち位置やセールス成績を考えることなく制作されたこのアルバムは、海と風を感じさせる最高のアルバムだ。角松敏生の SEA IS A LADY と違ってオールシーズン聴けるリゾートフィーリング溢れるアルバムとなっている。

楽曲リストは以下の通り。残念ながら Apple Music や Spotify、Amazon Music での配信はない。CDは今でも購入可能なよう。

01. Da Makani Suite
02. a. From Sun To Sea
03. b. Windjammin’
04. c. From Sea To Sun
05. d. Cliffhanger
06. Island Girl
07. Undercurrent
08. Sea Dreamin’
09. Only Yesterday
10. Pastel Shade
11. Racing With The Wind
12. When Night Falls
13. Bermuda Rig
14. Run With The Tide
15. I’ll See Ya
16. Endurance
17. Eyes Of The Sea

なんと 17曲も収録されており、どれも名曲ばかりだ。

アルバムのトップを飾るのは Da Makani Suite。最初、静かな波のサウンドとともに Da Makani 組曲共通のモチーフとなる美しいメロディが YAMAHA DX7 の FMピアノで奏でられる。それをバンド構成、キーボードソロ、少しスローな楽曲に展開される。ソロをまわすパートなど、演奏しているメンバーも楽しそうだ。メロディをとる YAMAHA DX シリーズのサウンドも高いベロシティでは少し金属部が強調されていて最高。

Island Girl はリゾートソング、という感じ。Shakatak はこういうのは上手い。ボーカルが全力を出さない、くどくない感じがいい。

ハワイのリズム系のみで構成された Undercurrent をはさみ、Sea Dreamin’Only Yesterday と Shakatak お得意のピアノメロディ楽曲が続く。「リゾート楽しい!」というよりは、少し哀愁のあるメロディがいい。

企画モノならではだが、ベースのみの Pastel Shade やギターのみの Bermuda Rig もメンバーの創意工夫が感じられ面白い。通常のアルバムではこういうのが入らないから。

Run With The Tide では YAMAHA DX の FX が印象的。たまに入るシモンズのドラムフィルもいい。Sax がメロディとソロをとるが、これも実にいい。

アルバム最後はギターの Keith Winter の楽曲が続く(ビルシャープ感が薄まりバランスがいい)。サンプラーというのを使ってみました!というリフが印象的な I’ll See Ya。メロディはギターシンセサイザーだ。打ち込み全盛期、という感じが初々しい。

アルバム最後にして至高の楽曲、Endurance はシンセシーケンスに乗せた孤島のギターソング。メロディもソロも抜群にかっこいい。ベースも全編スラップのリフがカッコイイ。転調後すぐに炸裂するギターソロはコンパクトでありながら、Keith Winter 特有の詰め込み6連符フレーズが爆発する。エレアコも上手いけど、エレキギターも上手い。Keith は最高だ。


日本ビクターと経営統合し今ではあまり勢いがないケンウッド。ハワイ・ワイキキで行われた「ケンウッド・カップ」は5クラスをカバーするヨットレースだった。規模の変遷はあっても隔年で 2000年代まで開催されていた。ヨットレースのスポンサーとなり、オーディオ製品全盛の頃のケンウッドらしく英国のミュージシャンにイメージアルバムを作らせるなど、まぁ、いい時代だった。

そんなおおらかでいい時代のアルバム。ぜひ聴いてみて欲しい。

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波形研究所 所長

WAVEFORM LAB(ウェーブフォーム・ラボ) は音楽制作、デジタルライフ、イノベーションをテーマとするサイトです。

1997年、伝説の PDA、Apple Newton にフォーカスした Newton@-AtMark- を開設、Newton や Steve Jobs が復帰した激動期の Apple Computer のニュースを伝えるサイトとして 200万アクセスを達成。2001年からサイトをブログ化、2019年よりサイト名を WAVEFORM LAB に改称、気になるネタ&ちょっとつっこんだ解説をモットーにサイトを提供しています。

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