今年の6月の話になりますが、パラボラアンテナを見るために長野に行ってきた顛末を書いておきます。臼田宇宙空間観測所のパラボラ見学の続編です。
午前中に臼田宇宙空間観測所で巨大なパラボラアンテナに感動した僕が次へと向かうのは国立天文台野辺山宇宙電波観測所/野辺山太陽電波観測所(以下、野辺山電波天文台)。臼田が64mの巨大パラボラ一発なのに対し、野辺山電波天文台はバラエティに富んだパラボラを見ることができます。アプローチとしては、臼田から141号線をひたすら南下し野辺山に向かいます。臼田から30kmくらい。時間にして1時間弱で移動できます。直接、野辺山電波天文台に向かうなら中央自動車道の須玉ICから141号線で北上することになります。長野県で臼田→野辺山でパラボラを2カ所チェックするコースがお薦めです。もしくは逆に上って行って小諸で一泊というのもいいかもしれません(臼田と小諸は目と鼻の先なので)。
野辺山はJRで最も標高が高いところにある駅です。野辺山電波天文台はこの駅から車で5分くらいのところにあります。険しい山の中にある臼田と違って、野辺山電波天文台は平地にある非常に大きな観測所です。駐車場も大きく、来訪者を意識した作りになっています。ここにあるのは電波望遠鏡が中心で、45m 電波望遠鏡、6台のミリ波干渉計、84台の電波へリオグラフがあります。ナイトレンジャーのアルバム DAWN PATROL よろしくパラボラアンテナが並ぶ風景はまさにパラボラアンテナのパラダイスであります。日本にもこんなところがあったんですね。
駐車場に車を置き、入口左の守衛室でパンフレットをもらい、小道を進みます。まずは45m のパラボラアンテナに行ってみましょう。ミリ波干渉計のパラボラを抜け、まっすぐ大きなパラボラに向かいます。パラボラは結構奥手にあり、少しずつ大きくなってくるパラボラにだんだんとテンションが上がるはずです。途中にはアンテナを説明したパネルがあります。道も舗装されており、素朴な臼田に対し洗練された感じがします。旅行にあたって参考にしたパラボラアンテナ WIKIに「勝手に「貴婦人」 と呼んでいる」というくだりがありますが、白い45mアンテナは女性的なものを感じさせます。アンテナに近づくと「ここから先は携帯電話の電源を切って下さい」との看板があります。
45m のアンテナが目前に迫ります。臼田のアンテナが上を向いて皿の内側を見ることができなかったのですが、野辺山ではアンテナらしい「不安定なバランス」を楽しむことができました。臼田は遥か上空にアンテナがあったのですが、こっちは巨大な反射鏡を間近に見ることができます。凄い、凄いです。この巨大なパラボラアンテナは傾くだけでなく、アンテナ建造物ごと回転するようです。
パンフレットを読むと、主反射鏡は畳ぐらいの大きさのパネル600枚でカバーされており、それぞれがミクロ単位で調整されているようです。反射鏡の電波を受ける副反射鏡(中心に浮かんでいるやつ)は直径4m。傾けた時に自重で変形する主反射鏡の誤差を調整するようです。凄い。ここでも受けた電波を冷却する装置があるようです。本日2回目ですから「なるほど、零下200度ぐらいに冷却してノイズを減らすのね」などと知ったかぶりです。なぜ冷やすとノイズが減るのかはまだ説明できません(苦笑)。
パラボラは付近を1周できます。裏側の施設でパラボラ建設の歴史を見て下さい。意外に感動できる内容です。まさにプロジェクトXという感じ。
ミリ波干渉計は数台並んでいます。これら10m 規模のアンテナは台車で移動できるようになっており、周囲には線路があります。移動しているところを見たいものです。離れた地点での電波数値をつなぎ合わせることで600mのアンテナに匹敵する解像度を実現しているとのこと。同じ時間に撮影された離れた地点で受信した電波を画像のアンシャープマスクのように処理することで解像度を上げるのですが、遠く離れたハワイの天文台と連携することで仮想的に非常に大きなアンテナを作ることができるそうです。これだと論理上、地球の直径(約12,000km)以上のアンンテなを作ることができません。そこで、電波天文衛星と連携することで直径30,000kmの電波望遠鏡と同様の解像度を作りだせるそうです。
しかしながら昨今、都市部、周辺地域での電波利用が増えているため、年々観測が大変になっているとか。携帯電話なんて「悪だなぁ」なんて思います。
84機の電波へリオグラフは残念ながら近くまで寄れませんでした。まぁ、ちょっと高いところから見ないと全体が見渡せないでしょうから、見学ではいたしかたないというところでしょうか。
これでパラボラアンテナの1日旅は終了です。野辺山の後、清里に寄って高原アイスクリームを食べて帰るといいでしょう。ちなみに清里のレストランの多くはいまだに外税でした(まずいだろ)。みなさんもパラボラアンテナの魅力に触れていただければと思います。
コメント
パラボラ見たくなった…
最近露出の多いパラボラアンテナ。某S氏のページで出たかと思ったら、MacPeople 2004年09月号の表紙になっていたりと、偶然にしてはデキすぎ。んでもって、そのエントリ読んでいたり、表紙の写真を眺めていたりしたら…。 不思議なもので、コレが見たくなった。 幸いにも…
私はこちらの「野辺山電波天文台」は見学したことがあるのですが、「臼田宇宙空間観測所」のパラボラは見たことがありません、
文章を読んでいると無性に見に行きたくなりますね(^^
ところで、アンプのノイズの話しです。
微小信号を増幅する場合、それが通常のアンプの雑音レベル以下であれば、そのアンプで増幅しても雑音が大きくなるだけで、信号は埋もれてしまい増幅することができません。
雑音の大きな要素に「熱雑音」というものがありまして、これは半導体とか抵抗に発生するもので、素子の中を電子が進む際に熱によって電子がふらふらと進むために端子間の電圧がランダムに微妙に変動することから発生します。
絶対零度に比例して発生するので、温度を下げることでその熱雑音も下げれるので、微小信号の初段増幅用アンプは冷却されて使用されていることが多いようです。