夏休み課題図書 Eric Ries 著「リーン・スタートアップ ―ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす」を読了。ビジネス書はまぁまぁ読む方だけど、この本はかなり気づきが多かった。読んでみて、「わぁ、なるほど!」と触発されて、自分の考え方やビジネススタイルについて深く影響を受けた本としては、定番だけど、タスクの全体最適配列と優先順位づけの参考になった 「ザ・ゴール – 企業の究極の目的とは何か/エリヤフ・ゴールドラット」、デザイン思考で非経験領域にでもチャレンジできることを学んだ「発想する会社 – 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法/トム・ケリー」とか。
今回の本は、スタートアップ:立ち上げ期になるベンチャー企業や大手企業にあっても新事業に取組もうとしているチームを対象に、「構築‐計測‐学習」という小さなバッチサイズで学びのサイクルをまわし、真に顧客をとらえた製品開発を可能にする手法を解説。リーンとは、トヨタのリーン生産方式の「リーン」です。「ムダのない」というのはコストエフェクティブだということだけでなく、戦略的なブレがない、という話でもあります。
製品の企画マネージャーなら、開発機能や品質、デザインなど最高の状態で世の中にリリースしたいと思うもの。そして、仮説に基づき作りこんだ製品をリリースしたものの、思うような成果やフィードバックがなかった時は途方にくれる。それでも諦めないことが大切だと思って進んでしまう、なんて経験があると思う。
リーンスタートアップ方式では、顧客のニーズを検証する「実用最小の製品 MVP – minimum viable product
」を作り、市場で検証しながらアジャイル的に製品開発を行う。「我々の技術を使いたいと強く思う顧客が本当にいると確かめる」という仮説から進んで実際の市場検証による開発方式だ。
「アイデア → 構築する → 製品 → 計測する → データ → 学ぶ → 最初に戻る」というフィードバックループをまわしながら製品開発を行うのだが、このループを非常に小さいサイズ(バッチ)でまわすことで、スピードとコスト効果を最大限にする方法を論じている。
ま、詳しくは読んで欲しいのだが、起業家やベンチャーが成功率を高めながらスタートアップできる方法であると同時に、中小企業の経営にもこの考えは大きな効果を与えるものだと思う。要はリソースが十分でない会社が正しく最短距離で事業を前進させる方法なのだから。
実際には本を読むだけではダメで(魔法の本ではない)、仮説の計画、学びのポイントの作成、バッチサイズの規定、結果の検証と、検証結果により事業転換を図らなければならない場合の判断(ピボット)など、実務経験が必要なことも多い。しかし、「このメソッドでいけば、思い込みではない正しい世界に行けるのだ」というポジティブな姿勢で仕事が出来るようになると思う。
不確定な時代の迷える製品開発者にオススメです。
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