世界の頭脳によるディスカッションが大いなる気付きになる1日 : ノーベル・プライズ・ダイアログ 東京 2017 知の未来 ~人類の知が切り拓く人工知能と未来社会~

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Nobel Prize Dialogue Tokyo 2017
Nobel Prize Dialogue Tokyo 2017 知の未来~人類の知が切り拓く人工知能と未来社会~The Future of Intelligence(公式サイト)に参加してきた。

Nobel Prize Dialogue Tokyo(ノーベル・プライズ・ダイアログ東京)は、ノーベル賞授賞式の時期に開催されている一般向けの公開サイエンスシンポジウム Nobel Week Dialogue を日本で開催するイベント。スウェーデン以外でこのようなイベントが開かれるのはこの日本のみで、2015年の第1回に続き 2回目である。

テーマの The Future of Intelligence は2015年の Nobel Week Dialogue のテーマであったが、AI の研究成果が具体的な形となってあらわれた 2016年を経てのテーマ設定であり、議論の中心も AI 技術の未来というより、AI が存在する社会をどのように迎えるか、という点に主眼があると思う。

アカデミア寄りの、かつ異分野の世界の頭脳が集まって繰り広げられる議論には多くの気づきがあった。共有しておきたい。

AI は人類にとって「脅威」か?

「コンピュータが人類生存の脅威となる」といった文脈はコンピュータが登場して以来の古典的なテーマでもあるが、AI の登場でその論調は具体性を帯びて実感できるものとなってきた。

それはコンピュータの処理手法の技術的転換、これまでのアルゴリズム/ルール型ではなく、学習型が用いられるようになったことが理由だと思う。複雑なアルゴリズムを脅威的な計算能力で処理していたコンピュータが、現在では大量の情報を学習することによって認識・処理を行う。既に AI の判断処理ロジックはブラックボックスで人間が理解できるものではなく、コンピュータは学習によって「知性」を獲得するのでは、という予測が背景にある。

人類はその歴史の中ではじめて自らより「高い知性」と出会い、その知性との競争をすることになる来を誰もが予感しており、そのことに漠然とした恐怖を感じている、と思う。

AI と人間の「インタラクション」

Nobel Prize Dialogue Tokyo 2017
「インタビュー “人間の「知」とは何か? (1) ” -進化がもたらす人間の「知」-」セッションで、総合研究大学院大学理事・教授の長谷川眞理子氏は AI と人間の関係性について、人類学の観点から考察した。主旨としては

チンパンジー等の動物と人間を大きく異なるものと位置付けている要素が「言語」である。言語は単なる信号ではなく、状況の伝達だけでなく自意識の伝達とフィードバックによる自意識の醸成を可能にした。

この「自意識」は個々には異なるものの、相対としては人類が共通に持つものである。「自意識」を言語によって「伝達」し「共感」を得る。これが人間のインタラクションの基本である。

対して機械の論理は「合理性」を基準としており、そのインタラクションは人間とはずいぶん異なるものとなっている。そこにギャップがあるのではないか?

AI の存在目的が戦略判断であれば、そこに必要なものは「オプションの提案」であり結果として「経済性や合理性の最大化」となる。一方で AI が人間とコラボレーションするツールや存在となるのであれば、人間とコンピュータは共通のインタラクションルールを持つべきであり、AI は人間らしい情報の伝達をするべく構成・構築されなければならない。

Nobel Prize Dialogue Tokyo 2017

なんのための AI か、それは人間とどう関わるのか

「AI はルールベースではなく特徴抽出と評価という学習によって形成されたパターン認識の塊。ベースの情報量は人間に到底処理できない規模であり、人間より多くのことを織り込んで判断を下す。だったら人間はどこで差別化するのか、また大きな情報量の中で個々の人間の存在は軽いものになってしまうのではないか?」

ICT 業界にいることで、自分の AI 理解がそんな技術手法思考に凝り固まっていたことに気づき、驚いた。

「知性」云々の前に、そもそも AI の生まれはどうなのだ、という話だ。AI は何のために生まれるのか。人間との関係はどう位置付けられるのか。

  • 人間から一方的に処理を指示される存在(接触、機械にとって内向き)
  • 人間に対し決定のための助言をする存在(関係性は双方向、責任は人間に)
  • 人間と協働する存在(関係性は双方向、責任も双方)
  • 人間と接することなく自律的に処理を行う存在(非接触、機械にとって内向き)
  • 機械と機械の連携(人間とは非接触、機械にとって双方向)

AI もプログラムだ。インプットと処理とアウトプットがある。アウトプットの定義を「人間との関わり」観点で整理する ことで、AI の性格は大きく変わってくるはずだ。ヒューマンインターフェイスは外装ではなく設計思想の根幹となり、コンピュータの主題は処理から関係性に移行していると考えると、AI の違った顔が見えてくる。

機械との関係性をどう描くかによって AI の設計は全く異なったものになってくるのだろう。

AI と AI の関係

人間と AI の関係性の次は、AI 側、人間側の変化を個別に考えたい。まずは AI 同士の連携について。

AI は人間同様、互いに教え学び合うことができる。「インタビュー : 人工知能の未来と挑戦(2)” -機械学習と脳科学-」セッションにおいて、Google リサーチ部門 ディレクターは Peter Norvig は機械学習はより少ないサンプルから知識を得るようになる、という例の中で「学んだコップの持ち方は共有される」と説明した。

また機械学習は学習の範囲について大枠で捉えるようになっている。今や、AI における翻訳では、単語個別の意味というよりは言い回し、文章が持つ意味合いを学習している。よって、直接に各国言語の対訳関係を保持していない言語ペアについても翻訳が可能だ(今や AI はコア言語にしばられない「真の意味でのユニバーサル言語体系」を内に持っている、と解釈されている)。

AI が人間とのインタラクションの要請から「自意識」や「個性」を設計されたとする。一方で AI が個々に持っている知識はスコープや次元がバラバラだ。コップの封入ロボットにとっては壊れないコップの持ち方は重要な論点だが、家事支援型ロボットにしてみればコップの持ち方は要素の一部に過ぎない。

知識のレベルに大小があるならば、究極的に知識の集約が行われた AI の自意識や個性は全知全能に近づくのだろうか。それともそれは巨大なノウハウ本の集約でしかないのか。知識と知恵の定義が必要になってくる。

この論点は今後の宿題にしようと整理した。

人間側の変化

次に人間側の変化。短期的には AI との関係性について、中期的に自らより優秀な存在が出現することに備える意味で、人間の情報処理のあり方も変化する。

「パネルディスカッション “科学技術の挑戦(2)”」において、欧州委員会共同研究センター所属エンジニア&フィロソファー Nicole Dewandre は、「急激な情報過多な時代の到来により、人類の細分化が加速する」と警告した。例えばニュースのカスタマイゼーションにより、人々が受け取る情報の偏りが大きくなり、結果として人類を分断する方向に動いている。また情報の操作容易になっている。

情報時代は人々を自由にするのではなく、カテゴライズしている、とすれば情報産業に携わる人間のテクノロジーへの姿勢が問われることなる。

2014年にノーベル生理学医学賞をしたノルウェー科学技術大学教授 Edvard I. Moser は情報過多に人間の注意力が奪われていると警告する。騒音の中でも必要な情報を聞き分ける人間の集中力が、情報処理のために無尽蔵に費やされる、簡単に言えば、「一日中スマホを見ている」という状態を引き起こしている。

「無料サービスのために、人間は自分の注意力を対価として払っている」という解釈も議論された。支配/管理、コントロールの行方、が論点としては宿題だ。

自分自信で選び、学ぶことが必要、自分の力で自分を整えていく力が必要

Nobel Prize Dialogue Tokyo 2017
情報過多な時代の QOL を考えると、人間側の「自衛」が必要になってくる。Nobel Prize Dialogue の異分野の裾野の広さを示すセッションが、「インタビュー “人間のこころ”」だ。臨済宗大本山円覚寺派管長の横田南嶺を迎え、仏教や禅といった観点から情報過多社会の人間のあり方を論じた(ちなみに横田さんは筑波大学出身)。

禅における「冷暖自知(れいだんじち)」、人間の「実感」を重視する考え方を解説。実感は人に伝達できない。そこで普遍化の手法として言語・哲学・論理が補完のために使われている。

この情報過多社会、その高度さに人間が対応できなくなっている技術に対し、横田管長は「人は葛藤を感じている」と表現する。その葛藤に耳を傾ける、自分自身で選び学ぶこと、自分の力で自分を整えていく力が必要になってくると説いた。

Nobel Prize Dialogue Tokyo 2017
多様な知見や異分野の交流が大切、と言われるが、異なる分野では全く違った「深堀り」がなされていることに正直、ノックアウトされた感じだ。自分の無知をひたすら恥じる。

さてこのイベント、参加は無料でかつコーヒーやサンドイッチといったランチまで用意される。一般の参加枠は1,000名ほどで、一般参加者は感覚的に1/3といった感じ。基本的に英語で進行するが同時通訳も提供される(分子モーターが云々、なんて英語は一般の人には無理だろう)。至れり尽せりだ。

世界の頭脳、その分野の一流の人材が研究者から産業界(や法曹界)から集結する。世界最高峰のアウトリーチを無料で体験できるのは凄い。次回も楽しみにしている。

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