最近は仕事で AI 開発・応用なんてやっていて、そうすると AI について思うところがあっても、あまりブログで書かなくなる。音楽配信や電子書籍配信の時もそうだった。デジタルライフにかかわる大きなテーマだし、それなりに情熱と時間を注ぎ込んでいるテーマなんだけど、ブログではスポッと抜けている。ちょっともったいない。
生成 AI が人間の創造的な作業を代替できるようになってきた。仕事では自然言語処理を中心にしているので画像生成や動画生成には詳しくないんだけど、AI がライターの仕事を奪っているように、やはりイラストレーターや動画制作者の仕事も少しずつ奪っているのだろう。音楽業界にもその波は来ていて、AI をどのように位置付けて扱っていけばいいのか業界でも議論が続いている。
音楽産業の企業が集まって AI 活用におけるイニシアティブ、AI For Music を設立している。AI For Music の基本原則について書いておく。
AI For Music
AI For Music は、Roland Corporation と Universal Music Group が主導している AI に対する業界イニシアティブ(設立は昨年の6月のことだ)で、生成 AI 新時代におけるミュージシャンの創造性と権利を守るという目標のもと、音楽制作における AI 活用の指針を AIによる音楽制作原則(Principles for Music Creation with AI)としてまとめている。
- 私たちは、音楽が人間性の中核を成すものであると信じています。音楽を楽しみ、創造することは、私たちの健康、幸福、そして幸福に不可欠です。音楽は、お互いと私たちの周りの世界との人間的なつながりを提供し、深く個人的なものです。
- 私たちは、人類と音楽は切っても切り離せないものだと信じています。音楽の真の意味は、人々の直接的な創造的な貢献なしには存在できないと信じています。
- 音響機器から電子機器にいたるまで、私たちは、テクノロジーが長い間、人間の芸術表現を支え、そして持続可能な形で応用されてゆく中で、AIが人間の創造性をさらに広げることを信じています。。
- 私たちは、人間が創造した作品は尊重され、保護されなければならないと信じています。著作権で保護された作品の使用、および音楽アーティストの名前/画像/肖像/声の使用は、使用前に承認されなければならず、音楽アーティストは彼らの貢献を認められるべきです。
- 私たちは、責任ある、信頼できるAIには透明性が不可欠であると信じています。ファンからアーティストまで、すべての利害関係者の間で信頼を確立し、維持するために、AIを活用したクリエイティブプラットフォームとポリシーは、作成者に光を当てながら、記録管理と開示を優先する必要があります。
- AIを活用したクリエイティブな体験が想像され、戦略化され、計画・実行されるとき、私たちは、音楽アーティストやソングライター、その他のクリエイターの視点が尊重されなければならないと信じています。
- 私たちは、音楽に命を吹き込むことへの手助けができることを誇りに思います。私たちが制作する楽器、私たちが代表するアーティストとソングライター、そして私たちがサポートする音楽教育プログラムを通じて、私たちは創造性を刺激し、可能にします。
音楽産業の協会、アカデミック、ブランドが現時点で50団体ほど集結している。ソフトウェア・ディベロッパーに加え、SEQUENTIAL や Oberheim なども名を連ねている。ローランドが発起人になっているので、ヤマハ、(子会社の)コルグなどは乗りにくいのか、現時点で参加していないようだ。
デジタルによる破壊 でもみられた現象だが、産業におけるイノベーションは、新しい技術・新しいビジネスモデルをもつ新規参入者が業界ルールを破壊・再構築することで、レガシープレーヤーを駆逐していく。
よって、AI for Music に名を連ねている企業は古参が多いのも仕方がないのだが、製品開発の現場において「指針・原則」は必要になるものであり、各企業が AI をどのように位置付け扱っていくかを考える・検討するためのコミュニティとしては面白い取組みだと思う。AI for Music と、それに全く対峙してしまうことになる企業がどのようなサービス・製品を展開していくのか目が離せない。
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