今年、出会えてよかったと思う1番の本を紹介する。「1日1つ、なしとげる! 米海軍特殊部隊SEALsの教え」、Make Your Bed: Little Things That Can Change Your Life…And Maybe the World の翻訳本だ。知らなかったが、2014年のテキサス大学での Commencement Speech が出発点となっているそうだ(このページ末に引用しておいた)。
米海軍特殊部隊 SEALs の名称は、海(SEA)、空(AIR)、陸(LAND)の頭文字により構成されており、「地球上のあらゆる空間を制覇する最強部隊」を意味している。SEALs で37年のキャリアをもち、サダム・フセイン捕獲やウサマ・ビン・ラディン殺害といった特殊ミッションを指揮した William H. McRaven ウィリアム・H・マクレイヴン による本だ。自身の SEALs でのキャリア、特殊部隊の指揮官として、様々な厳しいオペレーションの司令官という任務を遂行する彼を支えてきた体験やルールを知ることができる。それは軍隊的なハードでマッチョなものでは全くなく、シンプルで誰でも行え、そして人生において体験する事象をくぐりぬけるための生きたルールだ。
テキサス大学卒業の感動スピーチが書籍化。自分を強くし、世界をよりよくするために、1日1つ、小さなことをなしとげよう――米海軍特殊部隊SEALsとして37年のキャリアを持ち、元米海軍大将の著者が語るのは、ごくシンプルな教えだった。毎朝ベッドを完璧に整える。たったこれだけで「なしとげた経験」から1日をスタートでき、1日が生産的になるのだ。不屈の精神を育むための、簡潔で力強いメッセージ。
NAVY SEALs の入隊訓練の朝はベットメイクからはじまる
SEALs の6ヶ月に渡る厳しい入隊訓練の朝は、ベッドを正しく完璧に整えるところからスタートするのだそうだ。
ベッドは部屋と同じく簡素そのもの。スチールのフレームにマットレスが置かれているだけだ。シーツは2枚あって、1枚はマットレスを包む敷きシーツで、その上に掛けシーツを重ねる。グレーのウールの毛布の縁は、マットレスの下にきっちり折り込む。サンディエゴの冷え込む夜には、毛布が手放せない。
2枚目の毛布は、ベッドの足側できれいな長方形になるように上手に折り畳む。枕は視覚障害者支援団体「ライトハウス」が製造したもので、ベッドの頭側の中央に立て、底が毛布の縁と90度に接するように置く。これが正しい置き方なのだ。
この基準から少しでも外れていると、ペナルティとして“波乗り”に行くことになる。波打ち際に飛び込んだ後、頭からつま先まで全身が砂まみれになるまで砂浜を転がり回るのだ。仲間内ではその姿から「シュガークッキー」と呼ばれていた。
身動きだにせずにまっすぐ立つ私の視界から、教官の姿が消える。教官はやれやれといった表情で私のベッドに目をやる。かがみ込んで四隅にたるみがないか丹念に確認してから、毛布と枕が90度に接しているかどうか調べる。今度はポケットから25セント硬貨を取り出し、軽く空中に放ってはつかむ動作を何度か繰り返している。
ここまでくると、ベッドメイクの最終チェックだ。教官が宙に放り投げたコインはマットレスの上に落ち、その反動で10センチほど飛び上がる。充分な高さにジャンプしたコインは、教官の手に見事に収まった。
教官は私の前に戻り、まっすぐに目を見ながら、うなずいた。言葉は一切ない。ベッドメイクが完璧でも褒められることなどない。できて当然のことだからだ。これが1日の最初の日課だから、正しくやりとげることが重要だった。自制心の高さをアピールする機会でもある。細部にまで心配りができることも意味する。
困難な体験に立ち向かうのは、ひとつひとつ挫けずに進むこと
著者のウィリアム・マクレイヴンはパラシュート事故で数ヶ月の間、ベッドで生活する体験をしている。彼が毎朝ベッドを整えることで、怪我を克服し、前に向かって歩み始めていることを表明した、という逸話が紹介されている。
ほんの数週間ではあるが手術で入院していた頃の自分の体験や、同時に発生したパラダイムシフトとどのように接するかという現在進行形の課題に、本当に役に立ったし、勇気付けられた。
ページ末に引用した Commencement Speech の原稿は最後の章に収録されているので、ぜひ原稿を読みながら動画をみて欲しい。書籍としてはそんなに長くない。むしろ短い 160ページほどの本だが、いつでも読み返せるように、自分は Kindle 版を買った。時々、旅先ででも読み返してみたい。
繰り返すが、ミリタリーな本ではない。大人が自分の人生を生きる上で大切にすべき姿勢や、困難や理不尽な出来事に対処する心構えについて書かれた本だ。ぜひオススメしておきたい。
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