ビッグ・クエスチョン 人類の難問に答えよう – ステーヴン・ホーキングが最後に人類に贈る渾身のアウトリーチ

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ビッグ・クエスチョン 人類の難問に答えよう

日、ブラックホールの姿をとらえた画像がはじめて公開された。ブラックホールの存在を解き明かし、宇宙物理学に大きな問いをもたらした科学者といえば、アインシュタインとホーキングだ。

偶然にもここ数日、スティーヴン・ホーキング( Stephen William Hawking )の本を読んでいた。研究者の役割として研究による成果の創出の他に、アウトリーチ、つまり科学技術の成果を平易な解説を通じて一般社会への周知・啓蒙を行う活動がある。ホーキング博士はアウトリーチの面においても超一流の研究者だった。彼の有名な著作物に「ホーキング、宇宙を語る」があるが、今回読んでいるのは、ビッグ・クエスチョン 人類の難問に答えよう だ。

ホーキング博士が科学への興味を喚起しつつ解説するビッグ・クエスチョン

ホーキング博士が解説するビッグ・クエスチョンは以下の 10テーマ。

1 神は存在するのか?
2 宇宙はどのように始まったのか?
3 宇宙には人間のほかにも知的生命が存在するのか?
4 未来を予言することはできるのか?
5 ブラックホールの内部には何があるのか?
6 タイムトラベルは可能なのか?
7 人間は地球で生きていくべきなのか?
8 宇宙に植民地を建設するべきなのか?
9 人工知能は人間より賢くなるのか?
10 より良い未来のために何ができるのか?

本書は訳者に実力も大きく関係していると思うが、一般相対性理論と量子論を含めてこの世界を支配する物理法則を非常に平易に説明しており、かつ加えて一般社会人が重要視する宗教や偏見、非科学的視点に理解を示しながら、科学的興味をそそる形で人類の大きな問いへの見解を披露している。

あー、平易に言うと、「この本、すごく面白い!」と興奮する書籍であるということだ。

ホーキング博士は科学分野の課題・成果に関するアウトリーチを重要視している。彼の最後の仕事のひとつであるこの書籍の執筆は、彼が貢献してきた現代の科学技術の進展と成果を、分かりやすく説明するものだ。

基本粒子の集まりにすぎない私たち人間が、自分たち自身を支配する、そしてまた私たちのこの宇宙を支配する法則を理解できるようになったという事実は、偉大な功績だということだ。私は、本書に取り上げたビッグ・クエスチョンを考えると胸が躍るし、それらを探求することに情熱を傾けている。その興奮と情熱を、みなさんに伝えたいのだ。
  「ビッグ・クエスチョン 人類の難問に答えよう – なぜビッグ・クエスチョンを問うべきなのか?」より

科学が面白くなる考察が、選び抜かれた言葉で科学に対する熱量とともに解説されている

この本を一人でも多くの人に読んでもらって、この世界を支配する物理法則への気づきと、彼の科学に対する情熱を味わってもらいたい(その助けがしたくエントリーを書いている)。宇宙物理学が専門のホーキング博士だが、ブラックホールに関する考察は本を読んでのお楽しみにということで、ここではデジタル時代の未来に関するテーマについて紹介したい。

人工知能の進化に対する警告

人工知能の進化については、「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」みたいな生ぬるく科学的に浅い本とは異なり、AI の進化が実現した未来で起こる論点を慎重かつ大胆に論じ、警告している。

気がかりなのは、AI の性能が上がって、加速的に自らを再設計できるようになることだ。ゆっくりとした生物学的進化の速度に制約された人類は、そんな AI に太刀打ちできず、AI に取って代わられるだろう。そして将来的には、AI は自分自身の意思を持つようになり、私たちの意思と対立するようになるだろう。

彼は、コンピュータ化された証券取引システムが実際に巨額な市場下落を引き起こした実例をあげながら、攻撃目標を自律的に判断する兵器開発や、安価な AI 兵器が明日のカラシニコフになって、犯罪者やテロリストに売られるという近い将来に起きる危険性、そしていずれ訪れるシンギュラリティー後の世界も考察する。

ひとことで言えば、スーパーインテリジェントな(朝知能を持つ)AI の到来は、人類に起こる最善のできごとになるか、または最悪のできごとになるだろうということだ。AI のほんとうの危険性は、それに悪意があるかどうかにではなく能力の高さにある。スーパーインテリジェントな AI は、目標達成能力はすばらしく高いけど、AI の目標が私たちの目標と合わなければ、私たちにとってはまずいことになる。
(中略)
計画は先を見据えて立てなければならない。もしも私たちよりも優れた地球外生命の文明が、「数十年後にそちらに到着する」というテキストメッセージを送ってきたとしたら、「了解、到着したら連絡してくれ。電気をつけておくから」と返信するだろうか?(中略)AI については、ほぼそんな事態になっている。

彼の論理はシンプルで非常に説得力がある。人工知能の進化に対する動きとしては、イーロン・マスクとの具体的な取り組み、ビル・ゲイツやスティーブ・ウォズニアックとの連携、そして彼が関わっていない取り組みを含め、ネガティブ感覚で説明していはいない。彼は「慎重にポジティブに対処を進める必要がある」とのスタンスだ。

ITテクノロジーに関わる多くの人に彼のメッセージが届けば、人類の将来に具体的な成果がもたらせると思う。

宇宙物理学が彼の専門であるが、彼はビッグ・クエスチョンにこだわり続けた。一般社会では宗教的観点とみられる「神は存在するのか」というテーマ、そしてこの書籍で語られる10のビッグ・クエスチョン以外にも近い将来に人類が直面する環境問題や政治に関するテーマも考察を述べている。

ホーキング博士は昨年、2018年3月14日、76歳でこの世を去った。昨日のブラックホールの実写映像も本当に彼に見て欲しかった。

本書の後書きには彼の娘であるルーシー・ホーキングやのほか、博士と彼女のセオリーでホーキング博士を演じたエディ・レッドメイン、そして盟友キップ・ソーン博士による 10ページにわたるテキストも掲載されている。正直、泣ける。これは歳かな。

ニュートンはわれわれに答えを与えた。ホーキングはわれわれに問いを与えた。そしてホーキングの問いそのものが、数十年先にも問いを与えつづけ、ブレイクスルーを生み続けるだろう

そう訴えるソーン博士の言葉が彼の偉業をうまく表現しているように思う。ぜひ、この本を手にとって欲しい。


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