愛用しているピアノ音源、Synthogy Ivry の新バージョン Synthogy Ivory 3 German D が発表・販売を開始している。
Synthogy Ivory とは
Kurzweil Music Systems のエンジニアだった George Taylor と Joe Ierardi が創業した Synthogy。自分が知る限り、ピアノ音源しかリリースしていない。2000年初頭から活動しているのではないだろうか(このブログに Synthogy Ivory が初登場するのは 2005年だ)。
Kurzweil はシンセサイザー・サンプラーを製造・販売していた老舗(なんと現在もある!)。Chick Corea が Kurzweil K250 や MIDI Board を使っていたし、Kieth Emerson も K250 と一緒にうつった写真があったと思う。PPG Wave 2.3 や YAMAHA CS-80 同様に、憧れのプロ機種だったのではないだろうか。Kurzwell が販売していたキーボードはピアノのサンプルが非常によく、少ないメモリ容量に高品質のピアノ音源を収録しているということで、評価が高かった。
「そんな Kurzweil 出身のエンジニアが作ったピアノ音源が Synthogy Ivory シリーズ」と紹介されることが多い。
Kurzweil のピアノの評価が高かったのは、ピアノサウンドにおける反響部の再現(小さい音)とレコーディングで映えるピアノ表現(大きい音)の両立・バランスだと思う。その音作りを本当に George Taylor と Joe Ierardi が担当していたかは分からないが、実際、Synthogy Ivory は他の楽器と混ぜてもちょうどよい存在感があり、使いやすかった。ここが GIGA Sampler 以降の「とにかく高品質にサンプリングすればいいんだろう」と作られた多くのピアノ音源と異なるところだ。
Synthogy は Spectrasonics のように(いやそれ以上に)のんびりとした開発を行っており、地味に着実にアップデートはするものの、20年でバージョンが 3 つしか進まない、というディベロッパーだ。
ピアノサンプルはグランドピアノがスタンウェイ、ベーゼンドルファー、ヤマハ、ファツィオリをカバーしており、加えてアップライトのピアノ音源もリリースしている。
Synthogy Ivory 3
Ivory 3 German DはIvoryソフトウェア・インストゥルメントの最新世代として、バーチャル・ピアノの再現に大きな飛躍をもたらします。全く新しいRGBエンジンは、定評あるIvoryシリーズの大容量デジタルサンプリングに加え、ピアノの振る舞いそのものをリアルタイムで演算するモデリングエンジンを完全に融合。リアルで表現力豊かなサウンドを提供します。
Ivory 3 German Dは、コンサートテクニシャンの巨匠、ミシェル・ペドノーが丹念に手入れを施したドイツ・ハンブルグ製スタインウェイD-274コンサートグランドピアノをRGBエンジンのために新規にレコーディング。力強く深く響く低音と、甘く歌うような高域。そして洗練された音のバランス。美しく記憶に残るスタインウェイサウンドの真髄を発揮します。
待望の新製品、Synthogy Ivory 3 は RGB( Real-time Gradient Blending )エンジンという新開発のコアエンジンを搭載している。機能に関する詳しくは記載がないが、Ivory 特有の響版・共振の再現から Continuous Velocity to Timbre とよばれる無段階合成などを実現していると思われる。
MIDI 2.0 にも対応する。新しい Continuous Velocity to Timbre 機能はベロシティの入力により、無段階で音色変化を生成するもので、MIDI 1.0 ベロシティの127段階、MIDI(CC88) Velocity Extensionの16,384 段階、MIDI 2.0 16 bit Hi-Resolution Velocity 65,536 段階のコマンドに対し、限りなく滑らかなベロシティ変化を実現している。
今回のリリースでは、新しくレコーディングした Steinway German D274 Concert Grand を提供。新音源はこの新しい German D だけなのだが、これまでの Ivory II のサンプルも統合して動作するようだ。そのプリセットも簡素化も紹介されている。Ivory はプリセットがピアノモデルが 3つしかない割にプリセットがたくさんあったんだけど、これがシンプルになったようだ。
Macintosh Hardware Requirements
- 8-Core Intel CPU minimum, Apple Silicon CPU recommended
- 16 GB RAM minimum, 32 GB RAM recommended
- At least 42 GB free hard drive space
- Solid State Hard Drive (SSD)
- iLok key optional
Macintosh Software Requirements
- macOS 10.15 (Catalina) or newer
- Any AU v2 host, or
- Any VST v3 host, or
- Pro Tools 2020.3 or newer for AAX, or
- The included Ivory Standalone application
価格は 39,600円(税込)、Ivory 3 German D Upgrade from Ivory 2 Grand Pianos (Download) は 22,000円(税込)となっている。
MIDI 2.0 / MPE 時代到来、コントローラーが問題だ
本物のピアノは勢いよく打鍵するけど優しく着地、とかできるので、単純にステップの多さだけではないんだろうけど、ピアノ音源を弾いたり、MIDI データを編集していると、実際 MIDI 1.0 の 127段階はおおざっぱなんだろうな、と思う。MIDI 2.0 / MPE に音源側が対応してくると、コントローラー側をどうするか、という問題になってくる。
キーボードコントローラーは、スペック上で MIDI 2.0 / MPE 対応をうたっていてもあまり意味がなく、実際にどのように MIDI データを吐くか、弾き心地はどうだ、という問題になる(例えば、MIDI 2.0 に対応していたとしても、打鍵のセンサー設定が悪いと、127段階にすら出力できていないじゃん、ということになる)。
ソフトウェアと違ってハードウェアは後からスペックを向上させることができない上に、各製品、結構息が長いので、これからはコントローラー選びが重要になるなぁ、と思う。昨年秋に集中してピアノ鍵盤のキーボードをお店をまわってチェックしたんだけど、FATAR 採用をうたっていてもモデルはいくつかあるし、例えばボディの合成により打鍵音がやたらにガツガツいったりする。
そして MIDI 2.0 対応している製品はほとんどなく(対応予定はある)、まだ製品を選べる状況にない。旬はもう少し先、ということになりそうだけど、大型のコントローラーを買おうと思っている人は注意が必要かもしれないね。
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