Reason 12 リリース – 強力なサンプラーの搭載と目に優しい高解像対応

RECORDING

Reason 12

Reason 12 について。既に販売もはじまっているが、一応、紹介しておきたく思う。ご存知の通り、Reason Studios はなかば経営再建中であり、製品の絞り込みと経営リソースの集中を行っている。

いくつもあったプロダクトは、Reason を取り巻く製品群に特化しており、 Reason を介した Instruments & Effect、利益率の高い Sound Pack に開発リソースをあてている。製品としては Reason 製品のサブスクリプションサービス Reason+ もリリースしている。

Reason 12 登場まで

Reason UI

Reason は 20年前となる 2000年 12月に誕生した。Roland TR-808 / TR-909 / TB-303 をパックにした ReBirth が人気を博し、その箱庭的なコンセプトを元にした「音源ビルトイン(当時の DAW はソフトウェア音源は別売りのものが多かった)」の音楽制作ソフトウェアとして発売された。実際の楽器ラックを模したインターフェイスが特徴で、配線もケーブルをジャックに差し込むようなユーザインターフェイスは有名だ。

しかし、バージョンが進む中で、多チャンネルは前述の UI ではごちゃごちゃになり、インストゥルメントとエフェクトを集約した Combinator はターゲットとするユーザには複雑過ぎ、DAW としての機能もうまく整理されずに個別に機能強化がなされ、気が付くと初心者が直感的に操作できるような DAW からはだいぶ離れたプロダクトになってしまった。

2019年リリースの Reason 11 では外部のプラグイン(VST3 / AudioUnit)に対応し、トータル・デスクトップ・オーサリングシステムとしてアピールした。Reason はプロジェクトファイルさえあれば、制作音楽を再現できる「箱庭」的な良さがあったのだが、Reason 11 以降はそのような概念を捨てて、オープンな DAW へとの進化した。

Reason は良い製品だが、Logic Pro X や Ableton Live 、古参の Digital Performer など、オープンベースの DAW に比べてシェアが低く、ターゲットとするユーザ像が不明確になっている。初心者には KORG GADGET ほど直感的に操作はできないし、プロユーザには DAW を乗り換えるほどのメリットを提示できていない。

しかし、Reason の本当の価値は「非常にユニークで使い勝手の良い音源・エフェクト」だ。今回の Reason 12 はマーケティングチームの要員不足なのか、訴求が地味だが、Reason の良さを加速するアップデートとなっている。

Reason 12

最新作、Reason 12 の特徴は以下の通り。

  • 新しいサンプラー音源 Mimic
  • 既存の音源やエフェクトを組合せて、新しい音源を作り上げる Combinator の強化
  • UI の高解像度対応
  • デバイス・プリセットのブラウザーの改善

Reason デバイス(音源やエフェクト)は Reason だけでなく、AU / VST3 プラグインとして使うことができる。Logic Pro X、Digital Performer、Native Instruments MASCHINE、Ableton Live など一般的な DAW で使うことができる。
Reason デバイスをプラグインとして使う場合、音源なら Reason Rack、エフェクトなら Reason Effects を立上げ、その中で使用するデバイスを設定する。

Mimic Creative Sampler

Mimic Creative Sampler
新しく追加された Mimic Creative Sampler はサンプラーとしては非常に高機能だ。波形編集はタイムストレッチ・ピッチシフトの他、スライスにも対応していし、フィルターやエフェクトなどの音色加工機能お付いている。またサウンドプリセットもあらかじめ用意されており、使い勝手のいいサンプラーとなっている。

しかし、Mimic がキラーアプリかといえば微妙だ。Mimic Creative Sampler は間違いなく面白い音源だが、サンプラー機能がビルトインされている MASCHINE や独自のオーディオ処理で定評のある Ableton Live だと使いどころが微妙。現代において「サンプラーを使っていない(またはオーディオデータをサンプルとして使っていない)」というクリエーターはいないだろう。登場が数年遅いかな、と思う。

使った感じではプリセットが面白いし、サンプラーとしても使いやすいかも。フィルターをすぐに選択できるのが便利ではある。MASCHINE に比較すると可哀想だけど。

新しくなった Combinator

Combinator は Reason の音源やエフェクトを活用して、全く新しい UI を持つ「音源」をクリエイトすることができる。DAW や MASCHINE で音源アプリケーションを立ち上げた時、CUTOFF や Reso、Layer などをすぐ操作できる、いわゆるマクロという設定を行うことが多いと思う。
MASCHINE や MIDI キーボードにはノブやスライダーが搭載されているが、ノブやスライダーを音源のパラメーターと関連付けて(MIDI Learn と呼ぶことが多い)使うが、Combinator を使えば、Reason の複数の音源やエフェクトを一括でコントロールできる。

UI の高解像度対応

ユーザの高齢化が顕著な Digital Performer で喝采された新機能は UI をズームできることだった(笑)。Reason の個性的な音源やエフェクトは文字が小さく、ノブの小さい。高解像度に対応し、UIをズーム表示できる機能は、Reason デバイスの利用を確実に促進するだろう。

アップグレードするか、しないか

Reason 12

Reason を応援したい、という気持ちはあるけど、Mimic Creative Sampler は積極的には使わないだろうし、Combinator を駆使するほど使い込まないだろう、とすると、高解像度化にアップグレード費用を払うか、ということになる。

Reason 12 は製品版ライセンス(新規)が 399ドル、アップグレードが 129ドルだ。はっきりいってプロダクトの価値に比べるとこれは「安い」。もっと気軽に購入して使われるべき製品だと思う。

ちなみに、Reason 12 は Apple Silicon に対応している。が、Rosetta 経由なのか、ネイティブ対応なのかが分かっていない。Apple Silicon では Rosetta 2 経由でもネイティブアプリと変わらずに動いてしまうんだけど。

個人的には、期待して購入したストリングス音源 Friktion Modeled Strings が NI MASCHINE でクラッシュして使えないという点が修正されていればいんだけど( Reason Dev のサポートも受けたんだけど、途中から放置されてしまい)。

Update —
Fliktion + MASCHINE は Reason 12 でもクラッシュしました。あー、アップグレードする気が…

Reason を使ったことがない、という人はぜひ体験して欲しい。間違いなく音源はイイ。実は Reason の音源は多用していて、音源選びの死角とさえ思っている。KORG GADGET の音源よりも登場回数は多いのだよ。Reason の音源の良さは保証する。ぜひトライして欲しい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました