昔作ったプロジェクトファイルを整理していて思ったのが、Digital Performer や MASCHINE はプラグインのバージョンやサンプルの配置場所の問題で古いプロジェクトファイルを開くのに苦労するんだけど、Reason は拡張子を追加するだけで、まぁまぁ完全に再現できる。一部、NN-XT というインストゥルメントのプリセットを選択しなおす必要があるものの、読み込んでしまえば20年近くたったファイルでもバッチリ再現してくれる。タルカス、いやー、助かる。
現存する最も古い楽曲が 2005年に制作したこの Reason Groove である。これより古いファイル、Opcode Vision、Studio Vision で作ったファイルは残っていない。それより古いと 4tr カセットMTR で多重録音してたので、おそらくカセットでしか残っていない(MTRは売り払っているから再生できないな)。
ということでトラック解説。2005年春の制作した Reason Groove です。あなたの音楽制作の参考に。
Reason で作った Reason Groove
この楽曲は SoundCloud にアップしているのと、制作過程でいろんなことがあったのでよく覚えている。
このトラックは Reason 2.5 で制作している。はじめて買ったのが Reason 2.5 だったので、Reason を使いはじめた頃だ。そして音楽環境が MacOS X になった頃。ちなみに、Reason は Reason 3 でその後のアップグレードを中断しており、再び使いはじめたのは Reason をプラグインとして DAW から呼び出せるようになった Reason 11 まで飛んでいる。制作環境のメインは MOTU Digital Performer だから。でも今考えるともったいなかったかな。
楽曲 Reason Groove は確か、24 -TWENTY FOUR- のドラマを観ている時にふと思い立ってフレーズを採譜したのを覚えている。基本のベースパターンだ。楽曲的にはこれを展開せず、ワンパターンで作っている。楽曲作りで悩むというより、Reason を触るのが楽しかったんだろうと思う。Reason のプロジェクトファイルをみると、最初のフレーズとドラムを入力したものから最終的な楽曲の形になるまで3世代分くらしか履歴がない。当時は DAW 勉強中、ということで生産性からみると、そんなに時間をかけてないようだ。
トラック構成
Reason のトラック構成は全14トラック。なんと少ない!構成を詳しく紹介する。
- ドラムトラックは中核の REDRUM と、左右の軽めのリズムトラックを鳴らす Dr.Rex Loop Player が 2台、合計 3台。REDRUM の音がしっかりしているので 3台で十分安定感がある。欠点はミックスの際に REDRUM が1トラックになり、HH/KICK/SNARE など分解するにはパートごとの分解が必要というところ。左右は Break Beats 系の REX ファイル。画像は Reason 11 で開いているので、Dr.Rex が Dr.OctRex になってる。
- ベースは安定の SUBTRACTOR Synthesizer 。ローとミドルで 2系統を合わせてサウンドを作っている。ベースはイメージにあわせて個別に音を作りこんでいる感じ。中盤のモジュレーションシンセはミドル側が対応していて、Scream 4 で歪ましている。
- パッド系はこれも SUBTRACTOR Synthesizer の FAT Brass、ストリングスはサンプラーの NN-XT Sampler。NN-XT はサンプラーながらプリセットが秀逸。オールマイティに使える音源だね。
- SE的なエッセンスは、イントロ後のサイレンをグレインテーブルシンセサイザーの Malstrom Synthesizer。中盤からのシンセショットは SUBTRACTOR Synthesizer のベース音。
- Rhodes ピアノは NN-XT Sampler サンプラー。バッキングとソロで 2機、若干サウンドを変えている。途中のクラビネットも XX-NT Sampler のプリセット。クラビにはコンプが刺さっている。ホント、Reason はプリセットが優秀。足りなくて困ったことがない。
- 終盤のサイン波シンセは Malstrom Synthesizer 。昔からこのサイン波シンセでオブリガードを入れるのが好きだったんだなぁ。今やトレードマーク。
- オルガンは NN-XT Sampler を 2トラック使っているが、NI B4 Organに差し替えている(後述)。
- マスターエフェクトはコンプ、コーラス、ディレイ、リバーブを使っているようだ。
振り返ると Reason のシンセ系は実に優秀。Reason 2.5 の頃は Combinator もないのでシンプルそのもの。このシンプルな箱庭感覚が良かったんだけどなぁ。
楽曲構成
楽曲テンポは 124。基本パターンの提示、リズム隊の展開をイントロに、Rhodes パート、シンセのモジュレーションパート、オルガンソロで終わる、まぁ、自慢できない構成。特に Rhodes パートはメロディにすらなっておらず、「まぁ、DTM ですなぁ」という感じ。Rhodes パートは後にメロディを作って差し替える予定だったが、弾いていてしっくりきたので、フリーセッションみたいなもんだろう、とそのままにした。
ベーストラックとリズムトラックを組んだところで制作のモチベーションは山を越えている。Reason のプロジェクトファイル最終版では、オルガンとクラビネット以外はだいたい出来ている感じ。ただサウンドは最終版にはほど遠い。ミキサーにはオートメーションを書いた後があるが、制作途中から Reason からオーディオで吐き出したものを MOTU dp 4 に引き継いだ。理由はワイルドなオルガンを Reason で再現できなかったからだ。しかし、制作環境を MOTU dp4 に持っていったことで、物語は新展開を迎える。
Native Instruments B4 Organ
2005年当時に夢中になっていたのが、Native Instruments B4 Organ だ。従来のオルガン音源とは全く次元が異なる、ホンモノの B4 オルガンを再現した音源だった。それまでシンセサイザーのオルガンプリセットをディストーションで歪ませたりと頑張っていたが、キース・エマーソンが使う B4 オルガンのサウンドとは全くかけ離れたものだった。
しかしこの NI B4 Organ のサウンドはワイルドであり、ドロワーバーで多彩な音を創出可能であり、ロータリースピーカーも、かかりはじめはゆっくりでスピードを上げていき、オフにするとまたスピードが落ちるところなんぞ、ホンモノそのものであった。
NI B4 Organ を使うために、dp 4 に持っていき、ソロを弾き直し差し替えた。ちなみにソロは YAMAHA KX-88 という激重のピアノ鍵盤で弾いている。熱いプレイをしっかり受け止めてもらうにはピアノ鍵盤しかない。編集なしの一発録り。
オルガンの鍵盤ってシンセのプラスチック鍵盤とは全く違うんだよね。角が丸く厚みがあって。あれなら短いタッチや連打、グリッサンドなどオルガンらしいプレイが簡単に弾くことができる。鍵盤は人間と楽器をつなぐインターフェイスなんだから、もっと気を払って欲しいもんだよ。
ということで、楽曲は一応に仕上がったが、中間部のシンセモジュレーションパートがイマイチ。そこである人に相談したのだった。
Yamaki 氏のスタジオでミックスダウン
Apple Newton が縁で知り合った Ryuichiro Yamaki こと某ヤマキ氏(逆か)だ。どういう相談をしたのか覚えていないが、東京某所の彼の自宅スタジオに遊びにおいでよ、ということになった。ネット系で知り合った人の自宅に行くなんてそんなに、あぁ、結構あるか。まぁ、お呼ばれいただいたので、他のネット友人と一緒に自分の dp 4 プロジェクトを持って行ったんだと思う。
綺麗なプロのプライベートスタジオ(写真はあるんだけど、これはプライバシーそのものなので 自分の過去ブログから)ということで、「ドキドキがとまらねぇぜ!」という感じだったのだが、この訪問により、後の人生に影響を及ぼす、いくつかのことが起こった。
1つ目。プロの音楽制作のスピード感を知った。某ヤマキ氏の dp 4 の操作はとにかく速い。音楽再生!ガチャガチャガチャ、再生!ガチャ、再生!ガガガ、再生!というイメージで、トライ&エラーの回数が半端じゃない。「あぁ、DAW はこう使うものなのか」「こうやって音楽を作っていくもんなのか」と腹落ちしたのを覚えている。
2つ目。音楽を作る手間。忙しい中(息抜きだったんだろうけど)、ヤマキ氏は自分のプロジェクトファイルを実行していろいろ修正してもらった。ささっていたエフェクトを外してトラックをシンプルにし、各トラックを一回アナログで出力し外部の Channel Strip を経由して録り直してもらった。神は細部に宿るじゃないけど、あぁ、手間を惜しんだりしちゃだめなんだなぁ、と思った。
3つ目。カメラが趣味になった。一眼カメラ趣味は某ヤマキ氏の影響まんま。初代のデジタル一眼はヤマキ氏のお下がりだし。年末の Newton 忘年会で当時北海道在住の某鷲見さんに大きいレンズのデジタルカメラの楽しさをデモってもらったのだが、翌年にヤマキ氏にデジタル一眼を教わる。カメラが趣味になった。
中間部のモジュレーションシンセパート
まぁ、そんな貴重な体験もあり、Reason Groove は一皮剥ける。中間部のシンセのフィルターモジュレーション。dp 4 ではオーディオになっているので、Reason の丸丸のフィルターオートメーションに加えて、これもヤマキ氏に譲ってもらった AKAI PROFESSIONAL MFC42 と dp 4 の Phaser プラグインを使ったようだ。
いろんなストーリーを経てトラックは完成
終盤の Digital Performer の環境を再現できないので、なんともだが、各トラックを Channel Strip を通して暖かいサウンドにグレードアップし、オルガンを差し替え、モジュレーションシンセ部をアップデートし、楽曲は完成した。一人でコツコツ作り勝ちな DTM だが、この楽曲はヤマキ氏にみてもらったり、新しい楽器を投入したりと、最初の Reason 2.5 プロジェクトとは比較できない面白いものとなった。
後に Alliihoopa で自分の楽曲をリミックスしてもらったり、コメントもらって作り直したりすることになるんだけど、思うところ、自分一人で作るより、他のクリエーターと共作したり、アドバイスを取り入れたり、はたまたリミックスで全然違う楽曲にしてもらったりする方が断然に面白い。自分の限界を突破するにはいい方法だと思う。
まぁ、そんなことを覚えるきっかけになった初期の楽曲を紹介しました。
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