Appleスティーブ・ジョブズCEO、「音楽」を語る(ITmedia)という記事について。インターネットでの音楽配信についてのトークは何回も聞いているようなものですが、映画産業と音楽産業の違いについての考察は非常に的確です。ちょっと長いですが引用します。
映画について面白いのは、音楽とはずいぶん違う環境にあるというところです。われわれがiTunes Music Storeをオープンしたときは、音楽を聴くための方法は2種類しかありませんでした。ラジオで聴くか、CDを買いに行くかしかなかったのです。
映画を見るための方法が何種類あるか、考えてみてください。10ドル払って映画館で観る。20ドルでDVDを買うこともできる。Netflixサービスを使ってDVDを借り、家まで配達してもらうこともできる。レンタルビデオのBlockbusterに行って、DVDを借りることも。ペイ・パー・ビューで視聴することもできる。もう少し待てばケーブルテレビで放映されるかもしれない。さらに待てば、無料のテレビで観ることができるかもしれない。飛行機で上映されるかもしれない。映画を見るための方法は、実にたくさんあるのです。1、2ドルしか必要としない方法もあります。
それに、私はお気に入りの映画でも、一生に1000回観たくはない。せいぜい5回でしょう。でも、好きな曲ならば、一生で1000回聴きたいと思います。
だから、音楽と映画はまったく異なる生き物であり、映画産業は以前の音楽業界よりもはるかに成熟した流通戦略を持っているのです。まったく別の世界のものなのです。
僕が国内音楽産業について CCCD や高額で使いにくい音源配信などで不満に思うのは、まさにこの部分(下線)なのです。あんだけ儲かっていた90年代になんで、次の世代の流通戦略や販売戦略を構築できなかったのか。衰退していくモデルにしがみついて、平気な顔で問題のしわ寄せを顧客に転嫁してしまうのは「怠慢」以外の何ものでもありません。
Steve Jobs はウラオモテもあるしトークにはまやかしもあります(し、なにより Newton を抹殺した張本人です)が、音楽産業に関する考察は注目に値します。映画産業は「せいぜい5回しか見てもらえない」ものであるから、自ら優れた流通戦略を考えなければ生き残れなかったのです。それに比べ、音楽産業は顧客の生活に身近な存在で、巨大なマーケットをもち、かつ繰り返し聴いてもらえるメディアであるのに、非常にプリミティブな流通モデルしか持っていない。また、自ら改革することもできない。だから、新参者に参入されてしまうのです。
まぁ、そんなことを感じています。ちょっとマクロすぎるかな。
「レコード会社にとっては、CDを販売するよりも、われわれが1曲当たり99セントで販売したほうが儲かることがわかったのです。」の部分については、要は金を払えばいいんだろうということでしょうか(苦笑)。iTMS はキックバック率が非常に高いですからね。この論理でいうと、販売サイドはハイマージンなハードを片方で販売しないと成り立たないビジネスモデルだということです。国内の音楽産業には(ソニーだの、東芝だの、松下だの)かえって向いていると思いますが。iTMS が使いやすくユーザ受けがいいとは思いますが、販売事業社にとって、ビジネスモデルの手本にはならないと思います。
コメント
CD不況
どう考えたって日本の景気は回復してきているのに、CD不況は深刻極まりない。
某友人など、前アルバムをインディーズで15000枚も売った実績をもちながら
今回イニシャルが100だったという愚痴をこぼしていた。
確かにナップスター以降のファイル共有ソフトなどの普及や
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N@Blog「音楽不況を怠慢だと思う」より。映画産業の成熟された流通戦略、というAppleスティーブ・ジョブズCEOのITmediaでのニュース記事を軸に、N@Blogさんで音楽業界の現状を「怠慢」と …
news clip
欧州委、ソニーと独社の音楽事業統合を承認←wms: musicbiz editionさん
音楽業界全体も再編成の大きな動きが始まっているのですね。日本も「4メジャー」になるのか?
重DRMのiTunes Music Storeならオープンしないほうがマシ←OTO-NETAさん
音楽不況を怠慢だと思う�…
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「音楽」を語る、です。まぁもちろんiTMSがテーマのインタビューですけどね。とても興味深い記事です。
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