Minimoog Model D – Moog 本家から Model D のアプリが登場

PDA / iOS Device / Apple WatchRECORDING

Minimoog Model D

iOS の音楽アプリがますます充実しているが、Moog 本家から Minimoog Model D が登場した。iPad / iPhone で動作する Model D だ。Minimoog Model D は1969年に発表されたアナログシンセサイザーだ。

それまで巨大な箪笥のようだったモジュラー型シンセサイザーを、いくつかのシンプルに型決めした発音回路として構成し、ライブパフォーマンスでも使えるようにコンパクトなケースとキーボードをアレンジしたモデルだ。当時、多くのミュージシャンが使ったことから、いわゆる Moog サウンドというとこの Minimoog の音をさすことが多い。

昨年、BEHRINGER がユーロラックサイズの Model D のクローンを本家の約1/10の価格で発売し、爆発的に人気となっている。アナログシンセサイザーのオリジンが iOSアプリとして登場した。シンセファンならマストハブなアプリだ。

アナログシンセサイザーの「型」を作った Model D

さてこのミニモーグだが、実機を触ったことがある人だったら分かると思うが、そんなに「ミニ」ではない(ちなみに、Model D という名前はプロトタイプから数えて4番目のモデルだったことに由来する)。「巨大なモジュラーシンセから比べると超ミニなんだよ」ということで、なるほどなぁ、なんて思ったのだけど、アナログシンセサイザーの伝説機であり、現在も Moog から少量発売されている。なぜミニモーグは愛されるのか。

それはこのミニムーグの回路構成が多くのアナログシンセサイザーのアーキタイプ、基本になっているからである。

Minimoog Model D Minimoog Model D のパネル

この Model D の回路は、左から3VCO(これで厚いサウンドを実現し、またモノフォニックながら和音を発信できる)の波形選択とオクターブレンジをわかりやすくコントロールできるようになっており、中央に 3つのVCO と外部入力・ノイズのサウンドバランスを構成するミキサーがある。外部入力は内部結線することで出力をもう一度、VCFに送るようフィードバックし、より強烈なサウンドを作ることができるようになっている。

右側の音色を作り上げるモディファイアーは一番回すだろう CUTOFF や EMPHASIS(レゾナンス)をアクセスのよい一番上側に配置し、中段に VCFのエンベロープ、下段に音量をコントロールする VCA のエンベロープを配置する。

この回路の配置は基本形として他社メーカーにも多大な影響を与えた。現在でもアナログシンセサイザーをシミュレートしたソフトウェアの多くがこの回路と配置を手本にしている。

いわゆるアナログシンセサイザーの共通言語のようなもので、多くのユーザがすんなりと音作りに入れる「型」になっている。アナログシンセサイザーを学ぶならこのミニモーグの回路構成を徹底的に学べば、他のシンセもだいたい理解できる、というものだ。

Native Instruments MONARK のパネル Native Instruments MONARK のパネル

iOSアプリとなった Model D

iOSアプリの Minimoog Model D は 160ものプリセットは KEITH や KRAFT BASS のようにアーティスト名によるプリセット名で、かつ BASS、 KEYS、 LEAD、 PADS などの分かりやすいカテゴリごとに分類されているので初心者でも迷うことはないだろう。またプリセットは追加で購入できるのも今風だ。サウンドプリセットは後述のフェクトをかけているものなので、「ブファーーーンンン」「ビニョーーーン」ばかりで初心者が気が遠くなることもないだろう。

実機との違いは結構あって、まずモノフォニックだった実機と異なり 4音ポリフォニックだ。「少々甘やかしすぎじゃないですかね、先生」なんて思うのだが、お金を払って購入した一般の人に「単音しか出ません、そういうもんです、偉い人にはそれが分からんのです」というのは難しいのかもしれない。4音ポリということでパッドやブラスコードにも使える音源として重宝するだろう。

また ARP / BENDER / DELAY / LOOPER というエフェクトも付属する。Shimmer Reverb があれば最強だと思うのだが、アナログサウンドを一挙に使える音に変貌させるピンポンディレイがついているので、これだけで十分だ(リバーブは面白いが、リバーブの設定に凝ることになってアプリとしては本末転倒なんだろう)。

またシーケンサーでなくルーパーが付いているのも面白い。簡単なオーバーダブができるのと SHARE ボタンを押せば .wav ファイルで出力してくれる。iPad でシーケンスを作れば SHARE ボタン一発で AirDrop 経由で MacBook に送ることができる。実にシンプル。グレイト。もちろん、iCloud にも対応している。

FEATURES
• Ships with over 160 presets (Hundreds more available in the Minimoog Model D App Store)
• Up to 4-notes of polyphony
• Easily share presets and audio recordings with friends
• Arpeggiator module with note-hold capability
• Stereo ping-pong delay effect
• Bender time modulation effect
• Real-time looping recorder with overdub and immediate sharing
• Selectable envelope shapes and triggering behavior
• Effortless MIDI CC mapping
• Seamlessly backup presets to iCloud
• Play mode for easier panel and keyboard interaction
• A new take on the classic feedback/overload path

SUPPORTS
• All 64-bit iOS devices
• AUv3 Audio Unit Extensions (Including GarageBand)
• Note-per-channel MIDI controllers (MPE)
• Ableton Link
• Inter-App Audio and Audiobus
• 7 and 14-Bit MIDI
• MIDI Program Changes
• Bluetooth LE MIDI controllers
• Share over AirDrop, Mail or other iOS applications

この Model D 、iPad 専用かと思っていたら驚いたことに iPhone でも動作する。「おいおい、ノブを操作できるのか?あんな狭い画面で」と思うのだが、案の定、操作は辛い。一応、PLAY モードということでノブを大写しにするレイアウトがあるのだが、これがほとんど意味がない(ノブの大きさがそんなに変わらない)。

Minimoog Model D ノーマルモード Minimoog Model D ノーマルモード
Minimoog Model D プレイモード Minimoog Model D プレイモード

鳴らしながらノブを操作をするのなら iPhone だとキツい。できれば iPad 9.7インチ以上が欲しいところだ。iPad Pro の大きい方でプレイすればそれなりにゴージャス感があって面白いかもしれない。割り切って鳴らすだけの音源として使うなら iPhone でも iPad でもクオリティは同等だ。

使える音源で、持っておいて徳になる

本家 Minimoog Model D は持っておいて損はない。というより、シンセファンなら自分のラインナップに入れておくべきだ。Audio Unit にも対応しているし、Bluetoth MIDI にも対応しているので iPad を音源化する人にも最適だ。

サウンドも本家から出るだけあってモーグらしい。実機の再現性を追求などポリフォニックになっている時点でお角違いな感じがするが、低音もよく出ている。太すぎくらいに調整していると思う。

あと、ハードウェアシンセが「太く」て、ソフトウェアシンセが「細い」という議論は、昨今のシンセをみる限り全く当たらないと思う。太い・細いはシンセサイザーとしての個性であって、例えば KORG monologue の低音より、ソフトウェアの MONARK(モナーク)の低音の方が全然にズ太い。オシレーターやフィルターの構成も異なるから当然なんだけど。

一方で音の変化幅は音源がそれぞれ持っているもの。「アナログだから太い」ではなく、「どんな音が出るのか」「ノブやスイッチの感触は気持ちをアゲてくれるか」、などの観点で選ぶもんだなぁ、と思う今日この頃である。

あ、僕は BEHRINGER の Model D を買うと思います。MONARK が好きなので、Neutron より Model D に心が傾いています。やっぱりノブは実物をまわしてナンボです。

Minimoog Model D Synthesizer
カテゴリ: ミュージック
執筆時点の価格: 無料

ベリンガー アナログ・シンセサイザー MODEL D
Behringer(ベリンガー)
¥47,800(2024/11/24 09:57時点)
3系統のVCOを搭載したアナログ・シンセサイザー。深みと温かみに溢れた音作りを実現

コメント

タイトルとURLをコピーしました