Let’s take a field trip. – Apple と教育市場、iPad の展開戦略を転換

投稿日: カテゴリー: COMPUTER, PDA / iPhone / iPad / Apple Watch

2018 Apple Let's take a field trip

日、Apple が教育市場に関するイベント Let’s take a field trip. を開催した。久しぶりに面白いイベントだったと思う。新しく Apple Pencil に対応した iPad に加え、教育の現場で使えるアプリケーションの数々など、久しぶりに「想定外」の見どころがあったのではないだろうか。

教育市場に本腰を入れる Apple

事業戦略の基本として企業は自分達の製品やサービスが最も強みを活かせるドメイン(事業領域)を選択し、そこに集中する。Apple の場合はコンシューマがメインとなる事業領域だが、長く教育分野も得意とする市場だった。

が、歴史的にみるとそれは大学や研究現場、中・高等学校のコンピューター室を中心としたもので、今回の「初等教育でのタブレット利用」となると Apple が強い市場ではない。というより、この市場では Apple は完全にチャレンジャーだ

米国の学校で圧倒的に人気があるのはシンプルで管理が簡単でかつ大量導入がしやすい Chromebook だし、 K-12市場のタブレットデバイス導入の6割が Android デバイスであり、この傾向は加速している。

かつて、パソコンやデバイスを開発するメーカーの競争が熾烈だった時代、自社の対象市場に特化したモデルやソリューションを提供しようとする試みが多くみられたが、パソコン機器のコモディティ化が進行した現在では、シンプルに規模の経済を追う中国を中心としたメーカーと市場導入を担う SIer の組合せが一般的で、法人市場をターゲットとしているパソコンメーカーは HP くらい(IBM はソリューションベンダーでありパソコンメーカーではない)。メーカーが市場にがっつりコミットして「バーティカルなソリューションを実現しよう」なんて動きは非常にめずらしいものとなっている。

Apple は垂直型サービスが得意な会社だが、企業や学校に「きっちり」とパソコンやタブレットを納めるのはそう簡単なことではない。事前のセールス対応、ハードウェア、顧客が利用するソフトウェア、導入時のセットアップ、そしてメンテナンスとサポートと非常に手がかかる。

クラスルームとスクールワークアプリケーション
クラスルームとスクールワークアプリケーション

今回の Apple の教育ソリューションもさすがに導入・管理は既存ベンダーのソリューションとの組合せになるが、iPad というハードウェア層から教育現場のニーズに合わせたユーザ管理アプリケーション、教材からIT導入教育まで手広くカバーしている(教えるためのツール)。ここまで徹底したコミットをみせることで「教育市場に本気だ」「教育市場を第二のターゲットとして位置付けたのだ」と対外的にも印象付けたいのだと思う。

初等教育市場を攻略するというのは、メインとなるコンシューマ市場でのロイヤリティを向上させるにも非常に効果的だと思う。小学校で iPad に触れた生徒は中・高学校で自分用のスマートフォンに iPhone を選択するかもしれないし、大学生になれば Mac か iPad を選択してくれるかもしれない。

いずれにせよ、米国の公立学校のタブレット・パソコン導入は価格が安価な Google Android / Chromebook が最大シェアを誇る。単なるiPadの価格改定以上に教育市場に本腰を入れてきた Apple がどこまで食い込めるか見ものだ。

iPad のモデル展開の戦略を再構築した

新しい 9.7インチ iPad

今回、Apple は iPad に関する戦略を明確に修正したのだと思う。もともと iPad Pro と Apple Pen の組合せはクリエイティブ市場に向けたものであって、学校教育の現場で使えるものではない(1本1万円する Apple Pen を生徒数分導入できる学校がどれだけあるのか)。

iPad は教育市場攻略のデバイスと位置付けられ、教育現場でニーズが高いだろうペンデバイス対応、キーボード対応、本体の堅牢さ(子供が使うことを考えると iPad は非常に不安だ、子供達に人気があった Newton eMate300 を思い出してほしいものだ)を優先した。

もっと安くなると予想されていた価格については、Managed Apple ID のような管理ソリューションや基本アプリケーション込みの価格では十分戦えると判断したんだろうし、大量導入時にはトータルでの交渉の余地があるのかもしれない。

それでも、新しい iPad は「学校への大量導入」と「 iPad Pro を必要としない一般コンシューマ」という異なるニーズを1つにまとめてしまっている。今後、この2つは別モデルとなり、学校向けは安く、コンシューマ向けはそれなりに、という価格になっていくのかもしれない。

また、iPad Pro に関するアップデートはまだ届いていない。現行の iPad と iPad Pro を比べると価格落差ほどの機能差を感じ取ることができないが、iPad Pro も間もなくアップデートされるだろう。

2017年のケースでは、3月21日に「新しい 9.7インチ iPad」が発表された後、約2カ月後のWWDCが開催された 6月5日に 10.5インチ iPad Pro(と12.9インチ iPad Proのアップデート)が発表されている。この時は WWDC の目玉に iPad ユースを想定した iOS 11 があったからだが、一度に iPad をアップデートしなかったのは戦略を明確にするため、と考えれば iPad Pro も近くアップデートがあるのだと思う。

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