Moog Subharmonicon 探求 ー 第3回 4ステップ・シーケンサーで、長く展開のあるシーケンスを作る

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Moog Subharmonicon

Moog Subharmonicon を探求する本連載、前回に引き続き、シーケンサーにフォーカスをあてたい。Subharmonicon をいろいろ弄っているのだが、そこで気がついたパッチングのコツというか、自分のための備忘録的な意味合いも含めて。やはり情報は共有してこそ、価値が増大するのだから。

今回は Subharmonicon の 4ステップ・シーケンサーを使って、もっと長く、展開のあるシーケンスを作る方法を紹介する。

これは Moog が配布しているチュートリアル・ドキュメント Moog subharmonicon – Patching with Intention の冒頭に記載されている方法なので、マル秘テクニックでもなんでもない。モジュラー、セミ・モジュラーシンセでパッチがイマイチ苦手な人の参考になれば。

4ステップシーケンサーで展開のあるシーケンスを作る

Moog Subharmonicon
Subharmonicon が搭載するシーケンサーは 4ステップしかないが、パッチすることで、もっと長く展開のあるシーケンスを作ることが可能だ。今回の作例では、4ステップのアルペジオを 4段階に転調させ、さらにルートのベースパターンを切り替えることで展開のあるシーケンスを作る。

Subharmonicon には 4ステップシーケンサーが 2機搭載されている。16ステップシーケンサーを 1機搭載するのではなく、4ステップシーケンサーを 2機搭載しているところが突破口になる。モジュラーシンセサイザーが趣味の人には常識かもしれないが、たぶん、「あぁ、なるほどね」となるテクニックだ。どうやるかというと、

SEQ 2 を VCO 1 にパッチする。

以上。実に簡単!

過去に同様のことをやったことがあったので、Subharmonicon でもやってみたのだが、実際にやってみると「???」となった。Subharmonicon でシーケンスを作る上で注意すべき点もあるので、記事化した次第なのだ。

Subharmonicon でパッチする際の基本

アナログシンセサイザー、モジュラーシンセサイザーを弄る時は、初期化パッチから操作をはじめる、これが基本。

もちろん、「一々言われなくてもアナログシンセ・モジュラーシンセはそういうもんだ」とか、「いや、なにも考えずに自由にいじればいいんだ、モジュラーシンセサイザーなんだから」とか聞こえてきそうだけど、一応、基本としておさえておきたい。なぜか。Subharmonicon の動作が案外、意図した通りにならないからだ。

Subharmonicon のシーケンサーは ±5 レンジで設定できる。10オクターブ・レンジだ。また、メインオシレーターに連動するサブハーモニックオシレーターの音程推移はランダムみたいなもんだ(第1回 サブハーモニクスを理解する・整数で除算し発音するオシレーターを搭載したアナログ・シンセサイザー で解説したよね)。また QUANTIZE で 8 or 12 段階にピッチを段階的に設定できるが、自分が持っている Subharmonicon だと、電源を入れた直後は QUANTIZE がきちんと動作しない。そんな状態であの小さなツマミを動かして思った通りの音を出せるか。そりゃ無理ですよ、という話。

+3 のピッチを出したいのに、+5 がでている。これがツマミの位置なのか、パッチで +2 のゲタをはかしているからなのか。きちんと整理しないと、意図したシーケンスフレーズは作れんのです。はい。

ということで初期化パッチ。Moog が推奨している初期化状態は下記の通り。

Moog subharmonicon - Patching with Intention

Moog subharmonicon – Patching with Intention から

第1回で解説した通り、サブハーモニックオシレータは、右から左回りに操作するので右に振り切りが定位置。個人的には VCF EG AMT は 12時でフラットなはずだし、ミキサーも 12時がクリーントーンの定位置、なんて思うんだが、そこは自由裁量の範疇だ。

シーケンサーを設定する前に、各ツマミがきっちり 12時になっていることを音を出して確認する こと。これが何より重要だ。普通にやっても、これができないので、ちゃんと方法も教えておく。

Subharmonicon シーケンサーの初期化手順

  1. (できれば)チューナーをルーティングする
  2. QUANTIZE を 12-ET にセット
  3. SEQ ASSIGN をオフ(無点灯)に
  4. VCO FREQ を 12時(C)にチューニング
  5. SEQ OCT を ±5 にセット
  6. SEQ ASSIGN で OSC 1 をオンに
  7. SEQ を再生し、各ステップ(1-4)がすべて C がなるように 12時セット
  8. SEQ 1 / 2 の双方、この方法でセットする

手順 5 の SEQ OCT を ±5 にするところがポイントだ。これを ±1 あたりで設定すると、真に12時セットができていない状態になる(±1 では C が鳴っていても実はキッチリ 12時になってなくて、±5 にすると別の音が鳴る)。これが本当に落とし穴だ。

この初期化プロセスは癖にしてしまおう。

展開のあるシーケンスを作ってみよう

Moog-Subharmonicon-Seq

今回作るのはこんな感じ。VCO 1 で 4ステップのアルペジオを再生し、それが 4種類にトランスポーズされる。VCO 2 ではルートとなるベースを鳴らすが、SUB OSC を使って 2種類のベースパターンを演奏できるようにする計画だ。

旋律となるアルペジオを作る

まずは VCO 1 でアルペジオを作る。このアルペジオは後に、SEQ 2 のパッチで転調させる予定のものだ。VCO 2 はベース兼 VCO 1 転調を兼ねてもらうので、ここではあえて Cキーで入力する。RHYTHM 1 を SEQ 1 をアサイン。ツマミは右にふりきっておく。

Moog-Subharmonicon-Seq-01

SEQ 1 にこのように入力したら、VCO 1 で聴いてみて確認する。単音では寂しいので オクターブ下のユニゾン、5度下(f3)のアルペジオを鳴らしてみる。サブハーモニックオシレータでユニゾンの音、5度下の音がなるように SUB 1 / SUB 2 それぞれ設定する。

ベースパターンを入力する

ベースは SEQ 2 が担当する。ベースの音の動きは下記の通り入力する。

Moog-Subharmonicon-Seq-02

ベースは実音で入力する。入力が終わったら確認する。RHYTHM 2 を SEQ 2 をアサイン。ツマミは右にふりきっておく。サブハーモニックオシレータはユニゾンと単3度(f5)で設定する。

パッチする

Moog-Subharmonicon-Seq-03

パッチベイの SEQ 2 アウトを VCO 1 インにケーブルでパッチする。これで、SEQ 2 の電圧の動きで、VCO 1 が変調されるようになる(SEQ 2 ASSIGN はオフにしておくこと)。1小節ごとにアルペジオが転調するように、RHYTHM 2 のツマミを 12時に設定、RHYTHM 1 が4つ鳴ったら RHYTHM 2 が 1進むように設定する。

サウンドを確認する

最初のパッセージはこんな感じになる。単音のアルペジオと…

アルペジオを和音にしたものがこちら。

次のパッセージはこんな感じ。ベースルートを変えるには、SUB OSC 1 / 2 の音量を切り変える。

パッチの際に SEQ 2 ASSIGN をオフったが、例えばパッチを外して SEQ 2 ASSIGN で OSC 2 に割り当てると、インターステラーのようなコード進行にもなる。いろいろ試してみるとよろしです。

演奏する

これでアルペジオとベースパートが演奏できるはずだ。テンポを好みの設定にあわせよう。ベースパートは SUB OSC をミキサーの音量を切り替えることで、ベースの3度の並行を表現できる。フィルターをいじったり、VCF ATTACK を操作して、情感を演出する。DAW でエフェクトかけてもよし、自由に探索すればいいんです。

これは初回に転調を試したものでベースの動きが違うけど、いろいろ試して、いい感じのができたらアップしたく思います。

パッチのサンプル

モジュラーシンセサイザーはパラメーターのリコールができないので、パッチブックを作っていくつもり。良かったら参考にしてくださいな。

WAVEFORM LAB SUBHARMONICON Patch Book 01

パッチベイの TRIGGER – CUTOFF のパッチはクリック音を出すのに使ってます。

では今回はこんな感じでー。


moog モーグ/SUBHARMONICON セミモジュラー アナログ・シンセサイザー
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4つのサブ・オシレーターと2つの4ステップ・シーケンサーを実装。
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