連日紹介してきた NAMM の注目楽器もこれが最後。NAMM 2019 より少し前に発表されていた AKAI PROFESSIONAL のスタンドアローンの音楽制作 / DJパフォーマンス用デバイス AKAI FORCE です。光るパッドがたくさんある楽器は好きなんだけど、「さすがにこれは野心すぎないか」と思う衝撃の一品。
AKAI FORCE の全貌
今時、完全スタンドアローンの音楽制作環境というのは非常にチャレンジングだと思う。確かにライブ会場にコンピュータを持ち込む不安というのもあるし、AKAI MPC のようなスタンドアローンの制作環境を提供してきた AKAI の経験もあるんだろう。でも、サンプルデータの大半はコンピュータ経由で取り込むし、完成した音源をアップロード(時には納品)したりするのもコンピュータ経由な現代、カテゴリーとして成り立つのか、と多くの人が考えていると思う。
そんな現代にライブパフォーマンス、特に AKAI MPC が得意だった DJ パフォーマンスシーンに最適化した制作環境が AKAI FORCE 。最近のスタンドアローンラインナップ、AKAI MPC X や MPC Live の経験が活きているというより、かなりステップアップしている。
AKAI FORCEの主な特長
- スタンドアローン – コンピューター不要
- 8×8 RGB LED付きクリップ起動マトリクス
- 7インチフルカラーマルチタッチ・ディスプレイ
- マイク / インストゥルメント / ライン入力、出力×4
- MIDI In / Out / Thru
- 設定可能なCV/Gate出力×4
- オーディオ/ MIDI / CVシーケンスおよびパフォーマンスに対応する6種類のトラックタイプによるリミックス、マッシュアップ、DJ、プロデュース
- 16パッド・ドラム、ノート、スマート・スケール、コード&プログレッションを含むパフォーマンス・モード
- MPCサンプル編集
- 自動BPM検出、リアルタイムなタイムストレッチとピッチシフト
- グラフィカルなOLEDディスプレイ搭載タッチセンシティブノブ×8
- 4種類のパワフルかつ自由にエディットできるシンセエンジン
- 16GBのオンボードストレージ(10GB以上のサウンドをあらかじめ収録)
- フルサイズSDカードスロットおよびUSBメモリーやMIDIコントローラーを接続できるUSB 3.0スロット×2
- ユーザーによる拡張が可能な2.5インチSATAドライブコネクター(SSDおよびHDD)
64の LED パッド+8つのコントロールノブ、56もある機能ボタンを中心とした入力インターフェイスに、Ableton Live にインスパイアされた音楽制作アプリケーション、オーディオサンプルのほか、4種類のシンセエンジン、インターフェイスには MIDI やオーディオインターフェイスのほか、CV/Gate アウトも搭載している、DJパフォーマンスに必要な機能が「全部入り」の構成となっている。
プロダクトとしては、PLAY + PERFORM + PRODUCE という3つのシーンで紹介されているが、PLAY と PERFORM の定義がホームページでもちょっとあやふや。触って楽しい、演奏して楽しい、制作した楽しい、というところなんだと思うが。
AKAI FORCE の PLAY + PERFORM
音楽制作の前に、触って・演奏して、の方から。AKAI FORCE はクリップ・ステム・ループをベースとした DJ インフラに似た再生環境を搭載している。ありもののクリップをリアルタイムに再生、フェーダーでミックスするようなプレイスタイルだ。
7インチのメインディスプレイはタッチインターフェイスを兼ねており、パッド叩いて良し、メインディスプレイでタッチして良し、のプレイして楽しいプロダクトになっている。
AKAI FORCE の PRODUCE
音楽制作環境の説明。まず、オーディオやサンプルのインプットについては、AKAI MPC 譲りの AKAI FORCE 本体でのサンプリング、16GB のストレージにビルトインされている 10G のサンプルライブラリ、コンピュータ経由の取り込みが可能。
トラック構成は、オーディオトラックはループやステムをサポート、それにドラムキットによるグルーブ制作のためのドラムトラック、シンセなどのプラグイントラック、キーボード入力のためのキーグループトラック、外部楽器をコントロールする MIDI トラック、モジュラーシンセに特化した CV トラックで構成されている。
これらのトラックでコツコツ作っていくのだが、インターフェイスは Albeton Live を彷彿させるオーディオトラック、 Native Instruments MASCHINE を彷彿させるドラムトラックなど、UI も良さげな感じ。最近の DAW と比較しても遜色ないインターフェイスが用意されている。
考えてみれば、AKAI は最近、ソフトウェアの開発にも力を入れている。AKAI FORCE のアプリケーションは AKAI MPC Software 2..0 ともだいぶインターフェイスが異なるので、別物と思う。AKAI iMPC シリーズを開発している Retronyms や昨年提携を発表した Splice が協力しているんだろうか。
AKAI FORCE としては、特に Albeton Live との連携は重視しているらしく、今後のアップデートでも Ableton Live ユーザのパフォーマンス用環境として、より突っ込んだ連携機能を取り込んでいくと説明している。
AKAI FORCE は DJ / エレクトリックミュージックシーンの定番機材になるか
スタンドアローンでロバストなパフォーマンス環境として、DJ / エレクトリックミュージック領域では期待も高いと思う。デモ機もそろそろ店頭に並び始めているよう。
気になる価格は 168,000円(税込み・アマゾン)。うーん、高くもないが安くもない。仕様を考えればむしろリーズナブル。Albeton Push の価格を考えれば安いのかもしれない。
こういうチャレンジングなプロダクトはホント応援したい。既存の音楽制作環境とのバッティングもあるので、ありもののクリップをインポートするだけで安定して動いてくれる 8万円くらいのバージョンがあればもっと嬉しい感じもする。
一度、じっくり使ってみたいね!
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