My Track 紹介。昨年の GADGET SONIC 2022 で RED STAGE BEST OF SONIC を受賞した楽曲 U です。昨年の夏、コンテストに向けて作っていた楽曲があったんだけど、どうも納得がいかずにボツに。また、楽曲制作で片づけておかなければならない楽曲がいくつかあって、その中でもバンド演奏っぽいものをチョイスして制作に挑みました。
聴いてもらうと分かると思うんだけど、全くもって生バンド風の楽曲。 KORG Gadget で制作する楽曲はテクノやハウスが多いと思いきや、実際は多くの楽曲制作者がバンド風の楽曲にもチャレンジしてる。KORG Gadget のベーシックな楽器機材(ドラムやベース、ピアノなど)を再現する音源の質が高いおかげだ。この楽曲も「たぶん、出来るだろう」と思って制作に入った。
楽曲 – U
まず、この楽曲は大学生時代にバンドで演奏していたオリジナル楽曲。当時のバンドは、ギター・サックス・キーボード・ベース・ドラムの5人編成。ソロをとれる楽器が4人いるのでソロパートも4つある(ベースソロ、ギターソロ、サックスソロ、最後にピアノソロ)。KORG Gadget で再現が厳しいのがサックス。数回トライしたけど、こりゃムリだと判断し、サックスソロはシンセソロにアレンジした。
大まかな楽曲の構成はそのままに、細かなギミックやソロパートを新作としておこした。特にソロパートは作曲者の自分が「こう弾いて欲しい」というバージョンになっている。バンド演奏ではソロも倍の長さはとるので、完成した楽曲は 7分という長尺だが、実際の演奏よりは短いものとなった(10分以上の演奏は、まぁ、ジャズやフュージョン・クロスオーバーバンドのあるあるだ)。
大学生時代に演奏していたこの楽曲をなるべく「曲」として聴ける形に、という方針で制作。DTM による音源化は初なので、ルールブックの「新たに作った曲であること」の「作った」は作曲ではなく、制作を指すものと解釈した。世間様には初お披露目だ。
楽曲解説、今回は GADGET SONIC 2023 サポート ということで、しっかり書きます。前編(トラック構成・バッキング)・後編(メロディ・ソロ・エディット作業)で行こうと思います。では前編から!
プロジェクトの構成
プロジェクトのトラック数は 24トラック。KORG Gadget は iMac 3.7GHz 6 Core Intel i5 で動かしている。まぁ、これくらいのトラック数がストレスなく制作する限界なのかもしれない。
KORG Gadget はオートメーションが弱いし、エフェクトのオン・オフなどが大変なので、楽器によって複数のトラックで構成している。内訳はこんな感じだ。
- ドラム: 5パート
- ベース: 3パート(バッキング・ソロ・スラップ)
- ピアノ: 2パート(バッキング・フィル)
- エレクトリック・ピアノ: 1パート
- ソロ・ピアノ: 1パート
- ギター: 2パート(Zurich をメロ用とソロ用でひとつずつ)
- イントロ・シンセ: 1パート(イントロのストリング)
- ブリッジ・シンセ: 2パート
- メロ・シンセ: 1パート
- パッド・シンセ:4パート
- ソロ・シンセ: 2パート
ピアノ パート
通常はパターンごとに楽曲を作りこんでいくのだが(パターン単位でほぼ全ての楽器を組み上げる感じ)、本楽曲は構成の想定が出来上がっているので、ピアノパートを通しで弾いた後にパターンを分割して制作する方法をとった。クリックを聴きながらイントロからアウトロまで、ピアノのバッキングパートを弾いてガイドとした。仮縫い・仮組みのイメージだ。
この楽曲を支えているのはこのピアノパートだと思う。ピアノが曲構成パートごとのカラー・グルーブを規定・リードしている。しっかりバッキングし、時にはメロディも一緒に奏でる。両手バッキングとしても弾いていて楽しい。ライブ向きのアレンジだ。
途中にチョロっと出てくるピアノのソラレソラレはイメージ通りに作れなかった(笑)。ソラレが終わるタイミングで、ピアノバッキングのアタックを強めに弾けばよかったんだろう。こんなところで躓くとは。
音源は KORG Gadget 珠玉のピアノ音源、Salzburg。こいつはスタメン・モロ強打者だね。楽曲の中盤から雰囲気を変えるために Montreal のエレピを足している。
ドラム パート
今回の楽曲で一番楽しかったのがドラムパートの入力だ。生ドラム風の打ち込みは DTM をはじめて3年くらいで卒業しちゃったんだけど(当時の機材で生風のドラムを再現するとお金がかかった)、やってみて意外に楽しいもんだな、と思った。
音源は Gladstone を 4台、London を 1台使っている。生ドラムの再現は Gladstone なんだろうが、London の Lo-Fi なサウンドでキックとスネアを補強している。
作っていて面白かったのはハイハットやチャイナシンバルなどの鳴りモノの入力。ハイハットは友人のドラマー平山さんが叩いていた感じで作っている。彼のハットのグルーブが面白くてね。ハッとの強弱とキック・スネアのグルーブが違うんだよね。ハットにも歌心がある。
Ableton Live や Native Instruments MASCHINE だったらもっとしっかり作っていると思うけど、KORG Gadget ではこんな感じでいいのでは。シンバルものは楽しいよね。春に作った S-7080 ではシンバルのサンプルを 20枚くらい使ってる(イントロはだけでも聴いてみて)。生っぽいドラムの入力も面白いよな、とあらためて思った。
誰かの参考になることを書きたいんだが、そうだな、KORG Gadget の場合、各ドラムのボリュームバランスと DECAY はものすごく調整している。全パラメータを調整するけど、TUNE より DECAY 。
KORG Gadget の IFX(エフェクト)は掛けるとどんどん痩せちゃうので、ドラムには EQ をかける程度。ま、COMP がビルトインされた音源だからね。Gladstone の EQ はちょっと使いにくい。
ベース パート
続いてはベースパート。音源は Madrid 。通常のフレーズパートはいいんだけど、スラップパートは今聴いても酷いな(涙)。Madrid の 03 P-FINGER2 はホントにいい音がする(正確には音源なビルトインの AMP シミュレータがいい)。一方で、スラップはプリセットの癖を掴まないまま〆切が来てしまった(確か、最終日にエントリーしていると思う)。このスラップはやり直したい。
手弾きしたものをタイミングは MIDI で編集しているんだけど、確かにジャストではないね。Madrid のフィンガーベースは音を重ねるとスラーっぽくなります。画面が下過ぎて写ってないけどゴーストを入れてるね(ベロシティが低い2発)。アタックもノートの長さもこんな感じで作ってます。自分はベースも弾くので、納得いくまでエディットします。
ベースソロはサンクラのコメント欄で Sontaku Ouji さんが指摘している通り、Nathan East のオマージュです。
シンセ・ストリングス パート
これはトラックごとに聴いてもらわないと、分かんないよなぁ。配信で各パートを鳴らしながら解説した方がいいのかも。
まず分かりやすいところで、イントロのパッドサウンド。Darwin と Lisbon の2台構成(ローとハイの音色をレイヤーしている)。この Darwin & Lisbon が全編に渡って鳴っている感じ。イントロでは、それに、Milpitas のフィルターっぽいパッドが重なっている。
Darwin は KORG M1 のカートリッジ全部乗せみたいな夢のような音源なんだけど、これがね。あまり使わない(笑)。KORG M1 は実機を長く使っていて好きな楽器なんだけど、KORG Gadget ではシャリ感が強め。本物は PCM ながら、もうちょっと太くて乱暴な音がする(AUDIO I/O の特性)。今回はソフトなストリングスということで、I67 Softstring を使っている。Darwin はもっとデキるやつだと思っている。
Lisbon はご存じの通り、愛しいシンセだね。プリセットが少ない分、個性が分かりやすいというのかな、性に合ってます。ブリッジの Arp はこの Lisbon、57 Philly Arp (多少いじってると思うけど)。
最後にギターソロ後に現れるストリングスは Glasgow(なぜか Darwin ではない)。Glasgow の室内ストリングス編成のようなプリセット(CAMERA STRINGS)は派手でいい。
次回はメロディ、ソロパートをお届け
KORG Gadget は箱庭型の DAW なので、同じ設定にすれば同じ音が鳴るはず。そういう意味でも、トラックごとにプリセットや設定見せたり、音を聴かせられれば楽しいかもね。ワイガヤで。配信はやったことがないけど、需要はあるのかな。
次回は、メロディ、ソロパート、そしてエディット(おそらくは KORG Gadget の編集機能に対する不平不満)などをお届けします。締切直前で「転調してみたらどうだろう」なんてアイデアで沼にハマった話なども。
まだこの時点で執筆していないから、聞きたいことがあれば気軽にどうぞ!
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