Track 解説です。真夏の祭典 GADGET SONIC のために作った楽曲、Yugure – Twilight です。
Yugure – Twilight
この楽曲は最初に想定したものとだいぶ違ったものになってしまった。最初は Chill Out なもう少しテンポがゆったりとした起伏の少ない楽曲にする予定だった。しかし、KORG GADGET には Tape Comp などの色付け系エフェクトがなく、音源のサウンドがまっすぐ出力されるもんだから、気が付いたらシャカタクみたいな楽曲になってしまった(笑)。
仕方がないけど、まぁ、DAW によって得意・不得意な音楽ジャンルはあるからね。ピアノのサウンドが素晴らしいだけでも、KORG GADGET のふり幅は広いとは思うんだけど。
楽曲構成
楽曲としては Aメロ・Bメロ・Cメロの3つのパートと展開パートからなる予定だったが、時間の都合で Aメロ・Cメロの2つのパートと移調展開のみとなった。通常は作りたいものの大半が想定が出来てから DAW を触るんだけど、今回は〆切があったので、先に KORG GADGET を立上げてしまった。だからこういうことになる(反省)。
また、使いたい音色が思ったより KORG GADGET とマッチしなかった。もうちょと中音域の非シンセの音色があったら良かった。KORG の PCM 系の音色はドンシャリが多い。KORG M1 は愛用してたけど、あれはあくまで 80年代のトレンドだったから。音を鳴らすとその時代にぶっとぶ感じは嫌いじゃないけど。
トータルの制作時間は2日くらい。メロディを入力したら Quantize がオンになって弾きなおしたり、Undo したら直前の操作だけでなく、入力したものが全部消えてしまったり。Ingress でイベントが開始されて外出したり、竜とそばかすの姫を観に行ったり(これは関係ないか)。
トラック構成
トラック数は20トラック。リズム隊は Recife が 2台と REX プレーヤーの Stockholm が 4台、それと SE のみの再生に Bilbao が 1台。プリセットのサンプルを変更するくらいでオリジナルサウンドのインポートはなし。節約すればもう少し減らせるんだけど、ミックスがしやすいので 7台とちょっと多めになった。スネアだけで 7つくらい鳴ってる計算になる。
ベースは安定の Madrid。Madrid は音色もアンプもいい。隠れた名機。
Rhodes と Wurlitzer で Montreal 4台。コードが 2台に、ソロ用バッキングとソロで 2台。ピアノも同様の構成で Salzburg 2台という構成。
エレピの Montreal はエレピ系は網羅していて、使いやすいエフェクトも搭載している「使えるヤツ」なんだけど、もう少し Rhodes のサンプルを追加して欲しい感じ。Salzburg もいい。このピアノがなかったら KORG GADGET は使っていないと思う。
シンセはコード系は大好きな Lisbon が 2台、シンセメロ・ソロ用に必ずといっていいほど登場する BERLIN が 2台。BERLIN は ARP より使いやすい、個人的に。「ファーストアルバムはベルリンね」とは言ったもんだ。
女性のスキャットのために初めて使ったサンプラー Vancouver 。使いにくいね。あとストリングスに WAVESTATION の Milpitas 。本当に KORG GADGET の音源は覚えにくいね。
KORG GADGET の最大の魅力はそれぞれ個性ある音源。今回、もう少し使ってみたかったのは REX プレーヤー Stockholm。ACID JAZZ や BREAK BEATS 系で使えるサウンドが満載だった。MASCHINE + Stockholm で近々に何か作ろうと思っている。
楽曲制作のコツ(参考)
個人的な楽曲制作の流れとテクニックネタを少々。
制作はコードの入力からスタートすることが多い。なので今回は Rhodes のコード作成からはじめている。KORG GADGET は異なる音源でもパターンのコピペが簡単なので、どうしてもコピペ展開してしまいがち。例えば Rhodes のコードを修正すると、それを Lisbon や Salzburg にも展開する。安直だが便利に使っています。
キーボードのソロバッキングは左手でコードを弾くので、Rhodes とコードの押さえ方が違うなんてことも。たまにテンションがぶつかってる部分は個別に修正したりしている。
次にビートトラックを仮で作成。ベースを入れたあたりで本格的にリズム隊の音を作りこんでいきます。ベースは絶対に手弾き。機械的なフレーズが決まるテクノやハウスでなければ、手弾きの方が情報量が多いから絶対におススメ。「俺、キーボード弾けないよー」という人はテンポを若干さげて、部分ごとに入力しても全然いい。
メロディのピアノ、キーボードソロは、バッキングとメロディを一緒に録音した後で左手と右手をパート分けする。これはバッキングにディレイがかかるとうるさいし、別々に撮るとフィーリングが合わないから。今回は後でスィング値を控え目に修正したので、何回か撮り直しています。
MIDI 編集はまぁまぁやっています。使っているキーボードが Native Instruments KOMPLETE KONTROL の 61鍵モデルなので、重いピアノ鍵盤好きの自分ではタッチが軽すぎる。案の定、MIDI 128 あたりの値がガツンと入力されることがあるので MIDI エディットはベロシティを中心にやってます。また、ベロシティ域によって Salzburg はサウンドの変化が激しい ので、バッキングは一括で響きがいい位に調整してボリュームスライダーで音量を調整、なんてことも多くやっています。
MIDIやノートの編集は KORG GADGET だと本当に大変。もう少しなんとかならんかね、ホント。あと、Twitter にも書いたけど、KORG GADGET は Undo で取り消せるのは「直前の操作」ではない。どういう法則か、結構前の操作まで取り消されてしまう。録音したものが全部 Undo されたり、修正したものが一部残ってしまったり、結構苦労させられた。
今回の GADGET SONIC では KORG GADGET ダイレクトの出力オーディオが条件となった。これは、違う DAW でリミックスやマスタリングしたりすると、全然違う音楽に仕上げることが可能だし、GADGET を使う意味が曖昧になってしまうことから、このレギュレーションには賛成なんだけど、KORG GADGET はマスタリング系のエフェクトが少ないよね。
また、何度も言っているけど、マスタートラックにオートメーションがないから、フェードアウトは本当に大変。今回はマスタートラックでのフェードアウト、手動でやりましたよ。一応、KORG GADGET の出力にも自動フェードアウトの設定があるけど、あれは値の入力が直感的でないし、パートの途中を終りに指定できない。
トラックをガンガンフリーズして負荷をおさえて(負荷が高くなると、KORG GADGET は再生タイミングが転ぶ)、Audio Hijack でリアルタイム録音。最後のフェードアウトを失敗すると、また最初から録音しなおし。そして聴いてみてトラックバランスを修正したらまた録音。もう、やりたくないです(笑)。
ソングデータのダウンロード
プロジェクトデータは BOOTH – WAVEFORM LAB STORE で公開しています。ストアだけど、コラボレーション・リミックス用は無料でダウンロードできます。
GADGET SONIC について
今回も応募曲が多くて運営者は大変かと思います。GADGET SONIC は有志で運営しているので、ホント暖かい気持ちで応援したいですね。KORG GADGET はプロジェクトファイルを共有すれば、お互いのリミックスも可能。そんな箱庭な音楽環境でどこまで出来るのか、どういうものが出来るのか。こういうコンテストで競えあえるのはとても大切なことです。
また短期間で(自分の場合は募集がはじまってから作りはじめた)アウトプットを迫るのもいいと思います。「あの夏はこーゆーの作ってたなぁ」なんて思い返せるのは、音楽人生においても貴重なことだと思います。もうちょっと KORG GADGET の操作性がアップしてくれればいいんだけどね。
GadgetSonic 2021 – SONIC OF THE YEAR を受賞
GadgetSonic 2021 – グランプリ作品発表が発表されました。本曲は GadgetSonic 2021 – SONIC OF THE YEAR に選出いただきました。ありがとうございます。運営大変だったと思います。来年も楽しみにしています。頑張ってください!
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