12年続いた Apple のクラウドサービス、mobile me が終了した。Apple がクラウドサービスから撤退した訳ではなく、iCloud という新しいクラウドサービスに移行する、という前向きなサービス終了だ。
旧)mobile me は 2000年に iTools として登場した。 Mac ユーザがネットワークサービスを楽しめるサービスで、mac.com のメールサービス、iCard というグリーティングカードサービス、iDisk というストレージサービス、 Homepage を公開できるサービスで構成されていた。最初の iDisk のオンラインストレージ容量は 20MB ほどだったと記憶している。
mac.com のメールアドレスは今でも見かけるし、ネットワーク上に気軽にファイルを置いて複数の Mac で共有できる iDisk は革新的だった。
iTools は .mac というサービスになり有償化。なんかセキュリティソフトが付いてきたり、Mac を使う上でのプレミアサービスみたいな位置づけになった。 iLife で作った動画や画像のギャラリーのWeb公開用ツールといった意味合いが強かったと思う。
そして 2008年に Moible Me が登場。カレンダーやアドレスをクラウドで管理することは Mac の常識になった。 iPhone / Mac / Web のデータはシームレスに統合され、もはやデバイスのシンク(同期)なんて考えなくてよくなった。
有償サービスとしてはなかなか苦労したのか、サービスの品質もあって Apple の中でも評判はよくなかったという mobile me。僕はそんなに嫌いじゃない。というか、むしろこのサービスが大好きだった。
mobile me があるから、Mac が単なるパソコンではなく、生活のツールになった。古くは Newton MessagePad でスケジュールやアドレス帳、ノートを管理してた。とにかくよく使った。で、Palm 時代になると画面はなぜか小さくなり手書きを満足に受け入れなくなったが、パソコンとの同期はスムーズになった。そして、この「自分の生活情報の同期」を完全に解決したのが mobile me だったと思う。使っている人は少なかったが、「それこそが Mac の凄いところなのに」と思ったものだ。
そして時代は iCloud に。なんと無料になった。
iCloud のストレージはアプリケーションアクセスのみで、iDisk や Dropbox みたいなネットワークストレージでなない。また、iPhoto や iMovie の公開先は Flickr や YouTube になった。これらのサービスはパスワードをかけたギャラリーの共有などがワンパッケージ化されていない。
不便なところもあるが、Apple のことだろうから、そのうちなんとかなるだろう。
Apple、Google、Microsoft … みなデバイスからサービスまで自社でトータル的に提供するようになった。日本のメーカーはハードウェアだけを作って退化してしまった。電話なんてお客様からお金をもらって作っていたんだから、ひ弱くなるのも当然かもしれない。
「 iCloud 対抗サービスだ!」などと叫んだところで、Apple は着々と前世紀から取り組んできたのだ。先にあげた3社はみた自前でメールサービスやカレンダーサービスを提供しているし、それらはサーバからクライアントアプリケーションまで作っている。手本もなく、自社のサービスにどう統合すべきか、ユーザは情報をどう扱うのか、自問・自答してきた。構造を変えてはデータをふっとばし、厳しい局面にも立ってきた。年期が違う。
先人の投資力と時間的アドバンテージを鑑みると日本のパソコンメーカーが本格的な個人向けネットワークサービスを立ち上げる余裕が残っているのか分からない(日本のパソコンメーカーの多くは、会社としてのメインターゲットは法人だ)。アリとキリギリスでいうと日本人はアリという印象があったが、なんてことはない、ここ10年くらいはキリギリスだったんだな、なんて思う。
コメント