スティーブ・ジョブズ 無謀な男が真のリーダーになるまで

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スティーブ・ジョブズ 無謀な男が真のリーダーになるまで
10月5日は Steve Jobs の命日だった。だからではないが、久しぶりのアップル本を読んだ。アップル関連の本は片っ端から読んでいるが、それはアップルという会社とその経営、製品やデザインという点に興味があるのであって、スティーブ・ジョブズの本を片っ端から読んでる訳ではない。なので、死後に発売されたジョブズ本はあまり読んでなかった。

彼のプレゼンテーションスキルなら、2000年当時の Apple Computer が苦境にあった時代のプレゼンテーションを観る(当時はストリーミングで聴いたり、だ)のが一番だし、彼のカリスマ経営スタイルを学んだところで普通の会社で採用できることなんて殆どない。彼の没後に発刊されているスティーブがどうしたこうした、どういう人だった、ヤツに俺はこう教えた、なんて本に手が伸びないのは、どれもこれも「まあ、当たるところあれば外しているところありだな」なんて思うからだ。自分の中にある Steve Jobs 像と答え合わせをしたところで意味もない。なんかウンザリしてしまうのだ。

自分にとってスティーブ・ジョブズの出現は「俺の Newton を殺しやがった!」という体験だった。 iMac や iPod を開発してアップルを復活させる前の話。スピンアウトした Newton Team を Apple に再度吸収し、テクノロジーをライセンスすることなしに、関わったチームをバラバラにした。自分が当時最も熱を入れていたアクティビティに終止符をうったのだ。あのクソ野郎。

Mac を買って使い出した 90年代初頭、インターネットは存在せずシリコンバレーはやたらに遠い存在だった。スティーブ・ジョブズについても Apple Computer の創業者にひとりで、Apple を追われ NeXT を作ったことは知っていた。NeXT は異様な形状をしたマニアックなコンピューターで NeXTSTEP はオブジェクト指向のOS/開発環境であって、 WebObjects を含め金融業界で使われている、といった MacPower や日経MAC、WIRED といった雑誌の受売りだ。

当時、彼に関する書籍やインタビュー掲載資料は少なかったが、印象に残っているのが Randall Stross のスティーブ・ジョブズへの道(原題: Steve Jobs & The NeXT Big Thing )だ。取材中にこっぴどく酷い扱いを受けただろう著者が怨念とともに語り上げるスティーブ・ジョブズの人間像は単に傲慢でまわりの人や会社に不幸をまき散らすといったものだ。

ジョブズがアップルに凱旋した頃は情報はだだ漏れだったから、面談や会議で酷い目にあったとか、理不尽にクビになったとか、本当にそんな話ばっかりだった。Newton を亡きものにして、Apple を統率している Steve というのは、いったいどんなヤツなんだ、と興味が湧いた。

実際、当時の Macworld のプレゼンテーションはロックショーのごとく面白い(Apple という会社自体がローラーコースターみたいだったのだが)。アップルでは(特に製品面では)マイクロマネージメントの権化でありながらピクサーでは全く反対に振舞い、短気で横暴ながら淡々とした企業再生も行う、世界を変える製品を連発しながらも PowerMac Cube や音楽より映像編集に注力したり失敗もする。

そんな数々の逸話や情報、Apple の動向、手元に届けられる数々の新製品をみながらスティーブ・ジョブズ像を、激しい偏差を記憶にプロットしていく。1997年からの Apple を知っているファンはみなそうやってきたんだと思う。

ごく近い友人や関係者の数々の証言により構成された、あのスティーブ・ジョブズになるまでの彼の姿を描いた本

で、この本「スティーブ・ジョブズ 無謀な男が真のリーダーになるまで」である。

ジョブズがアップルから追放され NeXT を設立た第二の起業時代、ピクサーと出会いとうまくいかない両社の経営、ディズニーとの交渉、アップルへの帰還(とその時に起こったぐちゃぐちゃしたこと)にフォーカスがあたっており、「変人」が誰にでも尊敬されるビジネスリーダー、イノベーターになるまでを描いている。

本書は、フォーチュン誌記者としてジョブズと25年以上にわたる親交を持つ著者が、折々に取材したテープ(30本以上)を再構成し、さらに公認伝記には協力しなかった人物にもアクセスして書き下ろした話題作。すでに世界20カ国以上で翻訳されている。

序 章 
第1章 ガーデン・オブ・アラーのスティーブ・ジョブズ
第2章 「ビジネスマンにはなりたくない」
第3章 突破と崩壊
第4章 次なるNeXT
第5章 もうひとつの賭け
第6章 ビル・ゲイツの来訪
第7章 運
第8章 まぬけ、ろくでなし、一国一城の主
第9章 ちょっとおかしい人たちなのかもしれない
第10章 勘を頼りに歩む
第11章 最善を尽くす
第12章 ふたつの決断
第13章 スタンフォード大学
第14章 ピクサー安住の地
第15章 十全なウィジェット
第16章 死角、怨念、肘鉄
第17章 「僕はくそ野郎だからと言ってやれ」

この本には、これまでの「ジョブズ本」であまりコメントや発言をしてこなかったアップルの経営陣、業界関係者や友人達の発言が多く登場し、それがベースとなって各パートが構成されている点が興味深い。

一時期話題になった、ティムクックが自分の肝臓を提供しようとした話も本人の証言とともに出てくる。特にビル・ゲイツは彼が個人的にどうスティーブに関わってきたか、表舞台だけでは分からない交流が描かれている(僕はビル・ゲイツが少し好きになったよ)。ジョン・ラセターなど、アップルだけではなくピクサーの経営陣の証言も興味深い。

彼と一緒に仕事をした、時代を生きた友人達が彼を自分の中にどうプロットしていたのか。そんな点と点を結ぶような話の本だ。アップルやピクサーの歴史(NeXTも)を辿るにもいい本だと思う。気になる人はぜひ読んでみるといいと思う。おすすめしておきます。

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