前回のエントリー、軽度な難聴になって音楽制作が難しくなった件 – 音楽制作を楽しむ人に知ってもらいたいこと で左耳に軽い難聴を抱えることになった経緯と、早期の治療が何より大切、という話をした。今回は AirPods Pro 2 を使った簡易的な対処について書く。前回のエントリーを読んでない人はぜひ一読を。今回は補聴器を付けるほどではないものの、難聴を抱える人に向けたものとなる。
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AirPods Pro 2 の CM
左耳に軽い難聴を抱えることになり、サウンドのステレオ感を喪失したり、音を直観的に捉えにくくなった昨年末、テレビで Apple AirPods Pro 2 – 心に響く音 というコマーシャルが流れていた。
多くの人にとって、音や聞こえ方は周囲の世界との関係性を形づくります。しかし何百万人もの人が聴覚に問題を抱えていることに気づかず、必要なサポートを受けずに暮らしているのです。
AirPods Pro 2は、聴覚の健康をサポートする世界初のオールインワン体験を届けます。わずか数分で科学的に実証されたヒアリングチェックを受け、臨床グレードのヒアリング補助機能を使うことができます ー すべて自宅から。
印象的な CM なので覚えている人も多いだろう。AirPods Pro の「ヒアリング補助機能」を紹介する CM だ。自分は AirPods Pro を使っているが、このヒアリング補助機能を使えるのは新モデルの AirPods Pro 2 のみだ。AirPods Pro 1 に不便は感じていなかったが、この機能を使うために新モデルを購入してみた。
AirPods Pro 2 ヒアリング補助プログラム
AirPods Pro 2 ヒアリング補助プログラム は、軽度から中程度の難聴が認められる人に向けた臨床グレードのヒアリング補助機能だ。AirPod Pro 2 と最新のソフトウェアを搭載した iPhone が必要だ。
ヒアリング補助プログラムは、ユーザがデバイス上で行ったヒアリングチェックの結果や、聴覚専門医によるオージオグラムの結果に基づき、一人ひとりの聞こえ方に合わせて、AirPodsの音をカスタマイズします。ヒアリング補助プログラムは、軽度から中程度の難聴が認められる18歳以上の方を対象としています。
波形研究所の読者ならば説明する必要はないと思うが、難聴の聴こえ方を普通の聴こえ方になるようにリアルタイムでゲインや周波数を修正してくれる機能だ。
病院や人間ドックで行う聴力検査と同様のテストを iPhone + AirPods Pro 2 で行う。適切なイヤーチップ装着を行った上で、ヒアリングチェックを行うのだが、相当に静かな場所でやった方がいいと思う。左右の耳で聴力テストを行えば、テストは完了だ。テストは数分程度かかる。いわゆる聴力検査と同等だ。詳しくは チェックを受けるを参照して欲しい。
ちなみに、iPhone + AirPods Pro 2 のテストではなく、聴覚専門医によるオージオグラムの結果を使うこともできる。聴力検査結果のグラフシートをカメラで読み込めばいいらしい。試してないけど、書類がある人はチャレンジしてみて欲しい。
聴力検査の結果は iPhone のヘルスケアで管理される。ちゃんと履歴も表示されるので、個人的にはここもポイントだと思う。
使い心地、まだ難聴になってない人にも
個人的には補聴器を使ったことがないので本格的な補聴器との比較は分からないが、ネットでの書き込みを読む限り、かなりの好感触、とくに費用対効果では驚異的らしい。難聴で補聴器を付けている同僚の話では、補聴器は非常に高価で(平均的な購入価格は15万円ほど)、かつメンテナンス費用もかなり高額だそうだ。それに比較すると、AirPods Pro 2 の 39,800円というのはまさに驚異的、ということになるのだろう。この価格で音場補正のカスタム処理エンジンを搭載している補聴器なんてないだろうからね。
実際、ヒアリング補助をオンにすると左右の聴こえ方は、非常にノーマルな感じになる。前述エントリーの通り、聴こえ方は脳がかなり補正をかけてしまうので、AirPods Pro 2 を装着した瞬間には「あれ?」という違和感はあるものの、聴こえ方はバランスよく自然な感じになる。聴力補助をしばらく使って、オフにすると悲惨な聴こえ方になってしまうので、効果は絶大なんだと思う。あの CM はダテではない。
ヒアリング補助をオンにすれば健常者と同等に完全にノーマルになる、といえばそうでもない。例えば、キーボードを打つカチャカチャという音は増幅されて大きい音になってしまい。煩い感じになる(MacBook Pro のキーボードは打鍵が静かでいいのだが、会社の Windows ノートはカチャカチャうるさい)。自分と距離が近い音はマイクが拾いすぎる感じがする。低音は削れる方向で音が薄い感じがする。
聴力補助には微調整のための様々なオプションがある。ノイズのカット幅もコントロールできるので、「あー聴き取りにくい!」というシーンには、機械学習により構築されたノイズリダクション機能により人間の力を超えた聴力を手にいれることができる(笑)。自分は不便は感じないが、会話が聴き取りずらいレベルの人なら「会話を強調」オプションも助けになるだろう。聴力補助はコントロールセンターにもショートカットがあり、iPhoneがあればすぐに調整が可能だ(Mac や AppleWatch からも調整できる)。
このヒアリング補助は、音楽やメディア再生、通話時にも適用される。なので、音楽を聴いた時は音の広がりに「おおっ!」と感動する。推奨されない使い方だが、自分の場合、左が難聴なので、右側の AirPods Pro を外してもあまり違和感がなく、左だけ付けている時が多い感じだ。
軽度の難聴を抱えている人はぜひ、この AirPods Pro 2 を試して欲しい。特に通話が聴き取りにくいレベルの人にはオススメだ。
さて、このヒアリング補助機能、ライブハウスなどの爆音から耳を守る機能もある。AirPods Pro は音の増幅だけでなく抑制もできるのだ。「外部音取り込み」モードを使えば爆音から耳を守ることができる。聴こえ方は変わっちゃうから満足度は落ちちゃうかもしれないが、日常的に爆音のそばで過ごすことが多い人は侮らず予防しよう(プロの間では常識らしいよ)。
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