Thomas Dolby – Budapest by Blimp の美しいイントロコード

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Thomas Dolby
になった楽曲をちょっと採譜してみるコーナー。コーナーってほどのものじゃないんだけど。今回はトーマス・ドルビー(Thomas Dolby)の 1988年のアルバム、Aliens Ate My Buick から Budapest by Blimp をとりあげます。

トーマス・ドルビー(Thomas Dolby)

Thomas Dolby

自分がシンセサイザーを好きになったのは YMO や Emerson Lake & Palmer の存在もあるけど、一番影響を受けたのは トーマス・ドルビー(Thomas Dolby) だ。シンセサイザーやシーケンスビートを前面に持ってきた UKシンセ・ポップの先駆者であり、PV(最近では MV っていうの?)では、マッドサイエンティストや思想活動家に扮し、ラジオや発電機などのエレクトロニックな実験器具をフィーチャーした世界観は最高にイカしてた。

アナログシンセサイザーからデジタルシンセサイザー、ヴォコーダー、グルーブボックスからシモンズドラム・トリガーパッドにサンプラーと、シンセサイザー・テクノロジーの祭典、最先端のガジェットをガンガンに使いまくり、斬新な音楽を作り上げてきた。

1985年グラミー賞ではスティーヴィー・ワンダー、ハービー・ハンコック、ハワード・ジョーンズとともにエレクトロニック・ミュージックのデモンストレーションを行い、坂本龍一とは FIELD WORK を共作したり、とにかく話題に事欠かないアーティストだった。

しかし、彼の興味はコンピューターテクノロジーにシフト、1993年に Headspace(後の Beatnik)を起業してから音楽業界をしばらく遠ざかってしまった。天才は本当に予測不能なのだ。

Budapest by Blimp

前置きが長くなったが、今回とりあげるのは、アルバム Aliens Ate My Buick(エイリアンが僕のビューイックを食べちゃった、全く意味が分からないよね)に収録されている Budapest by Blimp

この曲、とても美しいコードで静かに始まる。同じパターンのベース・ハイハットがリピートしながらテーマとなるモチーフを作る。バラードのような甘いボーカルでメロディがはじまるが、コードアルペジオからサンプリングのフレーズの後、ガツンとギターコードがクサビを打ち込む。そして中間部からはほとんどフュージョンのようなセッションプレイが繰り広げられる。最後は群衆の歌声とともに楽曲が終わっていく。

エレクトロニックミュージックの天才である Thomas Dolby だが、実際には彼はジャズ音楽への造詣も深く、 Bill Evans のロマンティックなコードボイシングが大好きだとインタビューでも話している。基本となるシンセサイザーのコード。「なんとなく儚いなぁ」なんて思っていたんだけど、ピアノで弾いてみると全く弾けない。「あれ、これ、凄く難しいことやってないか?」

Budapest by Blimp、たぶんこう弾いてる

ということで採譜してみました。テーマのフレーズは倍あるけど、まるまる載せるとあまりよろしくないと思うので前半部分を。最後の左手のパートは音域的には右手で弾きます。これは彼がライブで使うフレーズ。アルバムの楽曲にはない音運びです。

2番目のコードがわかってしまえばジャズのコードを弾いたことがある人なら展開も大分楽に採れるはず。コード進行をみても分かるけど、完全に本人が好きな手癖のボイシングから作っているよね。これは単純なコード展開を学術的に分解したのではなく、1つ1つの和音の響きが美しいコードをつなげて作った、という感じだ。

興味がある人はピアノで弾いたり、打ち込んだりしてみてください。びっくりするほど美しいから。夜中に弾くと泣けちゃうと思います。

もし聴いたことがないなら、デビューアルバムから聴いてみて。YouTube でビデオをチェックするのもいいよ!


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波形研究所 所長

WAVEFORM LAB(ウェーブフォーム・ラボ) は音楽制作、デジタルライフ、イノベーションをテーマとするサイトです。

1997年、伝説の PDA、Apple Newton にフォーカスした Newton@-AtMark- を開設、Newton や Steve Jobs が復帰した激動期の Apple Computer のニュースを伝えるサイトとして 200万アクセスを達成。2001年からサイトをブログ化、2019年よりサイト名を WAVEFORM LAB に改称、気になるネタ&ちょっとつっこんだ解説をモットーにサイトを提供しています。

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コメント

  1. けんご より:

    このイントロ、ヴォイシングといい音色といい、プリファブ・スプラウトの Desire As にクリソツです。
    プロデュースはもちろんトーマス・ドルビー本人!
    明らかに狙った競作のようなもの…だったのでしょうかねえ。

    • 波形研究所 所長 波形研究所 所長 より:

      けんごさん、こんにちは。

      Prefab Sprout、実際に聴いたことなかったです。

      Desire As 、そっくりですね。笑っちゃいました。
      しかもこっちは 1985年、こっちの方が先に世に出てる(笑)。

      好きなコードなんでしょうね。

      Prefab Sprout、じっくり聴いてみます!
      ありがとうございます。

  2. Todd より:

    Newton@atmarkさん、いつも興味深いニュースをありがとうございます。
    TDのこのアルバム、裏ジャケが面白いんですよね。トーマスったら。

    • 波形研究所 所長 波形研究所 所長 より:

      あ、ご無沙汰してます。 N@ と呼ばれるのも懐かしい。

      裏ジャケ、駐車場で唖然としてるやつですよね(笑)。
      MV もどれも面白くて。Airwaves や Dissidents とか好きです。

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