Roland Synthesizer SH-4d – コンパクトな筐体ながら完全無欠・マッシブなデスクトップシンセサイザー

RECORDING

Roland SH-4d

Roland が非常に面白いガジェット SYNTHESIZER SH-4d を発表した。Desktop Synthesizer と銘打ちながら、ドラムキットやシーケンサーも搭載した事実上のグルーブボックスだ。

グルーブボックスといえば、Roland には高機能な MC-707 や MC-101 といった協力なプロダクトラインがある。しかし、SH-4d のプロダクト仕様をみていくと、SH-4d でローランドが目指したのは「これが現代のシンセサイザーなんですよ」というところなんだと思う。「SH シリーズの再来(逆襲)」なんだろう。デザインもロゴも AIRA 風ではなく、クラシックな SH シリーズのシンセサイザーを感じさせるし、ノブやスライダーの配置はこれがリアルタイムコントローラブルなシンセサイザーなんだ、ということを物語っている。

Roland SYNTHESIZER SH-4d

Roland SH-32
SH はローランドの歴史の中で常にシンセサイザーの称号であった。SH-1000 からはじまり、SH-2 などの SH-0x 世代、大ヒットした SH-101 、リイシューの SH-x01 世代など、多くのシンセサイザーをリリースしている。煌びやかな JUNO や JUPITER、JD/JW や AIRA SYSTEM シリーズと比較すると「無骨なシンセサイザー」というイメージが強い。鍵盤を搭載したいわゆるシンセサイザー・キーボードだけでなく、SH-32 のようなデスクトップ型のシンセサイザーも存在している。というより、SH-32 のリメイクだろ、と思った。

SH-4d の名前の由来はよく分からないが(4 OSC + Drum Kit か?)、デザインの源流は SH-32 にあるのは間違いない。SH-32 は ARP のような小型スライダーを採用していたが、インパネでの実装面積からも有利なダイヤルノブ型にしたことで、シンセサイザー部のコントローラーは 26個とむしろ増大している。

スペックをみていこう。

Roland SH-4d front
Roland SH-4d Rear

仕様

  • 高品位なサウンド・デザイン・ツールや直感的なハンズオン・ワークフロー、パターンシーケンサーを備えたコンパクトなデスクトップ・シンセサイザー
  • 11種類のオシレーター・モデルは、ビンテージ・アナログやクラシックなPCMトーンから最先端のデジタル・テクスチャまで、あらゆるサウンドをカバー
  • オシレーター・モデルには、新規開発のSH-4dネイティブエンジンをはじめ、WAVETABLE 、CROSS FM、JUNO-106、SH-101などを搭載
  • 4系統の独立したシンセパートと専用のリズムパートによる、最大60ボイスのポリフォニーを実現*
  • 波形の選択や強力なシンセシス・コントロール、レイヤー機能などを備えたリズムパートは、パートごとに個別のサウンドデザインが可能
  • 32個のノブと4本のスライダー、および多数のボタンを備えたフル装備のアクセスパネルから直感的な操作が可能
  • 高度なインターフェース・ワークフローにより、モデルの音作りからパターンでのパフォーマンスまでシームレスな切り替えを実現
  • フィルター、アンプ、およびLFOに専用のセクションを備え、包括的なコントロールが可能
  • モジュレーション・マトリックス機能により、複数のパラメーターを同時にモジュレート可能
  • 2オクターブ以上のキーボードボタンを搭載し、本機のみで楽曲制作を完結
  • 128パターンのメモリーが可能なステップ・シーケンサー、リアルタイム・レコーディング、モーション・レコーディングなど多彩な機能を搭載
  • ノートごとにプロバビリティとサブステップの設定が可能なパターン・シーケンス
  • SH-4dを物理的に動かすことでパフォーマンス効果を生み出す、ユニークなD-Motionとビジュアル・アルペジオ機能
  • 各トーンのMFXに加え、グローバルMFX、リバーブ、コーラス、ディレイなどの強力なエフェクトにより自在なサウンドメイクを実現
  • USB-CによるAUDIO / MIDIインターフェース機能に加え、5ピンMIDI I/Oを装備
  • 他のモジュラーシンセやRoland機材と同期するためのクロック入力に対応
  • STEREO AUDIO OUTと別にPHONE OUTを装備
  • AIRA CompactやRoland Boutiqueシリーズなど、外部機器とミックス可能な3.5mmSTEREO MIX IN端子を装備
  • USB-Cバス電源供給、または市販の単三型ニッケル水素電池、アルカリ電池(4本)での駆動にも対応
  • *最大同時発音数はオシレーター・モデルの音色設定や音源負荷によって異なります。

Roland Synthesizer SH-4d は 4つのオシレーター、1つのドラムパートを持つシンセサイザーだ。オシレーターは 11種類のオシレーターモデルを搭載したデジタルオシレータ。おそらく ZEN CORE ベースの音源だ。デジタルながらローランド特有の SUPER SAW などのアナログ波形から、ピアノなどの PCM 波形までバラエティに富んでいる。なんならドローイングで波形を書き込むことさえできる。ノブコントロールによる邪悪なアナログモデリングから、キレのある FM デジタルシンセ、リアルな PCM から WAVETABLE シンセまでこれ 1台で賄うことができる。ゴージャスだ。

そしてコントローラーは 4つのスライダーと 32個のノブを搭載している。前述通り波形コントロール部に26のノブと4つのスライダーを当てており、それ以外にトラック(パート)のミュートなどのミックス、エフェクト、なんと 2オクターブのキーボードも搭載しており、まさにプレイアブルなシンセサイザーとなっている。

また本体には D-Motion 搭載で、傾きセンサーを使って本体を傾けることで XY パラメーターコントロールもできる。

そしてシーケンサーも搭載しており、ドラムトラックと4つのパートでパターンシーケンスが可能だ。USB 接続でマルチチャンネルでオーディオをやりとりすることもできる。ノブやスライダーの動きも CC で吐き出せるので、DAW と組み合わせればライブパフォーマンスのトータルリコールも可能だ。そしてこれが単三電池で最大4時間も動いてくれるのだ。

マジかよ!

これはマッシブなシンセだ

Roland SH-4d

正直、店頭販売価格 77,000円というのは「もう少し安くならんか」と思うが、4つの何でもアリのオシレーター、4パート+ドラムトラックというシンプルな構成ながら最大で 60音ポリという広大なカンバス、そしてたくさんのノブやスライダーが可能にしたプレアビリティは大したもので、「 10万円を切るシンセサイザーのレベルをまた底上げしたんだな」と思う。

4つ打ちのベーシックトラック、1チャンネルをベースに当てがったとしても、まだ3パート残っている。白モノを分厚く流しながらアナログのシーケンスパターンを2種類鳴らすことができる。それらをミックスでオンオフしながら、ノブでフィルターを開いたり閉じたりできるのだ。シンセサイザーミュージックをやる上で文句なしだ。Lo-Fi やチルな楽曲も再現できるんだろうが、「もうシンセサイザー全開」な仕様も男らしくて惚れる。

Roland SH-4d

細かいが個人的には、物理モデリングを採用したアルペジエーターもイカしていると思う。

もう今すぐにも欲しい。けど、ちょっと楽器が増えすぎているのと、ピアノのサンプルを多用したプロジェクトを進めているのでグッと我慢している。あー、でも買っちゃうかもしれない(笑)。ちなみにもうアマゾンは品切れです。

シンセサイザー好きの紳士淑女にオススメしたい、マッシブなデスクトップシンセサイザーだ。

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●ユーザー・メモリーサウンド・パッチ:256
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波形研究所 所長

WAVEFORM LAB(ウェーブフォーム・ラボ) は音楽制作、デジタルライフ、イノベーションをテーマとするサイトです。

1997年、伝説の PDA、Apple Newton にフォーカスした Newton@-AtMark- を開設、Newton や Steve Jobs が復帰した激動期の Apple Computer のニュースを伝えるサイトとして 200万アクセスを達成。2001年からサイトをブログ化、2019年よりサイト名を WAVEFORM LAB に改称、気になるネタ&ちょっとつっこんだ解説をモットーにサイトを提供しています。

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