Roland が、もはや伝説的なコンパクト・サンプラーの SP-404sx のアップデート版、Roland SP-404 Mk2 を発表した。ディスプレイが強化され、サンプルプレイ用パッドも 12個から 16個へと増加しベロシティにも対応した。Roland が提唱する 究極のサンプラー とはどのようなものなのか解説する。
Roland SP-404
WAVEFORM LAB を読んでいる人にはもはや説明不要だと思うが、Roland SP-404 シリーズは、ポン出しに便利な小型サンプラーとしての枠を超えて、トラックメイクツール、リアルタイムミックスツールとして大人気のモデルだ。
SPシリーズは、もともとは小型で使いまわしの良いオーディオサンプルプレーヤーとして登場、BOSS ブランドで販売していた。もう 20年以上前のことだ。扱いやすく動作が安定している小型サンプラーの SPシリーズは、ラジオやテレビ局、劇場やライブでの効果音のポン出しツールとして人気が出た。
SDカードを搭載したコンパクトサンプラーの完成形、スーパーロングセラー製品の SP-404SX が登場したのは 2009年のことだ。発売から10年を経てなお、高い支持を得ている。サンプラー、エフェクター、パターンシーケンサーをバランスよくコンパクトにまとめられているのが特長だが、特にヒップホップ・アーティスが着目したのは、可搬性の高いコンパクトな筐体と、自由にサウンドメイク・ミックスが可能な個性豊かなエフェクターだった。
SP-404SX に搭載されているエフェクターはディレイやリバーブなどの一般的なものに加え、楽曲にリミックスに使える DJFX LOOPER や TAPE ECHO、LO-FI、VINYL SIM、FILTER、OVERDRIVE、SUBSONIC など非常に多彩だ。これらエフェクターのパラメータを 3つのノブで操作することで、リアルタイムにミックスプレイが可能だ。オーディオインにターンテーブルを接続して、外部の楽曲にエフェクト効果を適用する「エフェクター」的にも使うことができる。
SP-404SX は、各パッドにベースとなる楽曲を配置し DJ のように各曲をエフェクト処理しながらロングプレイをしたり、積極的にサウンドを加工したミックスプレイ、ドラムキットやコード・チョップした音源をリアルタイムでパッド演奏するスタイルなど、様々な音楽スタイルを実現してきた。
パッドによる演奏スタイルは AKAI MPC や Native Instruments MASCHINE などが有名だが、これらは電源が必要だったり、PC が必要だったりと、スタジオユースか、周到に準備されたライブユースが前提だ。SP-404sx は電池駆動でコンパクトだからどこにでも持っていける。街にも森にも海にも持っていけるプレイアブルなサンプルラー・ミックスツールとして 新しい音楽文化を作ってきたプロダクト である。
Rokand SP-404 MK2
さて、SP-404 Mk2 だ。まずプレス向けの情報整理から。盛りだくさんだ。
- 鮮やかなOLEDディスプレイにより、視覚的な波形編集だけでなく詳細なパラメーター・エディットも容易に
- マルチカラー・パッドは17段階のベロシティに対応し、スムーズなプレイアビリティを実現
- 起動時間と読み込み時間の短縮、16 GBの内部ストレージ、低レイテンシー・パッド、迅速なサンプル編集により、ワークフローの高速化を実現
- 重量1.1kgと超軽量かつコンパクトな本体は、ACアダプターやUSB-Cからの給電、単3電池6本による電池駆動だけでなくUSB-C経由でのモバイル・バッテリー駆動にも対応し、場所を選ばず使用可能
- Vinyl SimulatorやDJFX LooperといったSPならではのエフェクトをはじめ、新規追加のLo-fi、Cassette Simulator、Resonatorエフェクト、さらにギター/マイク入力用の専用Vocoder、Auto Pitch、Guitar AmpSimulatorなどの豊富なエフェクトを搭載
- 32ボイスの最大同時発音数と、プロジェクトごとに160のサンプルを16プロジェクト分保有する内部メモリーにより、パフォーマンスの可能性がさらに拡大
- リアルタイムまたはオートでのCHOP、自動BPM検出、ENVELOPE、ピッチ・シフト、および RESAMPLEなど、充実の機能でオンボードでのサンプル編集を強力にサポート
- 高品質かつ即戦力のプリセット・サンプルとパターンを144種ご用意
- アルミ製フェイスプレートは取り外しができ、WEBサイト上にはアウトラインのテンプレートをご用意。スクリーンセーバーやスタートアップ・ロゴのオリジナル設定など、豊富なカスタマイズ・オプションをご用意。
- 入出力端子には、標準タイプのLine in/out、Guitar/Mic input、ステレオ標準タイプおよびステレオ・ミニ・タイプのPhone out、ステレオ・ミニ・タイプのMIDI in/outを装備
- 多彩なエフェクトを使用した再録音により、詳細なサウンド・デザインを実現する新しいリサンプリング・ワークフロー
- 直前のパフォーマンスから最大25秒さかのぼってキャプチャする、SKIP BACK SAMPLING
- Bus FXを搭載しエフェクト・レイヤーやルーティングのカスタマイズが可能になり、複雑なサウンド・テクスチャの作成にも対応
- クオンタイズだけでなくシャッフル・パーセンテージの調整が可能となり、スイングのカスタマイズも実現
- バンクごとにBPMを設定して楽曲を完成できるパターン・シーケンサーはバッキング・トラックの制作やプログラミング・パフォーマンスに最適
- Pattern Chainによる自動再生が可能なほか、PAD LINKを使用すると1度のプレスで最大4つのサンプルをトリガー可能に
- DJモードでは、2つのサンプルを自在にミキシングする、ライブ・パフォーマンスへの新しいアプローチを実現
- Mac / Windows用のSP-404MKIIエディター・ソフトウェアは、ダイレクトなサンプルへのアクセスで詳細な波形編集を行うことができるほか、サンプルの管理やパッドへの割り当て、MIDIファイルとSP-404SXおよびSP-404Aプロジェクトのインポートが可能
うーん、どこから行こうか(笑)。
ハードウェア
まずハードウェアとしての進化から。新デザインの SP-404mk2 は引き締まったデザインで、新設の OLEDディスプレイにより、波形切り出し位置の確認(これまで耳でやってたんだぜ)など、視認性が向上した。
パッドは17段階のベロシティに対応、マルチカラーに対応、16個に増えた。内部ストレージも 16 GBに。SDカードは廃止されるという噂があったが継続された。
接続端子は LINE IN/OUT がRCA から標準ジャックに変更になった(ありがたい)。MIDI端子はミニタイプながら MIDI OUT が増設。オーディオとMIDI転送用の USB-C 端子、GUITAR用の入力端子が追加されている。サイズは若干の変更があるものの、404sx と同等の大きさ、重量は 100g 軽くなった 1.1kg。
ACアダプタ、電池駆動はそのままに USB-C 経由の給電にも対応した。うん、控えめに言ってもカッコイイという感じ。
サンプラー
同時発音は 12音から 32音に増加(まぁ、困ることはなかったが)。ストレージの強化により、サンプルもプロジェクト単位に160という必要にして十分なスペックに。編集はリアルタイムでの分割やオートスライスにも対応、今風のサンプラー機能を搭載した。最大25秒のオーディオをさかのぼってキャプチャできる SKIP BACK SAMPLING も追加された。サンプルは48kHzで最大 16分 (1サンプルあたり約176MB)、ここは微妙にスペックダウンしてるんだけど、まぁ、実用にあわせて再設計された感じに。
そしてエフェクト
やはり最大の関心は搭載されているエフェクトじゃないだろうか。実際に聴いてみたいものだが、Lo-fi、Cassette Simulator、Resonator、マイク入力を活用した Vocoder、Auto Pitch などが搭載されている(ギターアンプもあるみたいだが)。29種類だったエフェクトは、マルチ・エフェクトが37種類、インプットエフェクトが37種類という構成になった。
またエフェクターは2系統のバスを使えるようになった。各パッドを自由にバスを設定できる。これで音源に全部同じエフェクトがかかったり、エフェクトをかけるパッド選択する必要がなくなる。またパッドをトラックに分た DJ ミックスプレイもできるようになった。ここら辺は、追加でレビューしていきたい。
外装デザイン
SP-404 は様々なデコレーションやスキンがサードパーティから発売されたり、自分で工夫したり、というのがひとつの文化になった。SP-404mk2 は外装パネルのデザインデータが公開されるようなので、自分でオーバーレイ・カスタムスキンを作ったりできそうだ。
SP-404mk2 App
Mac/Windows専用の編集アプリケーションが用意されている。404sx も非力なアプリがあったんだけど、こんどは波形編集も可能だ。Roland Cloud Manager からダウンロードできる(あぁ、そういうことか)。同じくサンプルやサウンドパックも配信されるようだ。
ファーストユーザのみならず、404sx ユーザの 2台目需要にも最適
10年以上ひっぱった SP-404sx の後継機はかなり面白うそうな製品に仕上がった。これからビートメイクをはじめる人にも、そして SP-404sx を持っているユーザにも十分訴求できる製品になっていると思う。
価格は、¥49,500(税込)、発売は 11月19日からを予定している。うん、面白い。楽しみです。
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