Reason 10 にアップグレードした件。すっかり複雑化した操作系に狼狽している今日この頃。無理に Reason を使おうとするのではなく、いいところからつまんで行こう、と思う。
ということで Reason 10 から搭載されたシンセサイザー Europa について。この Europa は VST/AU プラグイン Europa by Reason として $149 で別売されており、Reason 以外の DAW でも使うことができる。Reason 10 ユーザなら、プラグインバージョンのライセンスも無償で提供される(後述)。
かつて Reason を使っていた人ならばアップグレードが $129、パッケージなら 1万円ちょっとで買えてしまう。こっちの方がお得ですね。
シェイプシフト シンセサイザー Europa
Europa というと Thomas Dolby のファーストアルバムに収録されている名曲か、木星か土星の衛星を連想するが、シェイプシフトシンセサイザーと言われてもイマイチ、イメージできない。が、そのルックスはレッドで強烈で強そうだ。
うーん。そうっすか。
まず、Europa は生物学的分類からするとウェーブテーブルシンセサイザーだ。34種類のウェーブテーブルプリセット(60以上の追加テーブルも持っている)のほか、ユーザ独自のサンプルを読み込ませることができる。ユーザの波形を読み込ませることができるのは最近よくあるタイプ。単純な波形だけでなくボーカルやグルーブ、シーケンスパターンを読み込ませて変調させることができるのだ。
高度な Spectral Filter 、Harmonics processor 、そしていわゆるユニゾン発信部があり、発音部からフィルター、ユニゾンで1つのサウンドエンジンを構成している。 Europa はこのサウンドエンジンを3機搭載している。赤い機体は通常の3倍ってやつだ。
そして動きのあるサウンドを作るために、柔軟性の高いエンベロープを4機搭載しており、このエンベロープの変化をウェーブやフィルター、モジュレーション、と変化させたい個所にアサインすることができる。エンベロープは多くのテンプレートが用意されているほか、マウスで編集したり書き込んだりすることも可能。ビートシンクもしてくれる。エンベロープを活用することで音色変化が激しいサウンドを作ることができる。というか、このエンベロープのアサインが Europa を表情豊かにする決め手 だと思う。
リバーブ、ディレイ、モジュレーション(コーラスとかフランジャー、フェイザー)、イコライザー、コンプレッサー、ディストーションといった基本的なエフェクトも内蔵している。そしてプリセットが 500以上ある。
Europa のサウンドと負荷
EDM で大人気の SERUM がプラグイン単体販売シンセの手本になるんだと思うけど、SERUM はプリセットが素晴らしく、また波形や変調の調整など操作面で「使いやすさ」にこだわったシンセサイザーだから、テーブル数やフィルター数、プリセット数などスペック比較してどうの、というものではない。では、Europa のサウンドはどうか。
ずばり Europa のプリセットは「地味」 だと思う。
シンセサイザーの構成からはもっと派手できらびやかなサウンドを出せるはずだし、4機も搭載しているエンベロープを使えば、もっと変化が激しく動きのあるサウンドは作れるはずなんだが、なんか地味だ。全然 Europa の可能性を引き出していない。どんなユーザを想定して 500以上もプリセットを作ったんだろう、と思ってしまう。
プリセットジャンルは Bass / FX / Melody / Pads / Percussion / Plucks / Poly / Rhythmic / Textures とあるが、悪いけど印象的なものがない。KORG Gadget では各シンセサイザーに個性があって分かりやすいんだけど、Europa といえばこのサウンド、というのがない。
あと、Drive や EQ がある割に、低音が薄めだ。これビルトインのエフェクトで全然印象を変えられる。おいおい、ちゃんとプリセット作れよ。
スペック的にはもっと使える音を出せると思うのだが、ユーザはシンセサイザーの仕組みに詳しい人ばかりではないし、シンセのサウンドメイクができる人でも優れたプリセットがあるシンセサイザーに流れるだろうに。
同類のシンセサイザーとしては MOTU MX4 がある。サウンドは MX4 の方が断然に面白いと感じる。比べるとコンセプトも機能構成も似通っている Europa と MX4。音作りのインターフェイスは Europa の方が使いやすい。が、MX4 に手が伸びるよなぁ。
マシン負荷は MX4 と同タイプのサウンド(ワイルドなリードやレイヤー数が同じようなパッドなど)で比べてみたところ、一貫して Europa の方が重かったが KORG MonoPoly フルバージョンと同等ぐらい。処理からするとエフェクトの使用数とかで変わりそうだが、プラグインの印象としては重くはない、というところ。
シンセサイザーの可能性を追求したプリセット群が欲しい
一見、画面は複雑だが少し使ってみれば音色エディットは覚えられるように整理されている。 WAVE SHAPE や SPECTRAL FILTER や FILTER の FREQ など、赤くて太いノブをいじるとダイナミックにサウンドが変化する。回していて楽しいノブだ。これをオートメーションで録音するのは大変なので、ここの動きにエンベロープを当ててやればいい、というのがずばり正解。
それだけにプリセットの地味さが残念でならない。確かに Reason のシンセサイザーの中では Grain というこれまた派手なシンセがあるので、位置付け的な整理があったのかもしれないけど。
MOTU Digital Performer がチャンク構成でパターンシーケンスできることから「デジパフォ、EDM にどうっすか?」とプロモーションしていた時期があって、その時に MX4 のプリセットって EDM っぽいのが増えたんだと記憶している。 Europa もプリセットをもっと丁寧にお金をかけて作って欲しいなぁ、と思ってます。
個人的には出番はあるシンセだと思う。「あ、この音が欲しい!」と思って選ぶシンセもあれば、「なんかないかね」と思ってさわるシンセもある。特に時間とともに変化するサウンドは Europa は得意なので、シンセエディット派の人にはオススメできると思う。
———
このムービーなんかエディット派だと「うんうん、そうかそうか」という感じでしょ。
Europa が目一杯頑張っているムービーも紹介しておきます。
コメント