KORG ELECTRIBE Wave – パフォーマンス向きの実力グルーブ・アプリケーション

RECORDING

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KORG が コルグ音楽制作アプリ&ソフト:全製品 最大50%オフのスペシャル・サマー・セールを実施!している。iPad Air3 で KORG Gadget を使い始めたのだが、まだ全部のガジェットが揃っていない( Mac版ではフルで使えるのでプロジェクトを共有するときに不便だ)ので、いくつかガジェットを APP課金で購入した。

ハードウェアでは Roland TR-8S が気になって(店頭で触ったらいい音してた)いたので、前から気になってたものの、iPad を持っていなかったから敬遠していた KORG ELECTRIBE Wave(特別価格¥1,800)を買ってみた。これが思った以上に力作だった。そして使いやすかったので紹介してこうと思う。

ELECTRIBE シリーズのまとめ

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KORG のリズムマシン・グルーブボックスは ELECTRIBE という名前で販売されている。1999年にシリーズ最初の ELECTRIBE A/R が発売されて以降、リズム系特化音源として販売され、ELECTRIBE の限界を引き出すプレイを指向する熱狂的なファン もいる。ちょうど Roland の Groovebox MCシリーズが高機能化しすぎていた時代なので、ELECTRIBE の即戦力(シンプルさ)が広く受け入れられたんだと思う。

2003年の ELECTRIBE MX/SX ではボディに真空管を2機搭載して、ふわっと光るのが強烈に印象に残っている。ELECTRIBE MX はシンセサイザーとしても非常に評価が高く、スライドコントローラーとノブの操作により、かなり面白い演奏ができる。ELECTRIBE SX はサンプラーモデルであり、BreakBeats などの音源スライスが面白い。YouTube でもこの時代のパフォーマンスビデオは結構あり、どれも面白い。2016年には現行機種の ELECTRIBE 2 が販売されている。

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個人的には、ELECTRIBE SX(SD カード対応版)と ELECTRIBE 2 を持っている。ELECTRIBE で曲作りしない割に持ってるねー。ELECTRIBE SX は赤いボディが最高にクールだし、Roland とは異なるパキッとした明るいサウンドが魅力だ。

アプリでは、iELECTRIBE(ELECTRIBE R くらいの性能)が 2010年に登場したが 8年を経て、iPad を前提にフルスクラッチで創造された ELECTRIBE Wave が登場した。

iPad を前提として開発された ELECTRIBE Wave

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KORG ELECTRIBE Wave はハードウェアのシミュレートではなく、iPad アプリとして設計されているので、使いやすさと機能のバランスの質は群を抜いている

DTM Station さんが、開発陣のインタビューを掲載している。興味のある人はチェック。2018年の3月にプロジェクトがキックされて、半年を切る 8月にはファーストバージョンをリリースしているので、KORG の開発力は凄いな、と思う。やっぱりアプリ開発も内製化しないとね。

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現在のバージョンは ELECTRIBE Wave 2 となっている(KORG ELECTRIBE Wave が大型アップデート。ドラムサンプル・インポートや Ableton Live Project 、CCアサインなどに対応した最新バージョン2をリリース)ので、以下の解説は V2 を前提とする。

音源部

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左が SYNTH / 右が DRUM エディット画面


まず、音源は Drum と Synth の2構成。Drum は PCM音源、Synth はウェーブテーブルシンセサイザーだ。これまでの ELECTRIBE はバーチャルアナログシンセサイザーを搭載していたのだが、EDM ジャンルへの対応を意識したのか、WAVESTATION 以来のウェーブテーブル推しの音源となっている。シンセ・ドラム双方、ELECTRIBE でおなじみの 8パート。最大発音数はシンセが 32音、ドラムは 8音。

エフェクト部

エフェクトは各パートにアサインが可能かつ、マスターにも設定が可能。エフェクトはバリエーションが豊かだが各パートに指せるのは1系統のみ。

シーケンサー

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シーケンサーは 16ステップ×8を基本にシンセとドラムで16パート。モーションシーケンスにも対応する。モーションシーケンスは1パートに 35系統設定できる。ここはなんでもアリの世界。ハードウェアだと何をどのように設定したのかが分からなくなると思う充実度。また、各ステップにグルーブを設定可能。これはスライダーで適用量を指定でき強力だ。

コントローラー・互換性

コントローラーはステップスイッチの他、キーボード、コードパッド、KAOSS パッドタイプのパッドがあり、iPad ならではのミキサー画面も用意されている。

外部 MIDI 対応としては、Core MIDI / Bluetooth MIDI 経由で、MIDI デバイスとコンタクトする。nanoKEY / nanoKONTROL 系のコルグデバイスについては、あらかじめパラメータがアサインされたコルグ・ネイティブ・モードにも対応する。Inter-App Audio /
Audiobus 3対応。

多機能なので非常に重いアプリケーションと思いきや、iPad mini 2(iPhone なら iPhone 5s)以降で動作する のは驚きだ。iPhone 版でも iPad と全く同じ画面を再現している。エディットは大変だと思うけど。

ELECTRIBE Wave 解説

もしあなたが既に ELECTRIBE Wave を持っているなら、KORG ELECTRIBE Wave/取扱説明書 をダウンロードした方が早い。ぜひダウンロードを。

ELECTRIBE Wave の画面はカオスパッド、設定、プリセット選択、録音・再生・ループを指定する ヘッダー部、実際のエディットを行う エディット部、パート選択やキーボード・コードパッド・ステップコントローラがある コントローラ部 に分かれている。どれも非常にアクセスが良い。各設定へのアクセスが悪夢のような ELECTRIBE 2 とは大違いだ。

エディット部も、MIXER / SOUND / SEQUENCE / MOTION / UTILITY と、おおきな機能くくりでタブ化されているので、画面は複雑そうだが実際は迷うことがない。全部のパラメーターを理解したり触る必要もなく、目的とする部分にすぐアクセスできるので、リアルタイムプレイも本当に楽しめる。

MIXER / ミキサー

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リズム音源としても頼もしいのだが、ELECTRIBE 単体でパフォーマンスを行うには、音楽的変化・トラックの積み重ねを表現する、パート(トラック)の MUTE / SOLO、ボリュームコントロールが重要となってくる。

ELECTRIBE Wave はミキサー画面を専用に搭載している。画面を広く切り替えて使える iPad ならではの作りだ。シンセ8パート、ドラム8パート、マスタートラックの各パートコントロールはこの画面でできる。コントローラー部は常時表示なので、パフォーマンスを行うには基本、この画面を使うと便利だ。

SOUND / サウンドエディット・シンセ

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まず、シンセパート。シンセ音源はウェーブテーブル音源だが、複雑に見えてオシレーターは1系統(+サブオシレーター)だ。パラメータパートを1つずつ見えていくと、そんなに大変なシンセサイザーではない。EG なんてアタック・ディケイ・リリースしかなく、機能・パラメータは厳選・絞り込まれている感じだ。また通常はミキサー部にあるエフェクトとイコライザーもエディット画面にあり音作りを1画面で完結できる。

見慣れないのは、オシレーターのウェーブテーブルと、ウェーブテーブルモジュレーションだろう。

ウェーブテーブルは同方式を採用している最近のソフトシンセでよく見かけるインターフェイス。波形の周波数と時間軸による変化を3次元マップで表現するもので、WAVESTATION でイマイチ分からなかったウェーブテーブル音源を分かりやすく表現している(例えば UVI FALCON でも同タイプのインターフェイスを搭載している)。

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実際は 70近くあるウェーブテーブルから選択するので、いろいろ選んでみて理解する、という感じにある。波形研究所を名乗っているサイトなので詳しく説明すると、マップの切断面が波形(ウェーブフォーム)。これがサイン波や矩形波、ノコギリ波、ノイズだったら鳴る音もも想像できるかもしれない。それが 70種類くらいあるのだが、70番目は KORG のロゴを波形にしたもので、なんでもアリだ。

波形でなくても輪郭を一筆書き出来れば画像でもいい。UVI FALCON などは画像ファイルをドラックすることで波形生成が可能なくらいだ。フリーダム。

波形のボディの部分が時間による変化を表している。これが細かいと変化が激しいんだな、これがゆるやかだと変化がゆるやかなんだな、と理解する。そしてこの切断面を行き来する場所(POSITION)や時間(SPEED)や方向(SHAPE)をコントロールするのがELECTRIBE Wave のウェーブテーブル音源の基本だ。

ELECTRIBE Wave のモジュレーションはピッチやカットオフ、音量やパンなどに加え、ウェーブテーブルを変調させる POSITIONがある。オシレーターのウェーブテーブルと、POSITION モジュレーションを組み合わせることで音色をエディットすると思えば分かりやすい。

SOUND / サウンドエディット・ドラム

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サンプルを読み込むタイプの PCM音源だ。ピッチやタイムを設定するシンプル設計。エフェクトを差し込めるので EQ でかなり音も作りこめる。

SEQUENCE / シーケンサー

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16ステップのシーケンサーながら、シンセはコードを打ち込める。ドラムではハイハットの連打刻みに便利な ROLL やシーケンスにノリを出す GROOVE が使える。

MOTION / モーションシーケンス

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この画面ではモーションシーケンスのエディットができる。モーションを設定するパラメータを選んでスライダーで設定できる。

URILITY / ユーティリティ

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シーケンスのコピー・ペースト、トランスポーズなどの編集ができる。シーケンスの展開を作るのに便利だ。

ELECTRIBE Wave 使った感想

演奏が楽しい

Twitter にも流したが、気に入ったプリセットをカオスパッドで弄るだけでも相当楽しい。ELECTRIBE Wave を鳴らしながら他のメロ楽器を演奏しても楽しいし、ワンフレーズトラックを作りこんで、ミキサーで出し入れすると立派に演奏できる完成度の高いアプリケーションだと思う。

カオスパッドは使える

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本系のハードウェアを除くと、ELECTRIBE Wave のカオスパッドは気持ちがいい。あらかじめコントロールパラメータが設定されている(もっとできるだろう)。FILTER が一番気持ちいいかな。カオスパッドは「設定済のエフェクトやサウンドのコントロール」がメインなので、本家 KAOSSPAD のようにディレイやフェイザー、リバーブなどの効果をダイナミックに指定できればいいんだけど。マスターをカオスパッドできるのはイイ!

コードパッドは使える

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ELECTRIBE Wave はパターンで使われているコードを抽出してパッドに並べてくれる。コードパターンを登録しておいてパッドを叩けばパターンの展開に使えて便利。気分でコードを展開できるがいい。

細部で作りが粗いところも

細部でまだまだ改善できるところもある。また希望もある。フィードバックを兼ねて列挙する。

  • KORG Gadget のように、パターン・ソングデータ、ユーザプログラムを iCloud で共有できない。
  • 音色プリセット(PROGRAM)画面で、現在のパートサウンドが何を選択しているのかが分からない。いい音色を他のパートやパターンで使おうとした時に、どの PROGRAM ベースなのかが分からないので、音色プリセットの再利用しにくい。
  • 音色プリセット数が少ない。
  • 音色のコピー・ペーストが出来ない。
  • ドラム音色のユーザインポートプリセットを編集できない。読み込んだ順番になるので混沌とする。
  • BARボタンを押すことで任意のBARを演奏するモードが欲しい(Roland TR-8S とかそれが便利)。基本シーケンシャルで BARボタンを押した時にその BAR 以降を再生する仕様が欲しい。
  • 任意の BAR をミュートしたい
  • パターンのセーブ動作が面倒。
  • ヘッダーに TEMPO キーが欲しい。
  • カオスパッドの画面から対象のパートを選択できるようにして欲しい。
  • カオスパッドの変調が地味だったり効果がよく分からないことが多い(パラメータの見直し)。
  • MIXER の SOLO/MUTE ボタンを大きくして欲しい(MFXボタンのみ大きいが反対でいい)。
  • パートに独自のネーミングをしたい。S1-8 / D1-8 ではなく数文字でいいのでパート名を指定したい。
  • 専用のコントロールサーフェスを販売して欲しい。

触って楽しい、頼りになるグルーブアプリケーション

感想としては「楽しい」の一言につきる。が、これでコード展開がある楽普通の曲を作ろうとすると、KORG Gadget の方が断然便利だ。もちろん、ELECTRIBE Wave 単体で楽曲制作もカバーできる性能があるが、やはり演奏向きなんじゃないかと思う。基本のグルーブシーケンスを出し入れしたり、KORG Gadget にはないカオスパッドで音色に変化を付けたり、が楽しくてたまらない。

一方で iPad であるから不便な部分もある。キーボードがディスプレイタッチだとどうしても弾きにくいのは仕方がないが、コードパッドをタイミングよく鳴らせると演奏の質ががぜん向上すると思う。 nanoKONTROL 2 を接続してトラックパターンを MUTE/SOLO したりするのが一番楽しいのかもしれない。

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