NAMM に向けてか怒涛の新製品を発表している KORG だが、その新製品ではなく、少し前に発表された KORG Gadget 3 について書いておく。
KORG Gadget 3
KORG が 1月 11日に KORG Gadget 3 を発表した。KORG Gadget はそれなりに機能が揃っているので、果たしてメジャーバージョンアップがあるのか、と思っていたが、見事、新バージョンが登場した。
新機能としては、新しいガジェット SantaAna (Guitar) と Sydney (Sampler) を搭載、新設計プリセットブラウザー、8-Band EQ、Stereo Widener、Transient Shaper など新しい5つのIFX、コード入力などの改善が中心だ。iOS版はAUv3に対応した。
これまでの音源の強化では往年の KORG シンセサイザーのミニ版を中心に搭載が進んだが、ギターとサンプルルーパーは確かに欠けたパーツであった。SantaAna はギター・リフマシーンであり基本的にはスライスサンプラーなので、Sydney 開発との相性も良かったのだろう。
Sydeny はサンプラーとしては非常にシンプルで6つのレイヤーを持つサンプルルーパーだ。読み込んだサンプルをテンポ同期してくれる。が、スライス機能はない。スライスサンプラーなら Abu Dhabi がある。サンプルをピッチ演奏したいなら Vancouver がある。なので6レイヤールーパー、ということになったか。なので、ピッチ演奏はできな、というものだ。プリセットのオーディオサンプルは結構楽しい。KORG がどういう音楽を創って欲しいのかが垣間見れる。
個人的には Reason の Dr.OctoREX Loop Player の Stockholm が好きなので、Sydeny も嫌いじゃないんだが、サンプラーの決定版みたいなものが欲しかったな、と。
SantaAna はギター・リフマシーンだ。ギターをカバーするという意味では、カッティングだけではなく、ギターメロディもカバーして欲しかった。そしてプリセットのギター音色が DTM っぽいギター(偏見)。ここらへん、 SESSION GUITARIST — ELECTRIC MINT を使っている身からすると、辛い。
その他、コードパッドも面白いし、プリセットサーチは素晴らしくなった。ジャンルセレクトはなんだ、これ?と思うが(笑)。
#KORG #KORGGadget #KORGGadget3
パッドはいいかもな。 pic.twitter.com/QSTR2Jk0ig— 波形研究所 気になるニュース🇺🇦 (@waveformlab) January 11, 2024
KORG Gadget の多くのユーザは iPhone / iPad を使っているようだ。小さい画面にタップで操作をするアプリとしては、ますます完成度が高くなったと思う。
macOS で使っている立場から
以前、KORG Gadget に愛をこめて下記のエントリーを書いた。
自分は KORG Gadget を主に「音源」として使っている。DAW として KORG Gadget アプリケーションを立ち上げることは稀だ。上記エントリーで書いた通り、楽曲を完成まで仕上げる DAW としては使いづらいところがあるからだ。KORG Gadget で楽曲を最後まで作るのは Gadget Sonic の時だけだ。
機能を充実させればさせるほど初心者には分かりにくいものになっていくので、要はバランスなのだが、「KORG Gadget 改善希望ポイント」としてあげたところを修正しても Gadget のバランスが崩れるようなことはなかろう。
これらの観点から KORG Gadget 3 は Mac DAW としての完成度が上がっているとはいいにくい。オートメーションガイドは中心線が1つ追加されただけで数値が分からないし、あいかわらずダンパーデータはコピーされたりされなかったりする(MIDI CC の並びが音源ごとに異なるからだ)。マスタートラックにオートメーションも追加されなかった。Undo はあいかわらず動作が分からない。
Korg Gadget 3、パターンコピーでダンパーペダルデータをコピーしたりしない問題、修正されてない。
既存の不具合修正やMIDI CC の整理はあまりされてないのね😢#korg #korggadget pic.twitter.com/3qXLrRciAN
— 波形研究所 気になるニュース🇺🇦 (@waveformlab) January 25, 2024
KORG Gadget 3 の DAW 機能が期待できないとなると、あとは音源にフォーカスがあたる。macOS 版の Gadget は音源は全部入りなので、アップグレードの価値は SantaAna (Guitar) と Sydney (Sampler) ということになってしまう。
KORG が作るシンセ音源、それもガジェットはかなりよくできている。性能や音質というより、キャラ振りが素晴らしい。直観的に「使うのはこれだ!」と選択することができる。
でも、ギターリフマシーンは普段使っている SESSION GUITARIST — ELECTRIC MINT などとは比べられないし、サンプラーも DAW にインテグレートされているものを置き換えるものではない。
macOS の KORG Gadget 3 for mac は有償アップグレード(10,890円)だ。価格は妥当だと思うけど、この 2つのガジェットに 1万円はなぁ、と思う(アップグレードしましたけど)。せめて既存のガジェットに新しいプリセットが投入されていたらいいのだが。というより、魅力の中心が既存のガジェットなんだから、そっちに投資・改善してくれた方がありがたいんだけど。
今回のアップグレードはやはり iOS 版をターゲットとしているんだろうな(実際、ウィンドウ UI の多くは iOS アプリのようだ)。iPhone や iPad で外出先でも、思いついたアイデアをすぐに形に出来て、なんなら Ableton Live プロジェクトに書き出してくれたまえ、と。Mac で KORG Gadget を使っている人はマイナーで、mac / PC 環境では Legacy Collection のような「フルのソフトウェア音源」を買ってくれよ、ということなのかもしれないね。
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