KORG wavestate native / opsix native – KORG が wavestate / opsix を完全ソフトウェア化、あのシンセが DAW でも使える!

RECORDING

KORG がハードウェア・シンセサイザー wavestateopsix のソフトウェア版となる wavesate native / opsix native をリリースした。単体アプリケーションのほか、プラグインとしても動作する。使用にハードウェアシンセサイザーは必要ない、完全なネイティブなソフトウェア・シンセサイザーだ。

デモ版インストールの方法から

まずトライアル版のインストール方法から。デモ版は KORG Software Pass 経由でインストールする。KORG Software Pass は非常に分かりにくかった KORG ソフトウェア製品のアップデートをまとめてくれるポータルソフトウェアで、登録ソフトウェアのアップデートのほか、デモ版のインストールも行える。

これまで KORG Software Pass を使ったことがない人は、スムーズにトライアル版をインストールできたんだろう。が、KORG Software Pass を使ったことがあるユーザはあらためて Ver.1.1.10 を手動でインストールしなければならない。古いバージョンの KORG Software Pass を起動するとアップデート通知が表示され、アップデートしたもののそれは Ver.1.1.10 ではなく、いつになっても wavesate native / opsix native のデモ版が表示されなかった。

このページにある KORG Software Pass をダウンロードすること。謎の仕様。

ちなみにインストールイメージの大きさが wavesate native は 2.2GB、opsix native は 312MB とシンセサイザーの作りの違いが分かって面白い。

同時期にリリースされた wavesate native / opsix native だが、おそらく別のチームが作ったんだと思う。メニューまわりの UI は全く違うし、プリセットブラウザやセッティングの設計も統一感がない。アプリケーションアイコンの大きさすら違う(インストールされるアプリケーションのディレクトリさえ違う)。 KORG の単体ソフトウェアは設計も使い勝手がバラバラな印象がある。実際に DAW で使うといろんな会社のソフトウェアを使うことになるので、さほど気にならないが、KORG Gadget のように統一感があると、それはそれで使いやすい。

ちなみに現バージョンは NKS 対応ではない。KORG Gadget は対応しているが、これは残念。

wavesate native

まずは wavestate native から。店頭で触ったことがあるが、やはり自宅でヘッドフォンで試せると印象が変わる。みんなもそうだと思う。とても良い印象だ(実際、 wavesate native を買ってしまった)。

wavestate は KORG WAVESTATION ゆずりの Wave Sequencing 2.0 を搭載したシンセサイザー。いわゆるウェーブテーブル音源なんだけど、単純にオーディオサンプルの任意の場所を再生するのではなく、タイミング、ピッチ、シェイプ、ゲートなどを指定できる。このをハードウェア実機のインパネからイメージするのは難しい。ウェーブテーブル音源だけに、「なんかいろいろな音が出るみたいね」という域をでない人が大半だろう、自分もそうだった。

wavesate native の UI は非常に分かりやすい。ウィンドウをみれば、「なるほど、こういうシンセサイザーだったのか!」と腹落ちすること間違いなしだ。あまりに分かりやすく自然に操作できるインターフェイスなので、「ハードウェアシンセサイザーも大きい液晶ディスプレイを搭載すればいいのに」と思うほど。ハードウェアのインパネと見比べてみよう。

KORG wavesate

KORG wavestate native

Layer A – D の 4つの音源モジュールが並ぶ。Timing(青)、Sample(水色)、Pitch(緑)、Shape(黄)、Gate(赤)、Step Seq(紫)部分が見慣れないが、これが Wave Sequencing 2.0 のキモの部分だ。Wave Seq モード でみてみる。Layer A の Wave Seq 設定はこんな構成になっている。

KORG wavestate native wave seq

あー、なるほど。こういうことなのね、とイメージが沸くと思う。後日、詳しい解説はしようと思うが(しなかったらごめん)、少なくとも各項目の指定可能のパラメータがグラフィカルに表示されるので、音色をエディットにチャレンジする人も増えそうだ。wavestate は 2GB レベルのウェーブテーブルを持っている。オーケストラなどのリアルオーディオも収録されているので、自分好みの音色を作れば実に実用的なシンセサイザーになると思う。

作ったパッチはハード版の wavesate と相互運用が可能。ソフトからハードを買ってしまうウッカリ者も出てくるだろう(ソフトからハードへのクロスグレード販売はないんだね、やはり)。

パッチもいろいろあって面白そう。そしてエディットも見えてきた。 wavesate native、使えるヤツでした。近々、デモ作ってみようと思ってます。

opsix native

KORG posix body

次に opsix native 。ハード版は 6つのスライダーとダイヤルで強烈に音を変調させることができるイメージ。FM 音源といいながら、その実際は 6種類のシンセ音源をベースにたくさんの波形を変調できるマニアックなシンセサイザーだ。出音もまさに「デジタル・シンセ」という感じ。ソフトだとどうなるか。

opsix native

UI はすっきりカラーだが、こちらはハードウェアシンセをそのままレイアウトした感じ。シンプルな色使いの UI ではあるが、オペレータのアルゴリズムで音作りをするシンセス・プロセスがもともと直観的ではない。しかも、opsix 独特のオペレータ・モードという考え方があるので、ちょっと理解が難しい。学術的というか夏休みの研究課題のよう。

波形などはグラフィカル(アルペジエーターでさえグラフィカル)に表示されるものの、アルゴリズムでイメージとは遠い音色になってしまう。YAMAHA TX81Z の 4オペ FM しかいじったことがない自分の知識では、思った音色を作るのは難しそう。

「あのスライダーを動かせば、とにかく音が劇的に変化するんだ」と思いきや、Ratio のダイヤルの MIDI Learn がうまく設定できない。えーっと、赤がキャリアで、青がモジュレータだっけ、といじっているとデモ時間(20分が終了)。そりゃ、そうでしょう、そうですが(笑)。

仕様時間が終了しました

ソフトがあればハードはいらないかー、にならない製品づくり

wavesate native / opsix native を使ってみて思うのが、ベースとなるハードウェア・シンセサイザーを感じさせるシンプルで方向性の明確な作りだな、と思うところ。例えば、ウェーブテーブル・シンセサイザーをソフトウェアでスクラッチで作るとどうなるか、FM 音源ながら様々な波形を変調できるシンセサイザーをソフトで作ったらどうなるか。たぶん、UVI Falcon みたいになるんだろう。「何でもできます」と。何でもできるのでソフトウェア音源としての方向性が分かりにくくなる。「ここにアイツ!」というシチュエーションが減り、音色選びはプリセット頼みになる。そして単体開発は価格も上がる。

wavesate / opsix というハードウェアがあることで、機能や出音にある一定のまとまり感がある。表現力に限界があるハードウェアのために絞り込まれたパラメータをソフトウェアに展開するんだから、凄く分かりやすい。プリセットも使えるサウンドに絞り込まれており、「あー、ハードシンセっぽいよね」と感じることだろう。

また「このソフトがあればハードはいらないよね」と感じさせないのも素晴らしい。wavesate native / opsix native は実にプレイアブルだ。パラメータを動かしたくなる。ソフトウェアで音色を作りこんだり、DAW でオートメーションさせたくなる。単なる多音源プレーヤーではない。いじると音色が変化するシンセサイザーならではの面白さを感じる。

そうすると、当然ながらハードウェアも欲しくなってくる。MIDI Learn しなくても、どんだけあるのよ、というほどツマミがあるんだから。

DAW と実機ではやはり戦場が異なるし、10万円を切る価格帯のシンセサイザーならではの戦略だと思う(wavesate 実売で 5万円台だよ)。ハードウェア版シンセサイザーを持っている人には 4,980円でソフトが購入できるクロスグレードが用意されている。今後は逆の流れも検討されることだろう。

あとは KORG modWave も出てくるのかな。ハードとソフトの相互運用の理想形を見せてくれた感じがする。願わくば操作感に統一性が出て、NKS に対応してくれれば言うことなしです。


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