KORG からいくつか新製品の発表があった。新しい WAVETABLE SYNTHSIZER modwave、限定復刻のアナログシンセサイザー miniKORG 700 FS、そして ARP の SEMI-MODULAR SYNTHSIZER を復刻した ARP 2600 M 。後者 2機種はノスタルジーというか、アナログシンセサイザーマニア向けのマスターピースという感じ。
新しいアプローチで攻めている製品は WAVETABLE SYNTHSIZER modwave。発売予定は今年の中旬(2021年6月 21年8月 発売予定)なので、ずいぶん先に発表するなぁ(wavestate の買い控えにならないか?)という感じもするが面白そうなので記事としてまとめてみる。
WAVETABLE SYNTHSIZER modwave
KORG modwave の紹介文には名機 KORG DW-8000 の記述が出てくる。KORG DW-8000 は PPG Waveシリーズが実現していたウェーブテーブル式音源、D.W.G.S.音源を搭載していた。この波形メモリ音源は PCM 音源に発展していく。
1985年、コルグのDW-8000はデジタル・ウェーブテーブルとリッチなアナログ・フィルターを組み合わせ、アナログ・オシレーターでは不可能なサウンドを実現しました。そのため今でも一部マニアの間では人気を誇っています。
modwaveはそのDWシリーズの資産をベースに構築され、現代版モンスター・シンセへと変貌を遂げました。信じられないほどディープなウェーブテーブル・オシレーター、豪華なフィルター、ワイルドかつ柔軟なモジュレーション、比類なきポリフォニー、幅広く網羅するパターン・シーケンス、そしてすぐに理解できる操作系を特徴としています。
DW-8000 の波形メモリは 256Kb だったが、modwave では巨大になっているんだろう(スペック情報の表記が不足している、後に追記されるだろう)。
シンセ・エンジン
まず音源部から紐解いていこう。
構成は 「2基のウェーブテーブル・オシレーター+サブ・オシレーター/ノイズ・ジェネレーター」となっている。2基のオシレーターは A/B 2つの波形を合成する。波形には内蔵のウェーブテーブル、基本波形、KORG、Airwave、Francis Preve の新しい素材に加え、Plugin Guru のバンク、KRONOSとKROMEライブラリの一部も含まれる。また、Serum または WaveEditフォーマットで作成したカスタム・ウェーブテーブルをロードすることもできる。
ウェーブテーブル(波形サンプル)は、波形の再生ポジション、モディファイア、モーフ、A/B ブレンドが可能。
それぞれ簡単に説明すると、再生ポジションは時間的に長いサンプルのどこの部分を音源波形として利用するかを決めるもの。サンプラーのように部分再生のようなトリッキーな音色を作ることができる。
モディファイアは、波形読み込み時に質感を加えられる。30以上のモディファイアを使用してウェーブテーブルのキャラクターを変更することができる。奇数倍音や偶数倍音を分離したり、サチュレーションなどの適用が可能だ。
モーフは波形に対し変調を行う。13種類のモーフ・タイプを使って、ウェーブテーブルをストレッチ、スクイーズ、リフレクションなどリアルタイムで変化させ、音色を変化・変調させることができる。
A/B ブレンドは、A/Bスロットにそれぞれの波形を読み込み、レイヤー(重ねる)やモーフィングでオシレーターが発音する音色を多彩にする。これらの機能により、モジュレーションに送る前時点で、2億3,000万以上のウェーブテーブルのバリエーションが用意されていることになると説明されている。
モジュレーション
いわゆる CUTOFF フィルター系列とは別に、ModMatrix が用意されている。カオスパッドのような物理的な操作で音色を変化させる Kaoss Physics と、シーケンスによりパラメータを変化させるモーション・シーケンシング 2.0 機能がある。Kaoss Physics は変化点(公式サイトの説明ではボールと呼んでいる)の動きを物理モデリングで搭載しており、多彩な変調を可能にしている。
モーション・シーケンシング 2.0 は KORG wavestate に搭載されていた ウェーブ・シーケンシング 2.0 を進化させたもの。シーケンスタイミングの設定により各種パラメータを操作することで変調を行う。これは実機を触ってないのでよく分からないんだけど、時間(変化テンポ)の進み方をコントロールできるタイプのモーションシーケンスだと理解している。詳しい人がいたら教えて(笑)。
フィルターは Polysix や MS-20LP などが使える。モードは 2-pole LPF、2-pole HPF、2-pole BPF、2-pole Band Reject、4-pole LPF、4-pole HPF、4-pole BPF、4-pole Band Reject、Multi Filter、MS-20 LPF、MS-20 HPF、Polysix の構成だと思う。
エフェクト
エフェクトはモジュレーション系、Delay、Reverb などが揃っている。KORG modwave 単体で音作りは追い込めるだろう。
Pre FX:シメータ、グラッフィックEQ、ギター・アンプ、モダン・コンプレッサー、パラメトリックEQ、レッド・コンプレッサー、リング・モジュレーター、トレモロ、ウェーブ・シェーパー
Mod FX:ブラック・コーラス/フランジャー、ブラック・フェーズ、CX-3ビブラート・コーラス、EPコーラス、ハーモニック・コーラス、モダン・コーラス、モダン・フェーザー、オレンジ・フェーズ、Polysix アンサンブル、スモール・フェーズ、トーキング・モジュレーター、ビンテージ・コーラス、ビンテージ・フランジャー、ビンテージ/カスタム・ワウ、Voxワウ
Delay:L/C/Rディレイ、マルチバンドModディレイ、リバース・ディレイ、ステレオ/クロス・ディレイ、テープ・エコー
リバーブ:アーリー・リフレクション、Overb
マスターEQ:4バンド・パラメトリックEQ。
その他スペックとしては、wavestate や opsix 同様の37鍵、32音ポリ・ステレオという仕様になっている。
コルグはシンセサイザーのイノベーションをリードしている
ここ数年、アナログシンセサイザーの復権が続いている。基本、アナログの良さは「音の太さ・存在感」。音作りは基本波形を削っていく方式が多く(倍音重視のものもあるけど)、LEAD や BASS にはもってこいだが、各音がバラバラに変化するようなストーリー感ある PAD 系の実現は困難だ。
アナログシンセサイザーで変化に富む多彩なサウンドを実現しようとすると、たくさんのオシレータ、各オシレータ出力に連動したフィルター・エンベロープコントローラーが必要になる。ひとつひとつ音作りをしてレイヤーで重ねるイメージだ。そのようなシンセサイザーは回路も複雑になり、ある程度の大きさが必要で価格も高くなってしまう。
時間軸で変化に富む音色を作るにはデジタル音源の方が向いている。音源を自由自在に変化・コントロールできる FM音源シンセサイザーとして KORG opsix があり、変化ある音源自体をサンプルで実現するのが ウェーブテーブルシンセサイザー KORG wavestate や KORG modwave ということになる。
個人的には増えすぎたアナログシンセサイザーは moog minitaur と、2台所有している KORG monologue で十分と判断。BEHRINGER model D も売却した(BEHRINGER Crave は面白いから維持)。変化を自由にコントロールできるシンセサイザーを追加したいと考えている。
ウェーブテーブルシンセサイザーだとソフトウェア音源にいくつもあし、安価だという事実もあるんだけど、やはりノブでぐりぐり操れて楽しいのがハードウェアシンセサイザーの真骨頂。そういう意味で、KORG opsix や KORG modwave はとても興味がある。変化に富みリアルに音作りをしている感覚があるシンセサイザーとしては FM音源のKORG opsix、イメージしたサウンドを作るにはウェーブテーブル型の KORG modewave の方が早いかもしれない。
ハードウェア・シンセサイザーに関しては「KORG がやはり攻めているな」という感じがする。各社がパッケージングに重点を置いた製品作りをしている中、グローバルにみてもシンセサイザーのイノベーションをリードしていると思う。6月が実に楽しみだ。
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