Mac のための Logic Pro 11 と iPad のための Logic Pro 2

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くの楽器やカメラ、美術ツールなどを巨大なプレス機で押しつぶす派手な動画で雰囲気をぶち壊して終わった Apple Event “Let Loose” – May 7。iPad Air や iPad Pro の新モデルが発表された。波形研究所としては、合わせて発表された Logic Pro 11 をとりあげる。

Logic Pro 11

Apple LogicPro 11
Apple Event では iPad Pro 向けのプロフェッショナルアプリとして紹介された Logic Pro だが、macOS 版も合わせてアップデートされており、ちゃんとプレスリリースも出てる(Logic Pro、新しいAI機能で音楽制作を次のレベルへ)。

Apple はこれまで AI という言葉が大嫌いで、単に AI と呼べばいいところを transformer といったより専門的な言葉で煙に巻いていたのだが、AI に関する戦略が整理されたのか、一挙に AI 推しになっている。

もともと Apple は AI 処理機能を Apple Silicon にオンチップ化したり、特殊な LLM をリリースしたりと、AI については力を入れていた。ただ、昨今の大規模言語モデルや生成 AI のメガトレンドに積極的に対応してきたとは言い難く、まぁ、遅まきながら、というところ。ただ、機械学習するデータはたくさんあるし、Siri のようなパーソナルアシスタントを提供していたりと、リソースもふんだんにある。

誰かの後を追う時の Apple は実は先を走る時よりもスピードが速い。AI の製品各所への積極的なインプリメントを歓迎していきたい。

Session Player

Logic Pro 11 Session Player

音源だけでなく演奏パターンもサポートするソフトウェア音源で、従来から実装していた Drummer に加え、Bass Player と Keyboard Player が追加された。

Bass Player では 8種類の Bass Player スタイルによりスライド、ミュート、デッドノート、ピックアップヒットのパラメータをコントロールし自動演奏する。コードトラックでコードを指定すると、コード進行に沿って即興演奏が可能だ。音源はアコースティックからエレクトリックまで、6種類の新しい音源を収録する Studio Bass プラグインを活用する。

Keyboard Player も同様に 4種類の Keyboard Player スタイルを選択できる。「シンプルなブロックコードから拡張ハーモニーによるコードボイシングまで、ほぼ無限のバリエーションを持ち、あらゆる演奏が可能」とされており、コードトラックでのコード自動演奏もサポートする。

session_players_chord_track

Session Player は演奏パターンを担当するものなので、サードパーティの音源も鳴らせるのかもしれない(持っている人、どう?)。

パターンを生成するソフトウェア音源はサンプルループを代替するもの、と思ってたけど、AI プレーヤーというか、コードだけ決めて即興演奏なんて世界が来てるんだね

Stem Splitter

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Serato DJ や AKAI MPC、Moises など、オーディオセパレーションを行う機能がトレンドだ。いわゆるステム分割と言われる機能で、Logic Pro では標準機能として、ドラム、ベース、ボーカル、その他の音源と 4パートのステムに分割する機能が搭載された。

このオーディオセパレーション、かつては周波数や位相、ステレオ定位からオーディオを分割していたが、現在では楽器の音や演奏の特徴を機械学習した知識ベースによりオーディオを分割する。なので音域が似ているストリングスとパッドを分離したり、ということができるんだけど、Logic はドラム、ベース、ボーカル、その他の音源、の4つを抽出するベーシックなもの。

「AI と M シリーズの Apple シリコンのパワーにより、Stem Splitterは驚くような速さで機能します」とのこと。ちなみに Final Cut Pro にも音声を抜き出すような機能がある。昔は Logic と Final Cut Pro の開発チームはオーバーラップしていたんだけど、最近はどうなのかね。

ChromaGlow

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サウンドのライブ感を AI でコントロールする機能のようだ。5種類の異なるサチュレーションスタイルで、トラックに極めてリアルな温かみや存在感、活気を加え、完璧な音色を調整することができる。AI マスタリングの iZotope Ozone やトラック単位での調節を行う AI ミキシングの iZotope Neutron のような動作はしないようだが、技術ベースは同じなので、今回のアップグレードで搭載された Mastering Assistant も今後アップデートで AI マスタリングを搭載していくのかもしれない。

その他の機能

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AI を活用してピッチを賢くトラッキング・修正する Pitch Correction、プロジェクトのテンポにプロジェクトをフィットさせるスマートテンポ機能などが追加されている。「ギターの録音はメトロノームなしで大丈夫」と言われてみると、あぁ、オーディオサンプルのテンポ補正だからね、確かにそうだけども。

macOS 版は Apple Music で採用されている空間オーディオ対応が強化されており、ドルビーアトモスに対応した空間オーディオミックスやサラウンドミキサーと3Dオブジェクトパンナーなどが搭載された。10年ぶりのメジャーアップグレードなので、いろいろ強化されていると思うので、気になる人はページをチェック。

多様な音楽専門家を Mac プラットフォームに誘い・惹きつける DAW

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新しい Logic Pro は、iPad のための Logic Pro 2Mac のための Logic Pro 11 と呼ばれる。

Logic Pro のような DAW は専門家向けのアプリケーションであり、Garage Band のような「音楽を楽しむ」ためのアプリケーションとは複雑さのレベルが異なる。サードパーティのプラグインやハードウェアを含めたエコシステムのようなものなので、今回メインでアピールされているような機能が DAW 差別化の決定打になるかは微妙だが、これまでのマイナーエンハンスに加え、ちゃんとメジャーアップデートしてきたことは評価できる。

特にステム分割は自分が使っている Ableton Live には付いていないので、いいプレッシャーがかかると思う。

Mac のための Logic Pro 11 のページを読むと、Logic Pro が音楽制作だけでなく、DJ やリアルタイムパフォーマンスなど、多様なシーンをカバーしていることが分かる。そういう意味では、GarageBand が一般ユーザを広く惹きつけたように、Logic Pro は多様な音楽専門家を Mac プラットフォームに誘い・惹きつけるようなアプリケーションになっていくのかもしれない。

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波形研究所 所長

WAVEFORM LAB(ウェーブフォーム・ラボ) は音楽制作、デジタルライフ、イノベーションをテーマとするサイトです。

1997年、伝説の PDA、Apple Newton にフォーカスした Newton@-AtMark- を開設、Newton や Steve Jobs が復帰した激動期の Apple Computer のニュースを伝えるサイトとして 200万アクセスを達成。2001年からサイトをブログ化、2019年よりサイト名を WAVEFORM LAB に改称、気になるネタ&ちょっとつっこんだ解説をモットーにサイトを提供しています。

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