MASCHINE 3 SOFTWARE がリリースされた(MASCHINE 3)。MASCHINE 2 が 2011年 11月にリリースされたので13年ぶりのメジャーアップデートだ。これまでも少しずつアップデートされ、MASCHINE 2 の最終と思われるバージョンは 2.18.4 。とはいえ、MASCHINE のワークフローの改革や MASCHINE のユーザを一挙に拡大するような機能追加はなされてこなかった。トラックメイクには最高だが、MASCHINE でマスタリングまではキツい、というのが MASCHINE の現在位置だ。
今回のバージョンアップで MASCHINE SOFTWARE は、これまでの MASCHINE シリーズ・ハードウェアありきのソフトウェアという位置づから、ソフト単体でも購入・トラックメイクに使用できるもの、になった。
もちろん、MASCHINE Mk3 のようなハードウェアがあった方が独特のトラックメイクが楽しめたり、なんなら生産性があがるのだが、個人的にはソフトウェアだけで使うことが多い。前のエントリーでも書いたが、① 音色サンプルが豊富・検索もしやすい、② 打ち込みが楽、リフやパターンをどんどん入力できる、③ メイン DAW への出力が簡単(MIDI も Audio もドラッグ&ドロップで持っていける)からだ。
そんなトラックメイキングの魔法の杖ともいえる MASCHINE 3 SOFTWARE のレビューをはじめる。
Native Instruments MASCHINE 3 SOFTWARE
オフィシャルで告知されている新機能は以下の通りだ。
- ステムセパレーション – あらゆるオーディオファイルをドラム、ベース、ボーカル、その他の楽器に分割。iZotopeの伝説的なRXテクノロジーを搭載し、最高のクオリティを実現。
- Maschine Central – 完全に再定義されたライブラリには、あらゆるジャンルのヒートを作り出すためのすべてのサウンドが収録されています。Machine Centralには100以上のキット、144のKontaktインストゥルメント、Monark、Massive、Prismなどのシンセ・プリセットが含まれています。
- MIDI編集ツール – MIDIノートの分割、結合、消去、ミュート、キーボード・ショートカット、MIDIノート・プレビューなどのMIDI編集ツール一式。
- カスタム・テンポのアップグレード – シーンごとにカスタム・テンポを設定することで、トラック・フローやライブ・パフォーマンスを深くコントロールできます。
- Kontrol SシリーズMK3との統合 – 基本的な統合には、トランスポート・コントロール、Play Assistの統合コントロール、Maschineモジュールのオンキーボード表示、数千ものNKSパートナー・インストゥルメントのサポートが含まれます。
- 付属ソフトウェア – Massive、Monark、Reaktor Prismと並んで、使いやすいマスタリング・ツールセットであるOzone 11 ElementsがMaschine 3バンドルに無料で付属。
- バウンス・イン・プレイス – サウンド、パターン、アイデアをオーディオとしてレンダリングすることで、CPUパワーを節約し、クリエイティブな可能性を広げます。
- より多くのファイルフォーマット – MaschineはMP3、MP4、FLAC、OGGファイルをインポートできるようになりました。
そのほか、UI がモダンに一新 されており、視認性が向上、新鮮な気持ちで作業ができる。また、コンピュータのキーボードで MIDI が演奏できる Computer MIDI Keyboard が地味に超便利になった。
ちなみに MASCHINE 3 は MASCHINE 2 とは別のアプリケーションだ。なので、双方を一度に立ち上げることができる。が、MASCHINE 3 で作ったプロジェクトファイルは下位互換性がないらしく、MASCHINE 2 では開けないようなので注意が必要。ま、古い MASCHINE を立ち上げることはないと思うけど。
ステム・セパレーション
待望の ステムセパレーション だが、iZotope のオーディオ編集ソフト RX テクノロジーを採用したそうだ。ステムセパレーションにより楽曲トラックがドラム・ベース・ボーカルとそれ以外の4つのオーディオデータに変換される。パラメータの設定機能はなく、ボタン一発のオートマチックなバッチ処理だ。
トラックに取り込んだオーディオの編集メニューにある STEMS をクリックすると、オーディオを解析、新たに Group が追加され 4つのステムトラック(サンプラー)が生成される。
楽曲全体に適用すると少し時間がかかる。使った感じとしては、動きのない白玉のベースはベースパートとして抜き出しにくいようだ。ボーカルの抜き出しは非常に優秀。ステムセパレーションの性能については、loopop が AKAI MPC のステムセパレーションと比較し、いくつかの楽曲をもとに検証しているのでチェックして欲しい。
Maschine Central
7.7GB 越えのサンプル・プリセットを提供する Maschine Central は MASCHINE 専用の拡張音源オプションだ。かなり大きいボリュームだが、このエクスパンション、なかなかイイ。幅広いジャンルの音楽をカバーしている。MASCHINE はエクスパンションが非常に優れているのだが、これまでのエクスパンションはジャンルスペシフィックなももだった。
Maschine Central はオールジャンルで、とにかく使える Kit がたくさん用意されている(103 キット)。MASCHINE の Kit は音色キットとプレイパターンがセットで提供される。キットといっても単なるドラムキットではなく、インストゥルメントのパターンも含めた楽曲サンプルが大量に用意されているようなものだ。音選びのイメージが掴みやすく、かつサウンドもきっちりエフェクトまで作り込まれているから即戦力だ。
インストゥルメントは、Kontakt のマルチサンプリングのプリセットが移植・追加されている。ピアノやストリングスなどリアルだ。このインストゥルメントも 144 もある。MASCHINE はトラックにサードパーティのプラグインを普通に読み込めるのだが、サウンドブラウザからオーディションできるし、MASCHINE のサンプラーは使いやすいしサウンドエンジンも選べるので Kontakt を立ち上げるよりいいかも。
ま、Maschine はサウンドライブラリがキモなので、Maschine Central は合わせて購入することをオススメしておく。
非常に優秀な MASCHINE のバウンス・エクスポート
バウンス・イン・プレイスは、Ableton Live でいうところのトラックフリーズのようなものだ。CPU 負荷軽減など、それはそれで便利なんだろうが、MASCHINE のパターンバウンスエクスポートは昔からとにかく優秀だ。
MASCHINE でトラックメイクして、それをメインの DAW に持っていくのがとにかく簡単なんだ。パターンブラウザの右上にあるエクスポートアイコンを DAW のトラックにドラッグするだけで、オーディオまたは MIDI でのパターン貼り込みが出来てしまう。MIDI トラックなら MIDI データでドラッグすればいいし、オーディオならエフェクトも全部込み込みのバウンスデータがエクスポートされる。ドラムパターンもキットごと書き出してもイイし、特定のサウンドだけソロにしてバウンスも簡単にできる。
ドラッグするだけで WAV だの MIDI だのにコンバートしてくれる MASCHINE は本当に有能。MASCHINE で仮組みして、DAW に持っていく。#nativeinstruments #maschine #DTM pic.twitter.com/AI57BtmeCg
— 波形研究所 気になるニュース 🎹 (@waveformlab) December 31, 2021
この機能があるおかげで、メインの DAW とトラックメイクの MASCHINE が共存できてしまうんだよね。連携が簡単なんだ。
MASCHINE 3 のアップデートの全体評としては、革新的なバージョンアップでないものの、価格からして妥当。ステムセパレーションは欲しかったところだし、新しい UI も気に入っている。過去にはチームが解散したと噂されていた MASCHINE の新バージョンが登場して嬉しい、というところ。
これまでハードウェアを買わなきゃならないところにネックを感じていた人には、ぜひ MASCHINE 3 を触って欲しい。
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