(2001年11月)その夜、Windows XPの発売を翌日に控え、マイクロソフトはニューヨークでジャーナリストを対象とする小規模な夕食会を開いた。わたしは何度もビル・ゲイツと話したことがあったし、「そんなバカな話は聞いたこともないぞ!」と怒鳴られても泣き出したりしないので、マイクロソフトの広報チームはわたしの席をゲイツの隣に用意してくれた。
わたしはiPodを持っていった。食事が終わり招待客たちが椅子から立ち上がるころ、iPodを取り出してゲイツの前に置いた。
「これ、もう見ました?」。
よくSF映画で、未知の物体に直面した異星人がその物体と自分の間にトンネルみたいなエネルギー光線を出してその物体に関する情報を脳に直接吸い取ってしまうような場面があるが、そのときのゲイツはまさにそんな状態だった。じっとスクリーンを見つめながら、指はNASCARのカーレースさながらの速度でスクロールホイールをいじり、ボタンというボタンを押していく。本当に情報を吸い取る音が聞こえるのではないかと思った。デヴァイスのあらゆるニュアンスを調べ尽くしたあと、ようやく返してくれた。
「よくできてる」と彼は言った。
それから少しの間、ゲイツはじっとしていた。何か腑に落ちないことがあるらしい。
彼は尋ねた。「Macでしか使えないの?」。
ええ、そうなんです(当時は)。
The Perfect Thing – WIRED Issue 14.11 – November 2006
保存版特別号『WIRED x STEVE JOBS』 – WIRED – 2013.10.13
コメント