前回は、Karn Evil 9 3rd impression について書いた。今月は追悼月間ということで Emerson, Lake and Palmer のネタを多めに書いていきたい。うん、書きながら気持ちを整理している感じだ。David Bowie の時にはそれも出来なかったが、幸い、EL&P は鍵盤弾きとしてのアプローチがあるから。
EL&P といえば TARKUS(タルカス) ということになるんだろうか。個人的には Karn Evil 9 や Works 最終面の長めの曲も好きなのだが、超絶難易度の EL&P の曲をコピーして「俺は EL&P を征服できた」と感じるのは、やはり TARKUS をコピーした時だろうと思う。
なんでこんなエントリーを書いているかというと、「タルカスは名曲というからアルバムを聴いたが、どこがいいのか分からなかった」という人が多いからだ。そういう感想を聞くたびに、「あー残念だなぁ」と思う。Keith Emerson が他界したことで、EL&P を聴き返す人もいるかもしれない。だから、この話を書いたのだ。
それは買っているアルバムが違います
誤解を恐れずに言おう。タルカスというアルバムは大したことはない(全英チャートでは1位になったみたいだけど)。タルカスという楽曲が凄いのだ。あなたが聴いたタルカスは全力のタルカスではない。あー、違う。全然伝わらない。
TARKUS を知りたいなら、
こっちを買っちゃダメだ。
こっちを買うのだ。
最初のがいわゆる TARKUS(タルカス)、2枚目のは狂気の3枚組LP 構成の超絶ライブ Welcome Back My Friends To The Show That Never Ends…Ladies and Gentlemen(レディース・アンド・ジェントルメン) だ。
「そうだそうだ!」というファンの声が聞こえてくる。 TARKUS、Keith Emerson のピアノインプロヴィゼーション、Karn Evil 9 、Carl Palmer のドラムソロとまさに 全部入りライブアルバム だが、このアルバムの TARKUS はここ日出づる国、日本では「高速化タルカス」と言われている。とにかく楽曲のスピードが速く、演奏がワイルドなのだ。
まずイントロ。 Keith Emerson のカウント、One, two, one two three four! というマイクが拾っただろう掛け声で楽曲はスタートする。4拍子カウントにもかかわらず、スタートする TARKUS のメインモチーフは 5/4拍子だ。しかも速い。とにかく速い。
Keith Emerson の手癖でもあるこのモチーフ、いつか詳細に運指とか解説したいのだが、アルバムではピアノとハモンドをオーバーダブしている。Keith のインタビューでは「このピアノとハモンドが同時に鳴るサウンドが決め手だった」という話だが、そんなことはない。クリック音が強烈なハモンド C-3 の上段キー弾けば十分だ。サウンドも実にワイルド。それでいい。
中盤の Iconoclast ではこのモチーフがもっと速くなる。ちなみに Greg Lake はベースでこのフレーズ弾いてるから凄い。「これでもかっ!」という感じだ。
このライブ盤の演奏時間は 27分24秒。アルバム版の TARKUS は 20分40秒。「スピードを上げてるのに演奏時間長いって何やってるんだ」って話なのだが、そう、Moog シンセサイザーで延々とシンセソロをやってる。アルバムでは尻切れの意味不明となった AQUATARKUS だ。AQUATARKUS だけで 10分演奏してる。この起承転結・展開甘美なソロを経てこそタルカスは海へと帰れるのだ。
そしてヘッドフォンで聴いて欲しいのがエンディング。その感動の振幅幅はアルバム盤を1とするとライブ盤は2万くらいだ。高らかに鳴り響くシンセサイザーのモチーフ、オルガンの響きが高まり最高潮に。そして観客の歓声!
高校時代の友人が「最後が凄い」と言っていたもんだ。ぜひ鳥肌のエンディングでシビレて欲しい。
タルカスを語るなら頼むから聴いて欲しい
アルバムの方の TARKUS を聴いて「プログレは好きだけど EL&P って苦手」とか「奴らの良さが分からない」という不幸な人、人生を損してますよ。 EL&P で1枚を選ぶなら絶対にこのアルバムだ。ぜひ間違えずに聴いて欲しい。以下、これまで聴いたタルカスから推薦できるものをあげておきます。
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