Apple が Logic Pro X をアップデートしました。さすがは Apple、DAWネタに関わらず、メジャーなサイトでもニュースが流れてます。一応、WAVEFORM LAB でも触れておきます。
今回のアップデートで Logic Pro X 10.5 というバージョンになった。「アップデートの回数がすごく少ない」といわれてますが、マイナーアップデートはちょくちょくやってるので、専任のチームはいるんだと思います。前回のメジャーバージョン 10.4 がリリースされたのは、2018年 1月。10.3 は 2017年 1月。うん、まぁまぁです。細かいアップデートはもっと頻繁だしね。
Logic Pro X 10.5
詳細は プレスリリース「Apple、Logic Pro X 発表以来、最大規模のアップデートを Logic に実施」にありますが、GarageBand で先行搭載されていた Live Loops が Logic Pro X にも搭載されました。
Live Loops
- グリッドでループ、サンプル、オーディオを使ってセルをアレンジ、トリガして作曲
- 自由なアレンジのアイデアを演奏してトラック領域に取り込み
- Filter、Gate、Repeater、Bitcrusherなどのクリエイティブなエフェクトを使用できるRemix FXを追加
- iPadまたはiPhone上のLogic Remoteでマルチタッチジェスチャを使ってLive LoopsやRemix FXを実行し、複数のループまたはエフェクトを同時にトリガ
サンプラー
- ドラッグ・アンド・ドロップのワークフローで、洗練されたマルチサンプルの音源を作成、編集
- 単一ウインドウのインターフェイスで合成、マッピング、ゾーン編集ができる現代的な新デザイン
- 開始位置、終了位置、ループポイントを細かく制御できるゾーンエディタを内蔵
- サンプルをキーボード全体に素早く柔軟に割り当てることができるマッピングエディタ
- サンプラーにFlex Timeが組み込まれたため、ピッチにかかわらずサウンドを同じ長さで再生可能
- Auto Samplerで、MIDI対応のハードウェア音源とソフトウェア音源をサンプラー音源に変換する処理を自動化
- 既存のすべてのEXS24音源をサポート
Quick Sampler
- 1つのオーディオファイルを読み込んで、再生可能なサンプル音源を素早く構築
- Quick Samplerで、ルートノートと最適なループポイントを自動的に識別し、プロジェクトのテンポに適合
- スライスモードを使って、キーボードでトリガできる複数のスライスにボーカルサンプルやドラムサンプルを分割
- マイクや外部ハードウェアを使って、あるいは任意のトラックまたはバスからライブサンプルを録音
Drum Machine Designer
- Drum Machine Designerでサンプルをドラッグしたり整理したりして、カスタム・ドラム・キットを構築
- 任意のパッドでQuick SamplerまたはDrum Synthのコントロールに直接アクセス
- あらゆる音源や他社製プラグインをパッドに簡単に割り当て
- 任意のサウンドを半音階で演奏して、ベースラインやその他のメロディパートを作成
ステップシーケンサー
- クラシックなドラムマシンのワークフローを模したインターフェイスを使って、独自のビート、メロディ、エフェクトオートメーションを構築
- ベロシティ、リピート、チャンス、オフセット、ステップレート、スキップ、タイを行ごとに制御して、パターンを作成、編集
- Quick SamplerやDrum Machine Designerで作成したカスタムキットを含め、あらゆるパッチをサウンドソースとして使用可能
- 150以上のリズムパターンとメロディパターンを備えたライブラリ
追加されたコンテンツ
- 最新とクラシックのヒップホップ、エレクトロハウス、レゲトン、フューチャーベース、テクノ、トランジションエフェクトを含む、さまざまな音源やジャンルのループを2,500以上新たに追加
- エレクトリックおよびヒップホップに対応する17のLive Loopsスターターグリッド
- 70以上の新しいDrum Machine Designerキット
- 1,500以上の新しいパッチ
- ビリー・アイリッシュの「Ocean Eyes」のオリジナル・マルチトラック・プロジェクト
追加された機能
- 専用のサウンド加工コントロールを使って合成のキック、スネア、タム、ハイハットを生成するDrum Synthプラグイン
- 個別または複数のオーディオファイルやソフトウェア音源リージョンを空のトラックヘッダにドラッグして、Sampler、Quick Sampler、Drum Machine Designer、またはAlchemyの音源を素早く作成できるオプション
- 性能と安定性を向上
Logic Pro X 10.5 をどうみるか
リアルタイムパフォーマンスのトレンドを組み込んだ
メジャーな DAW は Ableton Live のようなパターン組合せによるセッションビュー的な機能を搭載してきてますね。これは DAW が静的な楽曲制作のためのソフトウェアから、ライブパフォーマンスをカバーしはじめたからだと思う。今回の Logic Pro X も Ableton Live ライクな Live Loops とリアルタイムパフォーマンスのための Remix FX を搭載してきています。
一度完成された楽曲を Roland SP-404sx でいじったり、DJ ソフトウェア(やハードウェア)でプレイしたり、という DJ が専門としてきたプレイスタイルが、DTMer にも広がるトレンドが確実にある。自分も Native Instruments Reaktor Kontrol でも買おうかと思っているところだし。
MOTU Digital Performer にもセッションビューみたいなものは搭載されたけど、正直、アレでリアルタイムパフォーマンスを行う人は稀だと思う。セッションビュー的に楽曲を構成して静的な楽曲を制作する用途を想定している感じ。Native Instruments MASCHINE ならほぼ同様のことは行える。あからさまなセッションビューはないけど、ビートパーツ思考のパフォーマンスはできるし、MASCHINE ハードウェアのパッドや Perform FX を使えば、リアルタイムなパフォーマンスも可能だ。
そんな「楽曲をプレイする楽しみ」に今回のアップデートは主眼においていると思う。
UI の良さや iPad など Apple 製品の統合
Logic Pro X 10.5 は、Ableton Live や Native Instruments MASCHINE や DJ アプリケーションもよく研究していて、非常に分かりやすく(トラックパターンの進行度が分かるのは KORG Gadget や Looper アプリケーションの UIをうまくインプリしている)、かつ iPad などのマルチタッチハードウェアを統合・実装していると思う。
Logic Pro X のその他の新機能は、一般的な DAW なら搭載されていて「先進的」という機能は見当たらないが、ピッチ修正(Flex Pitch)のように、既にこの世に存在する機能を非常に分かりやすい UI でシンプルにインプリする のがポイントなんだと思う。ここは Apple のデザインエンジニアやオーディオアプリケーションに精通しているエンジニアの層の厚さ(か、優秀さ)で実現しているものだ。
アップデートは頻繁ではないが、各機能は熟考されており、ちゃんと動けば(やはりレインボーカーソルフリーズが多いと聞いている)ユーザの満足度も上がるんだろう。
圧倒的なコストパフォーマンス
あと、個々のプリセットやパッチ、サンプルの数の多さも特長だ。ビリー・アイリッシュの「Ocean Eyes」のオリジナル・マルチトラック・プロジェクトまで付いてくる。そして、これらのハイエンドアプリケーションがたったの 24,000円だというところだ。毎年のアップグレード納金もない。
これから DAW を選び使う層には圧倒的に魅力なアプリケーションだ。これでプロジェクトファイルを共有できるサービスが提供されれば、自分も乗り換えてしまうかもしれない。逆にそれくらいの理由がなければ、DAW は普通乗り換えないんだけど。
ライブパフォーマンスをやりたいなら、NI Traktor や MASCHINE がある。セッションビュー的な楽曲制作がしたいなら、Ableton Live が最適だ。静的な音楽制作なら老舗の Digital Performer や Cubase もある。それぞれ尖った楽しいソリューションが存在する。けど、Logic Pro X は圧倒的にお財布に優しい。Apple Logic Pro X により各社のソリューションのレベルが上がると業界にとってもいいことだと思う。
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