BEHRINGER Model D のレビューです。BEHRINGER Model D は1970年に発売された Moog Minimoog を完全再現したアナログシンセサイザー。 Minimoog の仕様通り、3VCO のモノフォニックシンセサイザーだ。「モデル D」とはプロトタイプから4番目のモデル、というい意味。Minimoog(Model D)は Moog 初のポータブルシンセサイザーで、その後のシンセサイザーの歴史に大きな影響を与えた。ここら辺は、下記記事を読んでくださいな。
さてこの BEHRINGER Model D、昨年の発売から全世界的に大ヒットしている。おそらく歴史に残るだろうシンセサイザーではあるものの、アナログでモノフォニックなシンセであり、マニアックといえばマニアックな楽器。ベリンガーのオリジナル Moog Mminimoog をはじめとする名機の復興(簡単に言えばクローニング、コピー)のスタンスも百家争鳴ですが、このクラスのアナログシンセサイザーを 4万円強(海外では 299.99ドル)で購入できる、というのはいい時代になったものです。
サイズは実にコンパクトながらにアナログシンセの操作感は抜群
🌻Instagram #behringer #ModelD #analogsynth https://t.co/oN0nTYMF2m pic.twitter.com/HOf1CIdm6b
— takefumi_s (@takefumi_s) 2018年11月20日
まず大きさから。BEHRINGER Model D は現代のモジュラーシンセサイザーカテゴリーではスタンダードな「ユーロラック(Eurorack)」という規格に合わせた作りとなっていて、非常にコンパクト。本物の Moog Mminimoog と比較した写真をそのうち撮ろうと思ってるんだけど、サイズは Minimoog インパネ部だと半分くらい。体積・重さは 1/10 くらい(そして値段も 1/10)。実にいい。
筐体のサイズが小さくなると、パラメータを操作するノブも小さくなるのが宿命なんだけど、まぁ、アナログシンセサイザーの醍醐味を味わえる感じではある。そりゃ、Moog Minitaur に比べればノブは小さいけど、Mminimoog のパネルをそのまま再現(インスパイアされたというより丸コピー)しているので仕方がないところ。
Roland SE-02 Analog Synthesizer のノブが悲しいくらいに小さくて、回すとグラついたりするんですが、BEHRINGER Model D のノブは非常にしかりしています。回しても左右にブレることはないです。しっかり基盤に付いてる感じ。スイッチも固めでいい。
Model D はモノラルアウト&エフェクト非内蔵のアナログシンセサイザーなので、出音をそのまま使うことは滅多にないし、演奏中はノブをガンガンいじることから、iMac の前、キーボードとの間に置ている。Model D 本体の基盤は薄いので、もっと薄く設置することができる。 Eurorack に収めるなり、自分でケースを自作するなり、だ。
本物のアナログシンセサイザー、操作がとにかく楽しい
BEHRINGER Model D のサウンドがいいとか、Moog Minimoog の再現度が非常に高いとか、3つのオシレーターを重ねた時の歪み方が微妙に違うとかは主観が入るところだし、クローンであっても機材として別の会社の別のモデルなので、そこの評価は勘弁。サウンドはいいですよ。売れてるんだもの。
ほとんどすべてのパラメータを MIDI 経由でコントロールできる KORG monologue とは違って、BEHRINGER Model D は音色のリコールなんて一切出来ない。USB を搭載しているが、これは MIDI 送信(とファームウェアのアップデート)のみで、オーディオを出力したりするものではない。すべてがインパネ上の設定値勝負なのだ。
Native Instruments Monark は Minimoog を基にしたソフトウェアシンセだが、各ノブのコントロールは MASCHINE ハードウェア経由。「動かしたいノブのページを指定してうにゅうにゅ」なんてやってた時に、「あぁ、Monark のハードウェアがあればなぁ!」なんて思ってた。それが目の前でウニウニできる。幸せ。
Model D はシンセサイザーの基本、アーキタイプともいえる。(一番左にあるモジュレーションエリアはともかく)音色作りの流れに沿ってパラメータが配置されているので直観的に操作もできるのだが、単に大きいノブにこだわっていじってみても面白い。オシレーターのピッチを弄れば図太い音もコードも思いのままだ。
そしてフィルターコーナー。ここもいい。個人的にはフィルターの CUTOFF FREQUENCY だけ巨大なノブにして欲しいくらい。アナログならでは、というか、オシレータのピッチのごくごく微妙なズレで、音がワイルドに歪んだりする。もういじっていて飽きない。
週末にでもビデオを撮ってみようと思う。
ピッチ・ピッチ!ピッチがズレてる!
気になる事象としてはオシレーターのピッチがそれぞれ異なったりする。手元にあるのは(なぜか正式発売日より前に入手した)国内代理店のシールが付いた国内流通版だ(マニュアルも日本語)。
とはいえ、ACアダプタへの入荷電圧が異なるからか、品質管理の問題なのか、3つあるオシレーターのデフォルトピッチが異なる。メインオシレーターはばっちりのピッチなのだが、オシレーター2・3のピッチをオシレーター1に合わせると、写真のようになる(センターに合ってない)。
オシレーター2・3のピッチって、中央でなく +1 あたりで合うんでしたっけ? #Behringer #ModelD pic.twitter.com/odUNclaqGI
— takefumi_s (@takefumi_s) 2018年11月20日
でも、アナログシンセサイザーなんてそんなもの。冷却すればピッチが下がるし、ピッチを合わせるといってもノブの目盛をみて合わせるわけではないので、「そういうもんだ」と思って使えばいい。
これは故障ではない。どうしても気になる人は基盤の調整部品をいじることで各オシレーターのピッチを合わせることができる。
オクターブのピッチがズレるのは別の話。これも SysEx で調整可能だが、買ったばかりでオクターブのピッチが怪しい場合は、購入店か代理店のサポートに問い合わせることをお勧めする。
KORG monologue は電源を入れた時に自動でピッチを合わせてくれる機能が搭載されているんだけど、やはり日本メーカーが現在の技術で作るアナログシンセサイザーは凄い、ということだね。
オススメしなくても売れていくだろうシンセ
モノフォニックアナログシンセサイザーとえいば、IK Multimedia の UNO Synth や KORG monologue、Roland SE-02 などライバルは多いんだろうけど、まぁ、完全に頭一つ抜き出ていると思う。
特に UNO Synth について波形研究所こと WAVEFORM LAB の感度が低いのは、数値パラメータ指定型のインターフェイスが中心であるため。これは自分が最初に購入した KORG POLY-800 と同じで、「パラメータを呼び出して数値で指定する」というのと「ノブをいじってサウンドを作る」のは、全く次元が異なるものであり、後者の方が楽器として直観的で楽しいと考えている。POLY-800 にもフィルターという概念はあったけど、それを開けたり閉じたりしてサウンドを自由にコントロールする、なんてことは思いもつかなかったもの。
特段、「これは買い!」とか書かなくても、バカ売れすると思います(笑)。分からないことがあったらコメントにどうぞー。
—
実機のデモを作りました。こちらも見てね。
コメント